年収が300万円前後だと、貯金も限られ資産形成に不安を抱く人が多いものです。しかし、少額から複数の不動産に分散投資できるREIT(リート)なら、大きな自己資金を用意せずに不動産収益を取り込めます。本記事では「どのくらいの資金が必要なのか」「口座開設は難しくないのか」という疑問に寄り添いながら、2025年10月現在の制度を前提に具体的な始め方を解説します。最後まで読めば、最初の一口を安心して踏み出すためのステップが明確になります。
REITのしくみと少額投資のメリット

まず押さえておきたいのは、REITが不動産投資信託の一種であり、多数の投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設を購入し、その賃料や売却益を分配する仕組みだという点です。東京証券取引所の「東証REIT指数」によると、2025年9月末の平均分配利回りは4.2%前後で、上場企業の平均配当利回りを上回る水準を保っています。つまり、値上がり益だけでなく比較的高い分配金を期待できることが魅力です。
さらに、投資単位が一口あたり数万円から十数万円の銘柄が多いため、株式よりも手軽に複数銘柄を組み合わせて分散できる点が強みです。例えば、国内最大級の物流系REITは一口13万円前後で取引されており、年収300万円の方でも毎月1万円ずつ積み立てれば1年ほどで購入できます。この少額性こそが、給与が限られていても不動産収益にアクセスできる最大のメリットになります。
また、上場しているため売買の透明性が高く、株式と同様にリアルタイムで価格が表示されます。不動産のように売却手続きが長引くことがなく、資金が必要なときに市場で換金しやすいのもポイントです。ただし、価格は日々変動するため、短期売買ではなく分配金を受け取りながら中長期で保有する戦略が基本となります。
年収300万円でも投資が可能な理由

ポイントは、手元資金を一度に用意するのではなく、毎月のキャッシュフローから無理なく積み立てる設計にあります。総務省「家計調査」(2024年平均)によると、単身世帯の可処分所得は約20万円で、そのうち平均貯蓄率は7%前後です。この割合を10%に高めれば、月2万円を投資に回せる計算になります。
実は、配当課税後の実質利回りを考慮しても、年4%前後の分配金を再投資すれば複利効果が期待できます。たとえば、年間24万円を積み立て年4%で運用すると、10年後には約296万円と元本の2割近い運用益が見込めます。もちろん価格変動リスクは伴いますが、長期の積み立ては平均購入単価を平準化する効果があり、短期的な値動きの影響を抑えることができます。
一方で、住宅ローンや教育費など他の固定支出が大きい世帯では、毎月の投資額を1万円にとどめる方法も現実的です。重要なのは、家計を圧迫しない範囲で継続することであり、最初から大きく投じる必要はありません。年収の多寡よりも、投資を習慣化して時間を味方につける姿勢が成果を左右します。
証券口座開設から購入までのステップ
基本的に、REITを買うには証券会社の総合口座とNISA口座の両方を開設しておくと税制面で有利です。オンライン証券なら、スマートフォンでの本人確認により申し込みから最短2日で取引を開始できます。ここでは、一般的な流れを簡潔に示します。
1. 証券会社のウェブサイトで口座開設を申し込み、マイナンバーカードか運転免許証で本人確認 2. 審査完了後、ログインIDが発行され、同時にNISA利用の確認書類が到着 3. 銘柄検索で「○○リート投資法人」などと入力し、購入数量と価格を指定 4. 取引成立後は、約2営業日で受渡しが完了し、保有残高に反映
手順そのものは株式と同じで、特に難しい操作はありません。約定後は「ポートフォリオ」画面で値動きと分配金予定を確認できます。こまめに価格を見ると不安になりがちですが、分配金利回りの推移や物件取得状況など中長期の指標をチェックすると落ち着いて保有しやすくなります。
また、自動積み立てサービスを利用すると、毎月同じ日に一定額で購入できるため、忙しい会社員でも手間をかけずに継続可能です。ドルコスト平均法が働き、価格が高いときには少なく、安いときには多く買い付ける仕組みになるため、長期的なリスク低減につながります。
2025年度NISAと税制の活用法
重要なのは、2024年に刷新された新NISA制度が2025年度も継続している点です。金融庁資料によれば、年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)の非課税投資枠が何度でも再利用でき、総枠は1800万円まで拡大しました。REITは成長投資枠の対象となるため、分配金と売却益が最長無期限で非課税になります。
通常の特定口座でREITを売却すると、20.315%の譲渡益課税がかかります。同じ利回りでもNISA口座で運用すれば、分配金がそのまま再投資できるため複利効果が高まります。仮に年間4%の分配金を10年間非課税で再投資すると、課税口座に比べて最終残高が約8%高くなる試算もあります。
さらに、2025年度税制では、上場株式等の配当控除が総合課税の場合のみに適用される仕組みが維持されています。年収300万円の方が配当金を総合課税にすると所得税率が低いためメリットがありますが、申告の手間を考えるとNISA活用が手軽です。いずれの方法でも、確定申告で損益通算や繰越控除を使えるよう、年間取引報告書を保管しておくことが大切です。
長期で利益を伸ばすための運用ポイント
まず重視すべきは、物件タイプと地域の分散です。物流特化型、住宅特化型、オフィス特化型では景気の影響度合いが異なり、組み合わせることで特定セクターの不況に耐えやすくなります。国土交通省の「不動産価格指数」でも、住宅とオフィスでは価格サイクルがずれる傾向が示されています。
次に、個別銘柄のPO(公募増資)や資産入れ替えの動向をチェックしましょう。増資は一時的に価格を押し下げることがある半面、取得物件の質が向上すれば中長期の分配金安定に寄与します。IR資料の「1口あたりFFO」(営業キャッシュフロー指標)が伸びているか確認する習慣をつけると、表面利回りだけに惑わされません。
また、分配金を全額受け取ってしまうと生活費に溶け込みがちです。ネット証券で設定できる「配当自動再投資サービス」を活用すると、分配金が自動で同一銘柄に再投資され、複利効果を最大化できます。時間を味方につけるためには、再投資率を高める仕組みを最初に整えておくことが肝心です。
最後に、利回りが急上昇している銘柄だけを追いかけるのは避けましょう。東証REIT指数が短期的に10%以上下落する局面は過去10年間で5回ありましたが、その後半年で回復するケースが多いと日本取引所グループのデータが示しています。値下がり時こそ追加購入の好機と考え、シナリオを決めて臨む姿勢が長期成果を支えます。
まとめ
REITは、一口数万円から日本全国の不動産に分散投資できる便利な金融商品です。年収300万円でも、毎月1〜2万円の積み立てと新NISAの非課税枠を組み合わせれば、安定した分配金と複利効果を享受しやすくなります。物件タイプの分散や再投資設定など基本を押さえ、価格変動に惑わされず中長期で保有することが成功の鍵です。まずは証券口座を開設し、少額から一歩を踏み出してみましょう。行動を起こした今日が、将来の資産形成を大きく左右します。
参考文献・出典
- 金融庁 新しいNISAの概要 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/
- 東京証券取引所 REIT指数月報 https://www.jpx.co.jp/
- 総務省 家計調査年報 https://www.stat.go.jp/
- 国土交通省 不動産価格指数 https://www.mlit.go.jp/
- 日本取引所グループ 投資商品レポート https://www.jpx.co.jp/