不動産の税金

不動産クラウドファンディングの始め方と相続対策

不動産投資に興味はあるものの、「多額の自己資金がない」「管理の手間が不安」と感じて踏み出せない人は少なくありません。実は、近年急成長している不動産クラウドファンディングなら、一口1万円から手軽に参加でき、さらに相続対策に役立つ仕組みも整っています。本記事では、不動産クラウドファンディング 始め方 相続対策という三つのキーワードを軸に、投資の基本から2025年度の最新制度までを丁寧に解説します。読み終えるころには、少額から始める具体的な手順と、将来の資産承継を見据えた活用法がイメージできるようになるはずです。

不動産クラウドファンディングとは何か

不動産クラウドファンディングとは何かのイメージ

まず押さえておきたいのは、不動産クラウドファンディングが「不動産特定共同事業法」に基づく仕組みである点です。投資家はオンライン上で小口化された不動産持分を購入し、賃料収入や売却益を分配金として受け取ります。金融庁のデータによると、2025年4月時点で国内の登録事業者は90社を超え、累計調達額は5000億円を突破しました。市場拡大の背景には、低金利環境で利回りを求める資金が流入したことに加え、電子契約の解禁で手続きが簡素化されたことがあります。

重要なのは、投資家が物件を直接保有しないため、建物の修繕や入居者対応を事業者に任せられる点です。つまり、不動産の魅力とクラウドファンディングの手軽さを両立させたハイブリッド型の投資と言えます。一方で、元本保証はなく、事業者の経営破綻リスクもゼロではありません。この特性を理解したうえで、サービスを比較検討する姿勢が欠かせません。

まず押さえておきたいメリットとリスク

まず押さえておきたいメリットとリスクのイメージ

ポイントは、少額投資・分散投資・相続対策という三つのメリットが同時に得られることです。1口1万円から始められるため、初心者でも資金を分散しながら複数案件に参加できます。さらに、相続が発生した際には持分評価が市場価格より低く算定されるケースが多く、結果として相続税の負担を抑えられる可能性があります。国税庁の財産評価基本通達でも、小口化された不動産持分は「非上場株式に類似する評価」という扱いになり、実勢価格より20〜30%低く評価される例が報告されています。

一方で、利回りが高い案件ほど工事遅延や売却不成立のリスクが上がる点に注意が必要です。また、途中解約が原則不可のファンドが多く、資金をロックされる期間が2〜5年と長めです。金融庁「金融サービス利用者相談室」の統計によると、2024年度の相談件数で最も多かったのは「出資後の中途解約に応じてもらえない」という内容でした。つまり、メリットを最大化するには、利回りだけでなく運用期間や物件タイプ、事業者の財務健全性まで確認する必要があります。

始め方のステップと注意点

実は、口座開設から投資までの流れはオンラインで完結します。下記は2025年10月時点で一般的な手順です。

  • サービス選定・無料会員登録
  • 本人確認(マイナンバーカードか運転免許証+補助書類)
  • 投資用口座への入金
  • 案件への申込・抽選または先着方式で出資
  • 運用報告の確認と分配金受取

まず、サービス選定では不動産特定共同事業の許可区分(第1号〜第4号)を確認しましょう。許可の種類によって劣後出資比率や電子取引の制限が異なります。次に、投資前に開示される「事業スキーム説明書」を読み込み、レバレッジ比率や優先劣後構造を把握します。例えば、総事業費の30%を事業者が劣後出資している案件なら、物件価値が30%下落しても投資家元本に影響が及ばない設計です。

さらに、入金タイミングにも注意が必要です。多くのサービスは口座に残高がある投資家を優先するため、募集開始と同時に資金を確保しておくと当選確率が上がります。また、運用期間中は「匿名組合契約」に基づき損益通算が制限されるため、他の不動産所得や譲渡所得との相殺はできません。この税務上の特徴を踏まえ、ポートフォリオ全体でのバランスを検討しましょう。

