投資用のマンションやアパートをネットで検索すると、「収益物件 やめとけ」という強い警告が目に入ります。高額なローンを抱え、空室が続けば生活が一変するという不安は、初心者ほど大きいものです。しかし同時に、不動産は現物資産としてインフレに強く、安定収益を得られる魅力もあります。本記事では、怖い話がなぜ生まれるのかを紐解きつつ、安全に購入へ進む手順を解説します。読み終えたとき、物件選びで迷う気持ちが整理され、行動の指針が得られるはずです。
収益物件に「やめとけ」と言われる背景

まず押さえておきたいのは、「やめとけ」という声の多くが失敗例を基に語られている点です。国土交通省の不動産価格指数によると、地方の小規模アパート価格は2019年以降ほぼ横ばいですが、修繕費や金利はじわりと上昇しています。価格が動かない一方でコストだけ増えれば、利回りは当然低下し、失望の声が大きくなるのは自然な結果です。
一方で、成功事例の多くは立地と運営の工夫で安定収益を確保しています。総務省の人口推計では、20〜39歳の若年層が集中する都市圏では世帯数が微増しており、需要は底堅いままです。需要と供給のギャップを的確に読み、修繕・家賃設定を怠らなかったオーナーは、同じ期間でも家賃収入を伸ばしています。
つまり、「収益物件 やめとけ」という言葉には、情報の偏りが潜んでいます。悲観的な口コミだけで判断せず、数字と原因を切り分ける視点が重要になります。そのうえでリスクを許容できる仕組みを準備すれば、慎重でも前向きな投資判断が可能になります。
購入前に確認すべき四つの数字

ポイントは、最初に利回りの定義を整理することです。表面利回りは家賃総額を価格で割っただけの数字で、固定資産税や管理費を含みません。この数字が高くても安心はできず、実質利回りを計算してはじめて正味の収益力が見えてきます。
次に、空室率をエリア平均と比較しましょう。日本賃貸住宅管理協会の2024年度調査では、首都圏の平均空室率が約18%に対し、郊外では25%を超える地域もあります。想定家賃からこの比率を差し引き、さらに退去時のリフォーム費用も加算したうえで収支をシミュレーションすると、過度な期待を抑えられます。
最後に、長期修繕費と金利上昇幅を盛り込むことが欠かせません。金融庁のモニタリング結果では、投資用ローンの実行金利は2025年上期で平均2.4%ですが、0.5%の上昇が返済額を数十万円単位で押し上げるケースもあります。四つの数字を同時に動かし、最悪シナリオに耐えられるかを見極めましょう。
実は重要なヒアリングと現地調査
重要なのは、机上の数字を裏付ける現地確認です。インターネットでの物件情報は便利ですが、周辺環境や入居者層の変化までは写し取りません。昼と夜に現地を歩くと、街灯の少なさや騒音といった隠れたリスクを体感できます。
さらに、管理会社と既存入居者へのヒアリングが役立ちます。管理会社には退去理由や滞納率を尋ねることで、募集広告からは読み取れない運営実態が分かります。既存入居者には共用部の清掃頻度やトラブルの有無を聞くと、管理レベルを把握しやすくなります。
これらの声を集めることで、販売図面やレントロール(賃料表)の数字が現実と一致しているか検証できます。言い換えると、紙の情報と現場感覚を重ね合わせる作業こそが、購入後の後悔を最小化する鍵になります。
2025年度の融資と税制度のポイント
まず、2025年度は投資用ローンへの審査強化が続いています。金融庁のガイドラインにより、家賃収入だけでなく家計全体の返済負担率が精査されるため、自己資金を2割以上入れると審査が通りやすい傾向です。自己資金ゼロのフルローンは依然ハードルが高いと理解しましょう。
税制面では、減価償却費が節税に直結します。木造は22年、RC造は47年という法定耐用年数が基準になり、築古物件ほど償却期間が短く、早期に経費化できます。また、2025年度も固定資産税の新築軽減は居住用のみで、収益物件には適用されません。投資家向けに広く使われている消費税還付スキームも、国税庁の通達改正で要件が厳格化されており、専門家と事前に確認する姿勢が欠かせません。
さらに、インボイス制度への対応も忘れがちです。管理会社に課税事業者が多いため、課税売上が1000万円を超えるオーナーは適格請求書の発行が必要になります。年間家賃1200万円を超える場合は特に注意が必要で、税理士と早めに打ち合わせることで手続きの混乱を避けられます。
失敗しないための購入手順
基本的に、購入手順を体系化すると判断ミスが減ります。以下の流れを踏むと、情報が整理され、融資の審査資料もスムーズに整います。
- 資金計画の作成(自己資金比率・返済比率の確認)
- 市場調査(人口動態と賃料相場の比較)
- 物件情報の収集と初期選別(利回りと修繕履歴)
- 現地調査とヒアリング(昼夜で環境チェック)
- 融資打診と条件交渉(複数行を比較)
- 売買契約・決済後の管理体制構築(委託契約の見直し)
各ステップでは、「次の資料を何日にそろえるか」をカレンダーに落とし込みましょう。タスクが可視化されると、感情的な焦りが減り、数字の比較に集中できます。また、仲介会社と税理士を巻き込むタイミングを早めることで、融資や税務の要件漏れを防げます。
結論として、購入手順は複雑に見えても、チェックリスト化すれば再現性は高まります。焦って契約を急ぐより、ひとつひとつ確認しながら進めるほうが、結果的にキャッシュフローの安定につながります。
まとめ
ここまで、「収益物件 やめとけ」と言われる理由を分析し、安全に購入へ進む具体策を示しました。失敗談の多くは、立地の需給バランスを読み違えたことや、数字を甘く見積もったことに起因します。逆に言えば、実質利回り・空室率・修繕費・金利の四つを厳しく試算し、現地調査と専門家の助言を組み合わせれば、リスクは大幅に抑えられます。行動に移す際は、本記事で示した手順をチェックリストとして活用し、自分の許容範囲を超えない投資計画を立ててください。堅実な準備こそが、安定収益への最短ルートになります。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 人口推計 – https://www.stat.go.jp
- 日本賃貸住宅管理協会 賃貸市場データ – https://www.jpm.jp
- 金融庁 金融行政モニタリングレポート2025 – https://www.fsa.go.jp
- 国税庁 インボイス制度Q&A – https://www.nta.go.jp