不動産の税金

不動産クラウドファンディングの危険と安全対策

近年、スマホひとつで始められる投資として不動産クラウドファンディングが注目されています。しかし「少額で高利回り」と聞くほど不安も募り、「本当に安全なのか」「損をしない方法はあるのか」と戸惑う人が少なくありません。本記事では、不動産投資歴15年の筆者が仕組みからリスク、2025年時点で有効な制度までを丁寧に解説します。読み終える頃には危険を見極める目と、損失を抑える実践的なチェックポイントが手に入るでしょう。

不動産クラウドファンディングの基本構造を理解する

不動産クラウドファンディングの基本構造を理解するのイメージ

まず押さえておきたいのは、不動産クラウドファンディングが「不動産特定共同事業法(不特法)」に基づく共同投資商品だという点です。投資家はオンラインで小口資金を預け、事業者が集合した資金で物件を取得し、賃料収入や売却益を分配します。金融庁の統計によれば、2025年10月時点で不特法許可・登録事業者は215社に達し、2019年比で約2.5倍に増加しました。

次に、募集方法は大きく「任意組合型」「匿名組合型」「ファンド型」の三つに分かれます。任意組合型は持分が登記されるため権利が強い一方、譲渡が難しい特徴があります。匿名組合型は権利が弱いものの、損失は出資額までに限定されます。ファンド型は紙面上の有価証券で取引できるため、比較的流動性が高いといえます。

さらに、投資家が負担する手数料には事務管理費、運用報酬、成功報酬など複数が存在します。利回り表示はこれらの費用控除後かどうかで大きく異なるため、表示形式を確認しないと期待利回りを取り違える恐れがあります。一見シンプルに見える商品でも、背後に複雑な権利関係とコスト構造がある点を踏まえることが重要です。

期待できるメリットと裏に潜むリスク

期待できるメリットと裏に潜むリスクのイメージ

ポイントは、不動産クラウドファンディングが「メリットとリスクのコインの裏表」であることです。まずメリットとして、最低1万円程度から分散投資が可能な点が挙げられます。また、賃貸管理や修繕対応を事業者が代行するため、オーナー業務の手間がかかりません。さらに、利回りは年3〜7%が中心で、同水準の債券より高い収益も期待できます。

一方で見逃せないのは、元本保証が存在しない事実です。物件の賃料下落や空室増加が続けば分配金が目減りし、最悪の場合は出資金の一部が戻らないケースもあります。国土交通省「住宅着工統計」によると、2023年から2024年にかけて賃貸住宅着工戸数は前年同月比8%増で推移しており、供給過多による賃料下落リスクが指摘されています。

加えて、運用期間中は原則として中途解約ができません。株式やREITのように市場で売却できないため、流動性リスクが高い点は初心者が見落としがちです。そして、事業者の経営破綻リスクも存在します。金融庁は四半期ごとに行政処分事例を公表していますが、2024年は不特法事業者3社が業務改善命令を受けています。つまり、事業者選びは利回り以上に慎重な判断が求められます。

「危険」と言われる理由を具体例で読み解く

実は、「不動産クラウドファンディング 危険」と検索される背景には、過去のトラブル事例が影響しています。2022年には匿名組合型ファンドを扱うA社が想定利回り8%を掲げながら、物件売却が長期化して分配が1年遅延しました。当初は「契約書で延長が可能」と説明していたものの、投資家の多くは延長条項を十分に理解していなかったのが実態です。

さらに、2023年にはB社が運用報告書の内容を誤って掲載し、賃料収入を実際より高く見せていたことが判明しました。金融庁は虚偽表示を問題視し、業務停止命令を出しています。このケースでは出資金は全額戻りましたが、公開情報を鵜吞みにせず、第三者監査の有無を確かめる必要があると痛感させられました。

また、2024年のC社の例では、物件が火災で全焼し、保険金請求が難航しました。保険契約が事業者名義だったため、投資家が直接請求できず、分配が半年以上滞ったのです。保険スキームと免責事項を確認しないと、突発的な事故で収益が途絶える危険が潜んでいることが分かります。

このように、表面利回りに目を奪われると、運用期間延長、情報開示の不備、災害リスクといった影に気づきにくくなります。したがって、過去のトラブルを学び、同じ轍を踏まない姿勢が欠かせません。

リスクを抑えるためのチェックポイント

重要なのは、投資前に「事業者」「物件」「契約」の三つを系統的に点検することです。まず事業者の健全性は、自己資本比率、運用実績年数、開示レポートの頻度で判断します。日本格付研究所が2025年1月に発表したレポートでは、自己資本比率20%以上の事業者は延滞率が0.2%未満にとどまる一方、10%未満では1.8%へ跳ね上がっています。

次に物件選定では、立地よりも「出口戦略」が鍵になります。賃貸運用後の売却価格を保守的に見積もり、鑑定評価書が第三者発行かどうかを確認しましょう。売却益を利回り計算に含める案件は、想定価格の下方乖離が起こったときの影響が大きいため、とくに注意が必要です。

最後に契約条項です。運用期間の延長条件、元本償還方法、優先劣後出資比率をチェックします。劣後割合が10%あるだけで、軽度の損失は事業者が負担しますが、5%以下だと投資家負担が早期に発生します。これらを総合すると、リスクをゼロにはできなくとも、事前の情報収集と比較で許容範囲に収めることは可能です。

2025年度の制度と税務上の注意点

まず、2025年度に適用される主な制度として、不特法に基づく電子取引業務の登録更新があります。更新を受けていない事業者は新規募集ができないため、登録番号と有効期限を必ず照会してください。また、2025年4月施行の改正金融商品取引法により、投資勧誘時の重要情報説明義務が強化されました。広告で想定利回りを示す際、賃料下落や空室率の前提を併記することが義務づけられているため、情報の透明性は以前より高まっています。

税務面では、配当は雑所得として総合課税になります。給与所得と合算されるため、課税所得が増えて税率が上がる場合があります。一方で、損失が発生した年は他の所得と通算できない点も留意が必要です。2025年度の税制改正で新たな控除は設けられておらず、損益通算不可のルールは継続します。

さらに、海外物件を組み込むファンドについては、2025年10月現在で二重課税調整措置は未整備のままです。そのため、海外源泉税が差し引かれると実質利回りが低下する場合があります。国税庁は「国外投資を含むクラウドファンディングの課税関係FAQ」を公表しているので、必ず確認しましょう。

まとめ

本記事では、不動産クラウドファンディングの仕組みからリスク、そして2025年度の最新制度までを解説しました。メリットは少額で始められ、手間をかけずに不動産収益を得られる点ですが、元本保証がないことや情報開示の質にばらつきがある点は見逃せません。投資を検討する際は、事業者の財務健全性、物件の出口戦略、契約条項の三つを必ず確認してください。記事で紹介したチェックポイントを実践すれば、危険を減らしながら不動産クラウドファンディングの魅力を最大限に生かせるはずです。まずは小額で試し、運用報告を継続的に読み込む習慣を身につけることから始めてみましょう。

参考文献・出典

  • 金融庁「電子取引業務を行う不特法事業者一覧」 – https://www.fsa.go.jp/
  • 国土交通省「住宅着工統計」 – https://www.mlit.go.jp/
  • 国税庁「国外投資を含むクラウドファンディングの課税関係FAQ」 – https://www.nta.go.jp/
  • 日本格付研究所「不動産クラウドファンディング市場レポート2025」 – https://www.jcr.co.jp/
  • 不動産特定共同事業推進協議会「2025年度制度改正ポイント」 – https://www.ftkkyoukai.jp/

関連記事

TOP