不動産投資に興味はあるけれど、歴史都市であり観光都市でもある京都で本当にうまくいくのか不安という声をよく耳にします。実際、大学や企業が集まる市内中心部と、観光地寄りの周辺エリアでは需要の質がまったく異なり、物件選びや運営方法を誤ると空室や賃料下落のリスクが高まります。本記事では「不動産投資 基礎知識 京都」をキーワードに、15年以上の投資経験と2025年9月時点の最新データをもとに、初心者でも理解しやすい形で立地分析から資金計画、長期的な運営戦略までを解説します。読み終える頃には、京都の特殊な市場環境を踏まえ、自分に合った投資プランを描けるようになるはずです。
京都の不動産市場を理解する第一歩

まず押さえておきたいのは、京都市内の需給バランスが全国平均と異なる点です。観光庁の2024年統計によると、京都府の延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準をほぼ回復し、月間約280万人を記録しています。一方、総務省の住民基本台帳では、京都市の常住人口は微減傾向が続いており、賃貸需要は「観光短期」と「学生・単身・高齢者」という二極化が進んでいます。
この構造を理解すると、単に利回りの高さで物件を選ぶ姿勢が危険だと分かります。たとえば、インバウンド需要を当て込んで簡易宿所に改装しても、条例改正や運営規制が強まれば柔軟に転用できないおそれがあります。一方で、市内中心部のワンルームマンションは大学再編の影響で学生数が減ると供給過多になりやすいのが現状です。つまり、ターゲットとする需要層を先に決め、その層が継続して京都に滞在する理由があるかどうかを確認することが、長期的な収益安定につながります。
さらに、京都市は景観保護条例が厳しく、高さ制限や外観規制によって新築供給が抑えられる区域が多い点も特徴です。供給が限られるエリアでは中古でも資産価値が下がりにくく、賃料も安定しやすいというメリットがあります。反面、改修コストが高くつくケースも多いため、利回り計算には修繕積立の上乗せを忘れないようにしましょう。
成功する物件選びのポイント

重要なのは、立地と物件タイプを京都ならではの需要パターンに合わせることです。中心部である中京区や下京区は通勤・通学の便がよく、ワンルームや1LDKの回転が速い一方、取得価格が上昇し利回りは5%前後まで低下しています。これに対し、北区や左京区のファミリー向け物件は利回り6〜7%を確保しやすく、長期入居も期待できます。
物件見学の際は、近隣大学の学部統合計画や市営地下鉄の延伸計画など、中長期のインフラ変化をチェックしてください。京都市都市計画局が公表する「都市計画道路の整備プログラム」では、2029年までに北大路通の改良が予定されており、交通利便性の向上で将来的な賃料アップが見込めます。また、地下鉄烏丸線沿線の物件は乗降客数が2023年比で約8%増加しており、今後も安定需要が続く可能性が高いといえます。
具体的な判断材料として、成約賃料と募集賃料の差を確認する方法があります。レインズ関西の2025年4月データでは、中心6区の平均募集賃料が1㎡あたり2,200円、成約賃料が2,050円となり、その差は約7%にとどまります。郊外区では差が12%前後に広がるため、郊外投資では家賃設定を強気にしすぎないことが肝心です。
最後に、京都では築年数が30年を超えても和テイストを生かしたリノベーションで高稼働率を維持する成功例が多く見られます。例えば、築35年の木造アパートを町家風に改装し、家賃を20%引き上げて満室を実現した事例もあります。古い建物を敬遠するのではなく、京都らしさを付加価値として捉える視点が投資成績を左右するでしょう。
京都ならではの賃貸需要を掴む運営戦略
ポイントは、需要の多層化に応じた運営プランを用意しておくことです。観光シーズンに合わせたマンスリープラン、大学の春秋入替時期に焦点を当てた短期賃貸、そしてシニア層向けの長期入居など、複数の柱を立てることで空室リスクを分散できます。
運営開始後は、季節変動を意識した収支シミュレーションを毎年更新してください。例えば、例年11月の紅葉シーズンには宿泊需要が増えるため、マンスリーや簡易宿所に転用できる部屋を確保しておくと収益が最大化できます。一方、2〜3月は入学・転勤需要が集中するため、通常の賃貸契約を優先した方が安定収益につながります。
また、京都市では2023年以降、簡易宿所に対する現地確認が徹底され、無許可営業への罰則が強化されました。2025年度もこの方針は継続しており、宿泊特化型の運営を考える場合は、旅館業法の許可取得だけでなく、「地域住民との協議書」の提出が必須です。手続きの手間を嫌って許可を取らずに運営すると、最悪の場合は営業停止と罰金を科されます。