相続対策に活用するポイント

重要なのは、相続税評価を抑えつつ、収益を次世代へスムーズに移転できる点です。不動産クラウドファンディングの持分は「権利の種類が限定され流動性が低い」と判断されるため、路線価や公示地価ではなく「原価法的な評価」が用いられるのが一般的です。その結果、現金で保有するより評価額が2〜3割下がり、相続税軽減につながります。

さらに、遺産分割のしやすさも見逃せません。実物不動産は1棟を相続人で分割すると共有トラブルが生じがちですが、小口化された持分なら口数単位で自由に分けられます。例えば、300万円を3人の子へ100万円ずつ均等に分けることも可能です。また、2025年度税制改正で「相続時精算課税制度」の使い勝手が改善され、贈与時の年次申告が簡素化されました。これを利用して生前に持分を贈与すれば、累計2500万円まで非課税で資産移転できます。

一方で、相続人が投資サービスに口座を持っていない場合、手続きに時間がかかることがあります。対策として、生前から家族にサービス名やログイン情報を共有し、遺言書で相続方法を明記しておくとスムーズです。加えて、被相続人が存命中に「名義書換サービス」へ加入しておけば、死亡時の名義変更手数料が無料になる事業者もあります。

2025年度の制度と最新動向

まず押さえておきたいのは、2024年12月に改正された不動産特定共同事業法施行規則が、2025年4月から完全施行された点です。改正では、電子取引業務における投資家保護を強化するため、重要事項説明書の電子交付時に電子署名を必須化しました。これにより、説明義務違反があった場合の賠償請求が容易になり、投資家のリスクが低減しています。

また、国土交通省は2025年度より「サステナブル賃貸住宅推進事業」を開始し、環境性能の高い賃貸物件への補助金を創設しました。クラウドファンディング事業者がこの補助金を活用すると、改修費の1/3(上限500万円)が支給される仕組みです。環境性能が高い物件は長期的に入居ニーズが高まると予想され、分配金の安定に寄与します。

さらに、金融庁は同年度から「クラウドファンディング適格投資家制度」を導入しました。年間500万円を超えて投資する個人は、リスク理解度テストと簡易面談が義務付けられ、高額投資家と一般投資家を区分する形です。これにより、少額投資家はリスクの高い案件への過大投資を避けやすくなり、健全な市場拡大が期待されています。

最後に、マイナンバー連携による分配金の自動申告サービスも2025年10月から順次スタートしています。投資家は源泉徴収票を手入力する手間がなくなり、確定申告の負担が大幅に軽減される見込みです。このように制度面の整備が進むことで、不動産クラウドファンディングはますます身近な資産形成ツールになっています。

まとめ

ここまで、不動産クラウドファンディングの仕組みと始め方、そして相続対策への応用について解説しました。少額から参加できる点は資産形成の入り口として魅力的であり、相続時の評価減効果や分割の容易さは長期的な家族の安心につながります。まずは信頼できる事業者を選び、複数案件へ分散投資しながら実践的に学びましょう。早めにスタートするほど運用期間を確保でき、制度改正の恩恵も受けやすくなります。今日得た知識を一歩目に、将来の資産と家族への想いを形にしてみてください。

参考文献・出典

  • 金融庁「不動産クラウドファンディング業界動向レポート2025」 – https://www.fsa.go.jp/
  • 国土交通省「不動産特定共同事業法施行規則等の改正概要」 – https://www.mlit.go.jp/
  • 国税庁「財産評価基本通達 2025年度版」 – https://www.nta.go.jp/
  • 総務省統計局「家計調査年報2024」 – https://www.stat.go.jp/
  • 金融サービス利用者相談室「2024年度 相談事例集」 – https://www.fsa.go.jp/ordinary/
  • 国土交通省「サステナブル賃貸住宅推進事業概要」 – https://www.mlit.go.jp/

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