不動産の税金

競売と不動産クラウドファンディングで狙う高利回り入門

投資初心者でも「競売」「不動産クラウドファンディング」「利回り」といった言葉を耳にする機会が増えました。しかし、それぞれの仕組みやリスクを正しく理解せずに飛び込むと、せっかくの資金を無駄にしかねません。本記事では、競売物件で利回りを高める方法と、クラウドファンディングで少額から不動産に参加する手順を分かりやすく解説します。読み終えたとき、あなたは二つの投資手法を比較し、自分に合った戦略を描けるようになるはずです。

競売物件で高利回りを狙うしくみ

競売物件で高利回りを狙うしくみのイメージ

まず押さえておきたいのは、競売物件には市場価格より安く仕入れられる可能性がある点です。裁判所の手続きで売却されるため、成約価格は路線価や周辺相場の七割前後に落ち着くケースが多いといわれます。その差額がキャピタルゲイン(値上がり益)やインカムゲイン(賃料収入)の余地となり、表面利回りを押し上げる効果が期待できます。

しかし、安さの裏にはリスクも潜んでいます。占有者の立ち退き交渉や、内見不可による修繕費の不確実性など、通常の仲介取引では想定しにくい手間が発生します。国土交通省の統計でも、競売落札後に追加修繕費が物件価格の一割以上かかった事例が二割を超えています。つまり、高利回りを得るには、修繕見積もりと法的手続きをセットでシミュレーションする準備が不可欠です。

さらに、ローンが組みにくい点も見逃せません。金融機関は競売物件への融資を慎重に判断し、自己資金を五割以上求めることがあります。自己資金を厚く入れれば月々の返済負担は軽くなる半面、レバレッジ効果は下がります。資金計画と利回り目標のバランスを事前に確認する姿勢が成功への近道です。

不動産クラウドファンディングの基本構造

不動産クラウドファンディングの基本構造のイメージ

一方で、不動産クラウドファンディングは少額から始められる点が魅力です。事業者が物件を選定し、複数の投資家がインターネット上で出資します。投資家は持分割合に応じて分配金を受け取るため、自己管理の手間はほとんどありません。金融庁が公表する2025年3月末時点のデータによると、国内クラウドファンディング市場残高は前年同月比25%増と着実に拡大しています。

ポイントは、利回りの表示が「予定」であることです。多くのファンドが年利4〜8%を提示しますが、賃料変動や売却損益によって実績は上下します。また、優先劣後方式を採用し、元本毀損リスクを事業者が一定程度負担する仕組みも広がっています。とはいえ、倒産リスクや不動産市況の急変はゼロになりません。予定利回りだけを見て判断するのではなく、運用期間と出口戦略まで読み解く力が必要です。

投資家は電子取引契約(2021年施行改正不特法)により、オンラインで重要事項説明書を確認できます。ここには手数料率や優先劣後割合が明記されているため、読まずにクリックするのは避けましょう。実は、この書面に投資家保護の情報が凝縮されているからです。

利回りを比較するときの落とし穴

重要なのは、競売物件とクラウドファンディングで利回りの計算方法が異なる点です。競売では表面利回り(年間賃料÷取得総額)を目安にしますが、取得総額には登記費用やリフォーム費を加える必要があります。日本不動産研究所の2025年調査では、東京23区ワンルームの平均表面利回りは4.2%でした。これを基準に、競売で七割の取得率なら理論上6%台に引き上げられる計算です。

一方、クラウドファンディングは分配前に設定管理費が差し引かれるため、表示利回り=実質利回りではありません。さらに、ファンドによって配当方式(毎月型・償還時一括型)が異なり、複利効果に差が生じます。言い換えると、単純な数字比較では本質を見誤るわけです。

また、税負担もチェックポイントになります。競売物件の家賃収入は総合課税で、所得税率が累進適用されます。クラウドファンディングは源泉分離課税20.42%があらかじめ控除されるため、確定申告不要で済むケースが多いです。ご自身の所得帯に合わせて、手取りベースの利回りを再計算すると判断がより鮮明になります。

2025年度の税制と手数料を踏まえた投資戦略

まず、2025年度税制改正で創設された「省エネ賃貸住宅促進減税」は注目に値します。対象となる基準適合物件を取得し、所定の認定を受けると、新築の場合は固定資産税が最大3年間半額になります。ただし、競売物件は未認定の中古住宅が多く、同減税の適用外となるため注意が必要です。

クラウドファンディングでは、事業者手数料や運営報酬が利回りに直接影響します。金融庁の開示資料によれば、2025年度の平均運営報酬率は年0.5〜1.0%です。つまり、予定利回り6%のファンドでも実質は5%台前半となります。手数料が透明に示されているかどうかを確認し、高利回りに見えても中身を吟味する姿勢が欠かせません。

さらに、競売物件の取得に際しては登録免許税の軽減措置が2025年度も継続中です。個人が居住用物件を賃貸兼用で取得する場合、税率0.3%が0.15%に下がります。ただし、適用期限が2026年3月までと発表されていますので、スケジュール管理が大切です。

競売とクラウドファンディングの併用戦略

ポイントは、二つの手法を補完的に使うことでリスクを分散できることです。競売で資産価値の高い現物を保有しつつ、クラウドファンディングで複数エリアへ少額投資すれば、地域リスクと物件固有リスクを同時に抑えられます。実際、筆者がサポートする投資家の中には、競売物件で年間利回り7%を確保しつつ、クラウドファンディングで3案件に分散して平均5%を上乗せしている例があります。

また、クラウドファンディングのキャッシュフローは分配時期が事前に決まっているため、競売物件の突発修繕費の備えとしてプールしやすい利点があります。資金の出口においても、物件売却には時間がかかりますが、ファンドの償還はあらかじめ期日が設定されています。つまり、流動性と収益性を組み合わせる発想こそが、2025年の不動産市場で生き残る鍵なのです。

最後に、情報収集の質が結果を大きく左右します。競売では裁判所の「BIT」サイト、クラウドファンディングでは金融庁登録事業者リストを習慣的にチェックしましょう。最新データを自ら確認する行動が、高利回りと安全性を両立させる最短経路となります。

まとめ

ここまで、競売と不動産クラウドファンディングの仕組み、利回りの計算違い、2025年度税制のポイントを解説しました。競売は高い利回りが期待できる半面、資金と手間がかかります。一方、クラウドファンディングは手軽さが魅力ですが、手数料と予定利回りの差を読み解く必要があります。両者を組み合わせ、手取りベースの利回りを見極めることで、安定したポートフォリオが築けるでしょう。まずは少額から試し、自分のリスク許容度を把握したうえでステップアップする行動をおすすめします。

参考文献・出典

  • 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
  • 国土交通省 競売不動産取引データ – https://www.mlit.go.jp
  • 金融庁 不動産特定共同事業者登録状況 – https://www.fsa.go.jp
  • 裁判所 不動産競売物件情報サイト(BIT) – https://bit.sikkou.jp
  • 総務省 e-Stat 住宅・土地統計調査 – https://www.e-stat.go.jp

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