不動産の税金

REIT 北海道で学ぶ地方分散投資

不動産投資と聞くと東京や大阪の高層ビルを思い浮かべる人が多いものです。しかし最近は、少額から参加できるREIT(不動産投資信託)を通じて地方にも資金が流れています。とりわけ北海道は観光需要の回復と物流ハブ化が進み、分散投資の受け皿として注目度が高まっています。本記事では、REITの基本から北海道市場の特徴、さらに2025年度の制度までをやさしく解説します。リスクを抑えつつ成長ポテンシャルを取り込みたい初心者の方は、ぜひ最後までお読みください。

REITの基本を押さえよう

REITの基本を押さえようのイメージ

まず押さえておきたいのは、REITが株式と同じように証券取引所で売買できる投資商品だという点です。複数の不動産を束ねたファンドに出資し、賃料収入や売却益を配当として受け取る仕組みになっています。つまり、数万円からでも間接的に商業施設やマンションのオーナーになれるわけです。

REITの最大の特徴は、投資法人が利益の九割以上を分配する場合、法人税が実質的に免除されることです。そのため配当利回りが相対的に高く、安定収益を求める個人投資家に支持されています。また、上場基準が厳格なので情報開示が進んでおり、物件の稼働率や借入金利を毎期チェックできます。株価のように日々価格が変動する点はメリットでもあり、短期売買に慣れないうちは値動きに惑わされない姿勢が欠かせません。

さらに、REITにはオフィス特化型や住宅特化型など複数のタイプがあります。ポートフォリオの分散度合いは銘柄ごとに異なるため、北海道の物件割合を調べてから購入することが重要です。投資先が限定されると地域リスクが高まる一方、トレンドを的確につかめば高い成長余地も見込めます。まずは目論見書や決算説明資料に目を通し、資産構成を理解することが第一歩です。

北海道市場が脚光を浴びる理由

北海道市場が脚光を浴びる理由のイメージ

ポイントは、観光と物流の二本柱が同時に成長していることです。観光庁の2025年上半期統計によると、北海道への外国人延べ宿泊者数はコロナ前比118%まで回復しました。特に札幌・小樽・ニセコのホテル稼働率は平均82%と高水準で推移しており、宿泊特化型REITの収益押し上げ材料になっています。

一方で、EC需要の拡大に伴い札幌近郊の物流施設が急速に増えています。国土交通省「物流拠点整備状況調査(2025年)」では、道央圏の大型倉庫延べ床面積が前年同期比で14%増となりました。寒冷地対応の冷凍倉庫が多いことから、生鮮食品を扱う企業が集まりやすく、長期契約が結ばれやすい点も魅力です。物流REITの分配金は長期固定賃料が主な源泉となるため、金利上昇局面でも比較的安定しやすいといえます。

さらに、札幌市の人口は2024年に198万人でピークアウトが懸念されるものの、同市都市計画局によれば都心再開発の進行により20〜30代の転入超過が続いています。住宅REITにとっては、単身者向け物件の稼働率維持につながるプラス材料です。つまり北海道は、観光・物流・住宅の三領域がそれぞれ異なる需要ドライバーを持ち、多角的に収益機会を提供している稀有な地域だといえます。

REITで投資するメリットと注意点

実は、北海道に直接物件を買うよりREITを通じて投資する方がリスクを抑えやすいケースがあります。自力で物件調査や管理会社の手配を行う必要がなく、空室リスクや修繕費もプロがコントロールしてくれるからです。加えて、REITは複数物件を保有することで、自然災害や経済変動による収益のブレを低減します。

しかし、注意したいのは市場流動性と為替影響です。国内REITでもドル建てテナント契約が多いホテルは為替差が分配金に反映される場合があります。また、北海道特有の豪雪で修繕コストが増えた際は運用費用が膨らむことも考えられます。それでも運営会社が保守的に積立てを行っていれば、短期的な負担は限定的になるでしょう。

もう一つ見逃せないのは金利感応度です。REITは借入金を利用して資産を購入するため、長期金利が上昇すると分配金に影響が及びます。2025年10月時点で10年国債利回りは1.3%前後と緩やかに上がっていますが、多くのREITは固定金利比率が七割を超えており、直ちに減配へ直結する状況ではありません。それでも利上げ局面では価格が調整しやすいため、分配利回りが4.5%を上回る水準で拾うなど、割安さを確認してからエントリーする姿勢が求められます。