入居者管理では、海外観光客を受け入れる際の多言語対応も課題になります。京都市観光協会が配布する「やさしい日本語ガイドライン」を参考に、簡潔なハウスルールと緊急連絡先を英語・中国語で準備しておくとトラブル防止に役立ちます。賃貸管理会社を選ぶときは、24時間対応の多言語コールセンターを持つかどうかを必ず確認しましょう。
資金計画と2025年度の公的支援
実は、京都での不動産投資においても全国共通の融資制度が活用できます。2025年度も続く「住宅金融支援機構 フラット35リノベ」では、耐震・省エネ改修を行う中古物件に対し、基準金利から年0.5%の引き下げを最長10年間受けられます。期間内に契約・着工することが条件で、終了時期は2026年3月末予定と発表されています。
金融機関の融資姿勢にも京都特有の傾向があります。地元の京都銀行や京都中央信用金庫は、エリア需要の理解が深く、築古町家の再生案件でも評価額を高めに設定するケースがあります。一方、全国系のメガバンクは耐用年数が短い木造物件への融資期間を厳しく制限するため、想定キャッシュフローが合わない場合は地元金融機関を優先するといいでしょう。
自己資金の目安としては、都市銀行融資を受けるなら物件価格の2〜3割、地銀・信金なら1〜2割が多いです。しかし、リノベーション費用や運営開始後の修繕費を考慮し、総投資額の30%程度を現金で準備しておくと経営が安定します。日本政策金融公庫の「生活衛生改善貸付」は旅館業許可取得費用にも利用でき、金利は年1.2〜1.8%程度と民間より低いので、改修を伴う投資では選択肢に入れておきましょう。
最後に、固定資産税の軽減措置にも触れておきます。2025年度税制では、新築住宅に対する固定資産税の減額特例は継続していますが、築古物件の改修には適用されないため、購入前に試算しておくことが欠かせません。リノベーション後の評価額が上がると税負担も増えるため、利回り計算の際に「税金上昇シナリオ」を組み込むことが大切です。
リスク管理と長期戦略
まず、京都の不動産投資で顕在化しやすいリスクは「法規制の変化」と「観光依存の景気変動」です。運営中に旅館業法が厳格化された場合でも、通常賃貸に切り替えられる間取りと設備を確保しておけば、損失を最小限に抑えられます。また、空室率が上昇しやすい非連続的な観光需要に備えて、家賃保証やサブリースを検討するよりも、複数物件で需要層を分散する方が長期的に有効です。
次に、自然災害への備えも欠かせません。京都は地震リスクが全国平均並みですが、古い木造物件は倒壊危険度が高いとされています。京都府の「防災まちづくり計画」では、1981年以前の旧耐震基準物件が市内に約10万戸残存しています。購入時には耐震診断を実施し、耐震補強に100万円前後かかると見込んで資金計画を立てましょう。
さらに、長期運営では物件の出口戦略を早期に描いておくことが成功を左右します。京都市中心部の築古町家は国内外の富裕層から需要があるため、適切に改修しておけばリセールバリューが高まります。一方、郊外の築浅アパートは市内人口減少が続くと売却価格が下がりやすいため、10年以内に売却するか、借入を完済してキャッシュフロー物件として保有し続けるかを検討する必要があります。
最後にひとつだけ「結論」として強調したいのは、京都市場では短期の価格上昇を狙う転売よりも、文化的価値と観光需要を生かした長期保有が成功確率を高めるということです。歴史的建造物と最新規制が同居する京都だからこそ、リスクを読み解きながら粘り強い運営を続ける姿勢が求められます。
まとめ
ここまで、京都で不動産投資を成功させるための基礎知識を立地、市場特性、運営戦略、資金計画、リスク管理の5つの視点から紹介しました。ポイントは、需要層を明確にし、条例や補助制度を正しく理解したうえで、柔軟な運営プランを用意することです。まずは小規模でも自分が管理しやすいエリアから始め、京都らしさを生かした付加価値を高めていきましょう。実際に行動することでしか見えてこない課題も多いので、この記事を参考に一歩踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」2024年版 – https://www.mlit.go.jp/kankocho/
- 総務省「住民基本台帳人口移動報告」2025年3月公表 – https://www.stat.go.jp/
- 京都市都市計画局「都市計画道路の整備プログラム」2024年改訂版 – https://www.city.kyoto.lg.jp/
- レインズ関西「不動産取引価格情報」2025年4月 – https://www.reins.or.jp/
- 住宅金融支援機構「フラット35リノベ」制度概要 2025年度 – https://www.flat35.com/
- 京都市観光協会「やさしい日本語ガイドライン」2024年版 – https://www.kyokanko.or.jp/