不動産投資は興味があっても、物件価格やローン返済、税金など複数の数字が絡み合い「何から計算すればいいのか分からない」と戸惑う人が多いものです。特に自己資金を含め総額1000万円前後で始めようとすると、少しの計算ミスがキャッシュフローを大きく揺らします。本記事では「収益物件 収支計算 1000万円」というキーワードを軸に、初めての方でも無理なく数字を追える方法を解説します。読み終えた頃には、購入前にチェックすべき費用や2025年度時点で使える優遇策まで把握でき、具体的な行動計画を描けるようになるはずです。
キャッシュフローを理解する第一歩

まず押さえておきたいのは、キャッシュフローが月々の手取り利益を示す指標だという点です。表面利回りだけを見て安心すると、実際の入出金にギャップが生まれ失敗の原因になります。家賃収入からローン返済、管理費、固定資産税、修繕費を差し引き、残った現金がプラスかどうかを確認する習慣が欠かせません。
実際には、国土交通省「賃貸住宅市場概況」(2024年度版)によると、区分マンションの平均家賃利回りは都心部で4〜5%、地方中核市で6〜7%程度に落ち着いています。利回りが高く見えても、築年数が古い物件は修繕コストが上昇しやすく、結果として可処分利益が縮小する傾向があると同調査は指摘しています。つまり、単純な利回り比較だけでなく、支出項目の多さと将来の増減をセットで考える必要があります。
また、金融機関の融資条件もキャッシュフローに直結します。2025年10月時点で主要地方銀行の投資用ローン金利は変動で2.0〜3.5%が中心帯です。金利が1%上がると、1000万円を20年返済で借りた場合の年間返済額は約5万円増える計算です。わずかな金利差でも長期では大きな差になるため、複数行に事前相談する姿勢が重要です。
1000万円で購入できる物件タイプと費用内訳

ポイントは、1000万円の総予算を「購入費」「諸費用」「運転資金」に分けて考えることです。購入価格800万円、諸費用100万円、運転資金100万円という配分が一般的な目安になります。購入価格を抑え過ぎて修繕費が膨らむと本末転倒のため、築20年以内・専有面積20〜30㎡のワンルーム区分を想定するとバランスが良いでしょう。
諸費用には仲介手数料、登記費用、ローン事務手数料、不動産取得税が含まれます。法務省登記統計(2025年上期)では、区分マンションの平均諸費用率は物件価格の12〜15%と報告されています。つまり800万円の物件なら約100万円前後を別に用意する必要があります。
さらに、購入直後から発生する管理費・修繕積立金は月1万円前後が目安ですが、滞納や大規模修繕の積立不足が潜む物件も存在します。重要なのは、管理組合の長期修繕計画書を確認し、将来の負担上昇リスクを数字で捉える姿勢です。これらを見落とすと、当初のシミュレーションが崩れキャッシュフローが赤字に転落する恐れがあります。
収益物件 収支計算 1000万円シミュレーション
実は、収支計算は「購入時」「保有中」「売却時」の三つに分けて考えると整理しやすくなります。ここでは築15年、都内郊外駅徒歩8分、価格800万円、家賃5.5万円のワンルームを例にします。ローンは金利2.5%、返済期間20年、自己資金200万円を投入すると仮定しましょう。
購入時の自己資金200万円に加え、諸費用100万円、合計300万円を先に支払います。ローン残高は600万円で、月々の元利返済は約3万2千円となります。毎月の家賃5.5万円から管理費・修繕積立金1万円、固定資産税・都市計画税を12ヶ月で割った4千円、空室・募集広告費積立として5千円を計上すると、運営費合計は1万9千円です。
家賃5.5万円から運営費1万9千円と返済3万2千円を引くと、月のキャッシュフローは4千円の黒字となります。年間では約4万8千円ですが、ローン残債の減少を含む「税引き前投資収益率(FCR)」は約5.6%になります。総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)で示された平均利回り5.1%を上回る数値であり、妥当なラインといえます。
しかし、5年後にエアコン交換10万円、10年後に外壁改修費として臨時徴収10万円の可能性を織り込むと、実質利回りは4%台まで下がります。このように長期的な修繕イベントをシミュレーションに入れることで、過度に楽観的な判断を避けられます。
2025年度の税制と補助制度を味方につける
基本的に、不動産所得は総合課税となり、給与所得者が赤字を出した場合は損益通算による節税メリットが得られます。ただし、赤字目的の投資を国税庁は厳しく監視しており、過大な減価償却は否認リスクがある点を覚えておきましょう。
2025年度の改正点で注目なのが、住宅ローン控除の環境性能要件強化です。投資用物件は対象外ですが、区分所有で自ら住む期間がある場合、断熱性能等級4以上なら控除率が0.7%で最大10年間受けられます。将来、自己居住向けに用途変更を検討する際は覚えておくと有利です。
また、賃貸住宅の省エネ改修に対する「賃貸集合住宅省エネ化支援事業(2025年度)」は、既存の外壁断熱や高効率給湯器設置に対し、工事費の最大3分の1、上限50万円の補助が受けられます。適用条件として賃借人へ省エネ家電の情報提供義務があるため、事業計画書を作成し、予算枠が埋まる前に申請する必要があります。期限は2026年3月末までです。
収支改善を続けるための具体策
ポイントは、購入後も定期的に数字を見直し、収支を改善し続ける姿勢にあります。まず家賃は周辺相場を四半期ごとに確認し、長期入居者には設備の小規模更新を提案しながら適正範囲で値上げを検討しましょう。設備投資は初期費用がかかりますが、空室期間の短縮によって総収入が増えるケースが多くあります。
さらに、管理会社との委託契約を年1回レビューすることも効果的です。国土交通省の調査では、管理手数料の平均は家賃の5%前後ですが、物件が複数になれば3〜4%まで交渉余地があります。数字を提示しながら相見積もりを取ると、無理なくコストを圧縮できます。
最後に、ローンの借換えは大きな節約手段です。2025年10月時点で、インターネット系銀行が投資用ローンの金利を1.8%台まで下げています。残債が500万円以上、残期間が10年以上ある場合は、借換え対象になる可能性が高いです。シミュレーション上、金利差が1%以上縮まるなら手続き費用を含めてもメリットが出やすいため、定期的に検討しておきましょう。
まとめ
本記事では1000万円規模で始める区分マンション投資を想定し、キャッシュフローの基本、費用配分、シミュレーション手順、2025年度の優遇策、さらに運営改善のコツまで順を追って解説しました。重要なのは、購入前に諸費用と将来修繕を含めた収支計算を行い、購入後も金利や家賃条件を定期的に見直す習慣です。行動に移す際は、記事中で紹介したデータを参考に、自己資金とリスク許容度を明確にしてから物件選定を進めてください。数字に強くなるほど投資の再現性は高まり、安定したキャッシュフローが得られるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅局「賃貸住宅市場概況2024」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省「住宅・土地統計調査 2023」 – https://www.stat.go.jp
- 法務省「登記統計 2025年上期」 – https://www.moj.go.jp
- 国税庁「令和7年度税制改正の解説」 – https://www.nta.go.jp
- 経済産業省「賃貸集合住宅省エネ化支援事業 2025年度」 – https://www.meti.go.jp