広島は新幹線で大阪・福岡の両都市へ約1時間でアクセスできる交通拠点です。そのため単身赴任者や学生が多く、ワンルーム需要が底堅い一方、再開発も進み家賃相場が緩やかに上昇しています。しかし「地価が東京ほど高くないから簡単に儲かる」と短絡的に考えるのは危険です。この記事では、投資未経験の方でも理解できるように、物件選定から融資、運営までの流れを丁寧に解説しつつ、広島エリア特有の実質利回りの計算ポイントを紹介します。読み終える頃には、具体的な次の一歩を自信を持って踏み出せるはずです。
広島マンション市場の現在地

まず押さえておきたいのは、広島市中心部の人口動態です。総務省統計局の最新推計では、2025年時点で20〜39歳人口が微増しており、単身世帯比率は全国平均より高い水準で推移しています。この層が安定した賃貸需要を生むため、ワンルームや1LDKの空室期間は平均1.2か月と短い傾向です。
一方で価格は上昇基調にあるものの、同面積・築年数の物件を東京23区と比較すると約6割の水準にとどまります。つまり取得コストに対して家賃が相対的に高く、実質利回りを確保しやすい構造と言えます。ただし、再開発が進む紙屋町・八丁堀エリアは新築プレミアムが強く、利回りが低下しやすいので注意が必要です。
加えて、広島駅南口再整備や旧市民球場跡地プロジェクトなど大型開発が動いており、中長期的な資産価値上昇を期待する投資家が増えています。需要の裏付けがある一方、競争も激化しているため、価格と賃料のバランスを冷静に見極める姿勢が欠かせません。
失敗しない物件選びと実質利回り

ポイントは「表面利回り」と「実質利回り」を明確に区別することです。表面利回りは年間家賃収入を物件価格で割った単純な数字ですが、管理費や修繕積立金、固定資産税を加味しないため実態を映しません。広島の中古ワンルームで表面7%台を掲げる広告が目を引きますが、実質利回りは平均で5%前後に落ち着くケースが多いのが現実です。
実は築年数が10年以内の物件ほど修繕積立金がまだ低く設定されていることがあります。購入後数年で段階増額が予定されている場合、キャッシュフローが急減しかねません。重要なのは長期修繕計画の写しを確認し、10年先までの費用を数字で把握することです。また一部屋あたりの管理費が月額1万円を超える物件は、家賃に対するコスト比率が高く、利回りを圧迫しやすい点も見逃せません。
さらに、家賃査定は地元管理会社に最低でも2社依頼し、実勢賃料をすり合わせると精度が上がります。たとえば同じ築15年・25㎡でも、JR沿線駅徒歩5分と10分では月額1.2万円の差が生じることが珍しくありません。その差額が年間14万円を超えれば、実質利回りで約0.6ポイントの開きになります。数字が小さく見えても複利的に効いてくるので慎重に評価しましょう。
資金調達とキャッシュフローの組み立て
基本的に地方都市のワンルーム投資では、地方銀行か信用金庫のアパートローンを利用するケースが主流です。2025年10月時点で広島県内主要行の変動金利は年1.9〜2.6%が多く、35年返済が標準的です。自己資金を1〜2割入れると金利が0.2ポイント下がる例もあり、総返済額が約150万円減る試算になります。
重要なのは、金利だけでなく団体信用生命保険の範囲や繰上げ返済手数料を比較することです。仮に年収600万円で2,000万円の融資を受ける場合、家賃収入が年間120万円でも、空室率10%、経費20%を差し引くと年間手取りは約70万円に縮小します。そこから元利返済額を引いた月々のキャッシュフローがプラス3万円を切るようなら、想定外の修繕で赤字化するリスクが高まります。
また、2025年度の住宅ローン控除は投資用物件に直接適用されませんが、個人事業主として青色申告特別控除を利用すれば最大65万円の所得控除が得られる可能性があります。節税効果を前提に資金計画を立てる場合は、税理士にシミュレーションを依頼し、返済負担率を慎重に調整しましょう。
購入から運営までのステップ
まず物件価格の1%程度を目安に、仲介手数料や登記費用などの初期費用を資金計画に組み込みます。次に売買契約締結後に実施する重要事項説明で、管理規約や長期修繕計画を徹底して確認します。この段階で疑問点を解消しないと、後の運営で思わぬ出費が発生します。
引き渡し後は速やかに賃貸管理会社と専任媒介契約を結び、賃料設定や広告戦略を共有しましょう。実際の入居期間が長くなるかどうかは、入居者属性のミスマッチを避ける丁寧な審査にかかっています。家賃保証(サブリース)は空室リスクを軽減しますが、保証賃料が相場より15%程度低くなるため、実質利回りが目減りしやすい点を理解して選択する必要があります。
運営フェーズでは、毎月の管理報告書をチェックし、修繕費が平均を超えていないか確認します。たとえば築20年以上のマンションでは給排水管更新が控えており、戸当たり40万円前後の負担が発生します。積立金の不足が見込まれる場合、臨時徴収で一括支払いを求められる可能性もあります。予備費として家賃の6か月分を手元資金に確保しておくと、突発的な支出にも耐えやすくなります。
税制と補助制度の2025年度ポイント
2025年度に有効な代表的制度は「特定認定長期優良住宅の不動産取得税軽減」です。広島市では一定の耐震・省エネ基準を満たす新築マンション取得時に、税率が標準3%から1%へ引き下げられます。対象期間は2026年3月31日契約分までと定められており、該当すれば取得費を数十万円削減できます。
一方で国交省の「賃貸住宅省エネ化支援事業」は、断熱改修費の1/3を補助する制度ですが、区分所有ワンルームは対象外です。制度の名称や対象要件を正確に確認し、自分の投資計画に当てはまるか必ず照合してください。また固定資産税の新築軽減措置は築後5年間1/2となるため、キャッシュフロー表では6年目以降の税額を自動で増額させておくと資金繰りのズレを防げます。
最後に、マイナンバーカードとe-Taxを使った青色申告の電子申告特別控除が2025年度も継続しています。電子申告を行うだけで追加10万円の控除を受けられるため、帳簿をクラウド会計で管理し節税メリットを最大化しましょう。
まとめ
広島のマンション投資は、東京より低い購入価格で比較的高い実質利回りを確保できる点が魅力です。ただし管理費や修繕積立金、税負担を加えた後の手取りを見誤ると、期待ほどキャッシュが残らないケースもあります。本記事で紹介した市場動向の把握、詳細な費用見積もり、そして長期的視点での資金管理が成功のカギです。次に物件情報を探す際は、表面利回りに惑わされず、必ず実質利回りまで試算したうえで行動を起こしてください。自ら数字を検証する習慣が、安定した資産形成への最短ルートになります。
参考文献・出典
- 広島市都市整備局 – https://www.city.hiroshima.lg.jp
- 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」 – https://www.stat.go.jp
- 日本不動産研究所「全国賃料指数2025」 – https://www.reinet.or.jp
- 不動産経済研究所「全国マンション市場動向2025年版」 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省「2025年度税制改正概要」 – https://www.mlit.go.jp