不動産投資に興味はあるけれど、高額な物件を直接購入するのはハードルが高い――そんな悩みを持つ方にとって、J-REIT(ジェイリート/不動産投資信託)は身近な選択肢です。しかし、実際に「いくら REIT 分配金」を受け取れるのかが分からなければ一歩を踏み出しづらいものです。本記事では、分配金の仕組みから計算方法、手取り額を増やすコツまでを丁寧に解説します。読み終えるころには、必要な情報と具体的なシミュレーションを手に入れ、自分に合う投資判断ができるようになるはずです。
REITの分配金とは何か

まず押さえておきたいのは、分配金が「賃料収入や売却益から経費を差し引いた後の利益」を投資家に還元したものだという点です。法律上、J-REITは利益の90%超を分配すれば法人税が実質的に免除されるため、安定的に高い分配性向を維持しています。日本取引所グループのデータによると、2025年10月時点の平均分配利回りは3.7%前後で、東証プライムの平均配当利回り2.3%を上回ります。つまり、株より高いインカムを狙える仕組みが制度的に整っているわけです。分配金は年2回が一般的ですが、物流特化型など年4回の銘柄もあり、キャッシュフローを作りやすい点も魅力と言えます。
いくら受け取れる?分配金の計算ステップ

ポイントは「投資口価格」と「1口当たり分配金」の掛け算で支払額をイメージすることです。たとえば投資口価格が18万円、1口当たり分配金が3,300円のREITに5口投資すると、年間分配金は3,300円×5口×2期=33,000円になります。また利回りで考える場合、年間分配金(6,600円)を投資口価格で割ると利回りは約3.7%です。実は、この数字を長期平均と比べることで割高か割安かの手がかりが得られます。さらに、金融庁のNISA口座なら分配金が非課税になるため、同じ銘柄でも受取額が増える点を見落とさないようにしましょう。
分配金を左右する三つの要因
重要なのは、分配金が固定的ではなく運用状況によって変動する点です。第一にポートフォリオの立地と用途が挙げられ、オフィス主体のREITは景気変動の影響を受けやすい一方、住宅型や物流型は比較的安定しやすい傾向があります。第二に借入金利があり、日銀のデータでは2025年10月の平均短期金利は0.32%と低水準ですが、将来の金利上昇は分配金を圧迫する可能性があります。第三に内部留保の方針が関係し、物件の修繕や新規取得に備えて利益を積むか、それともすぐに分配するかによって、短期の分配金と長期の成長バランスが変わります。これらを総合的に判断することで、よりブレの少ない銘柄を選びやすくなるでしょう。
税金と手取り額の違い
実は、表面利回りと手取り利回りには明確な差があります。通常の特定口座で受け取る分配金には、所得税15.315%と住民税5%が源泉徴収され、合計20.315%が差し引かれます。先ほどの年間33,000円の例なら、手取りは約26,300円です。一方で、2024年に拡充された「新NISA」は2025年度も有効で、年間360万円までの成長投資枠で購入したREITの分配金は非課税です。つまり同じ銘柄をNISAで保有すれば、前述の33,000円を満額受取れ、手取り利回りが実質3.7%から4.7%相当へ向上します。税制メリットを活用するかどうかが、手元に残る金額を大きく左右するわけです。
分配金を増やすための投資戦略
まず長期視点で複利効果を生かすことがカギです。東証REIT指数は過去20年で年率約5%の価格上昇と平均3.5%の分配利回りを示しており、再投資によって総リターンが高まっています。また分配金の成長率が高い銘柄を選ぶ方法も有効で、総資産が拡大するにつれて1口当たり分配金を毎期引き上げるREITは少なくありません。一方で分散投資も欠かせません。オフィス、住宅、物流、ホテルなど複数用途を組み合わせることで、一部セクターの不調による分配減を和らげられます。最後に、投資時期も重要です。内閣府景気動向指数で拡張局面入り直後はオフィス系REITの利回りが高くなりやすく、逆に景気後退期にはディフェンシブな住宅系やインフラファンドが相対的に有利になります。相場の波をとらえつつ長期保有を続ければ、分配金の総額を着実に積み上げられるでしょう。
まとめ
この記事では「いくら REIT 分配金」を受け取れるのかを中心に、仕組み、計算方法、影響要因、税制、そして増やし方を解説しました。要は、1口当たり分配金と投資口数、税制の利用状況によって手取り額は大きく変わります。平均利回り3〜4%という数字は、低金利下では十分魅力的です。ただし物件タイプや金利環境で分配金は変動するため、複数銘柄に分散し、長期で再投資する姿勢が成功への近道と言えます。まずはNISA口座の活用と少額からの購入を検討し、安定したキャッシュフローを手に入れる一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 日本取引所グループ(JPX)- https://www.jpx.co.jp
- 一般社団法人投資信託協会 – https://www.toushin.or.jp
- 日本銀行 統計データ – https://www.boj.or.jp/statistics
- 金融庁 NISA特設サイト – https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2
- 内閣府 景気動向指数 – https://www5.cao.go.jp/keizai3/index.html