物件タイプ別に見る収益ポテンシャル

まず押さえておきたいのは、北海道内でREITが保有する物件タイプごとに収益特性が大きく異なる点です。ホテルはインバウンドと国内観光の両面で稼働率の伸びが期待できます。2025年の札幌雪まつり期間中、平均客室単価(ADR)は前年同期比12%上昇し、稼働率は90%を記録しました。こうした季節イベントを踏まえると、四半期ごとの分配金に波が出やすいものの、年平均では高利回りが見込めます。

住宅セクターは札幌市内のワンルームマンションが中心で、全体の入居率が96%前後と安定しています。地方都市ながら大学やIT企業の集積が進み、単身世帯が増えている点が寄与しています。賃料は大都市に比べて低廉ながら、取得価格も抑えられるため、利回りは4%台後半と健闘しています。

物流セクターは道央自動車道沿いのマルチテナント型倉庫が多く、長期固定賃料契約が組まれる傾向があります。食品メーカーやEC事業者が主なテナントとなるため、景気変動耐性が比較的高いといえます。最近は冷凍自動化倉庫の需要が旺盛で、国の補助金を受けた省エネ改修も進んでいるため、エネルギーコストを賃料に転嫁できる仕組みが整っています。

最後に商業施設ですが、札幌・旭川の郊外型ショッピングモールは自動車依存度が高く、人口減少の影響を受けやすい点に注意が必要です。テナント構成が食料品やドラッグストア中心の場合は来店頻度が高く、家賃の下支え要因になります。一方でアパレル比率が高いモールはECシフトを受けて賃料改定リスクが高まります。銘柄選びの際はテナントの業種分布を必ず確認しましょう。

2025年度制度と活用戦略

重要なのは、現行の投資優遇制度を上手に取り入れることです。まず「NISA(少額投資非課税制度)」は2024年から恒久化され、非課税保有限度が年間360万円、総枠1800万円へ拡充されました。REITは成長投資枠で購入でき、分配金と売却益が非課税になります。投資初心者が分配金を再投資し複利効果を狙うには、NISA口座の活用が最適です。

次に、個人型確定拠出年金(iDeCo)は2025年度も拠出上限が変わらず、掛金は全額所得控除の対象です。一部の金融機関ではJ-REITインデックスファンドが選択できます。60歳まで引き出せない制約はあるものの、長期で高配当資産を積み立てるには有効です。

また、国土交通省は2025年度も「不動産特定共同事業法」に基づくクラウドファンディング型ファンドの監督を強化しつつ、地域再生プロジェクトを後押ししています。北海道の再生可能エネルギー施設と複合した物流倉庫は、この法制度を背景にREITへの組み入れが進むと見込まれます。投資家としては、ESG(環境・社会・ガバナンス)評価の高い銘柄を選ぶことで、市場からの資金流入を取り込みやすくなるでしょう。

さらに、固定資産税の「住宅用地特例」はREITには直接適用されないものの、居住用物件の保有比率が高い銘柄は運用コスト低減の恩恵を受けやすいといえます。配当性向が高いREITでは、このコスト削減が分配金に反映されるケースもあります。制度面での追い風を把握し、四半期報告書のキャッシュフロー計算書を丁寧に読み解く姿勢が大切です。

まとめ

北海道は観光・物流・住宅の三つの需要が重なり合い、REITを通じて分散投資するうえで魅力的なフィールドとなっています。ホテル型は繁忙期の上振れが狙え、住宅型は安定賃料が見込めます。物流型は長期契約で景気に強く、各セクターの特性を組み合わせれば、ポートフォリオの耐久性が高まるはずです。NISAなど2025年度の制度を活用しながら、値動きに一喜一憂せず、長期視点で北海道の成長を取り込む戦略を検討してみてください。

参考文献・出典

  • 観光庁 「宿泊旅行統計調査」2025年版 – https://www.mlit.go.jp/kankocho/
  • 国土交通省 「物流拠点整備状況調査」2025年 – https://www.mlit.go.jp/
  • 札幌市都市計画局 「人口動態統計」2024年 – https://www.city.sapporo.jp/
  • 財務省 「国債金利情報」2025年10月 – https://www.mof.go.jp/
  • 金融庁 「NISA制度の概要」2025年度 – https://www.fsa.go.jp/

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