不動産の税金

REITのメリットと任意売却を賢く使い分ける方法

不動産投資を始めたばかりの方にとって、「REITと現物投資のどちらが安全か」「任意売却はいつ役立つのか」という疑問は尽きません。実際、毎月のキャッシュフローを安定させながらも、いざというときに資金を回収できる仕組みを理解しておくことが大切です。本記事では、東証REIT指数が高値圏にある2025年10月時点の最新動向を踏まえ、REITのメリットと任意売却の活用ポイントを基礎から解説します。読み終えるころには、両者を組み合わせたリスク管理術が見えてくるでしょう。

REITとは何か、その仕組みを押さえる

REITとは何か、その仕組みを押さえるのイメージ

重要なのは、REITが不動産を小口化して証券化した商品だという点です。投資家はビルや商業施設などの実物資産を間接的に保有し、賃料収入や売却益を分配金として受け取ります。つまり、株式と同じように証券取引所で売買できる流動性を持ちながら、実物不動産の安定収益にアクセスできる仕組みです。

次に、投資法人の収益構造を見てみましょう。国土交通省の「不動産証券化データ」によると、国内REITの平均分配金利回りは2025年7月時点で4.1%です。これは長期国債利回り1%前後と比べて高水準ですが、空室率や金利上昇に左右される点も忘れてはいけません。

REITの運用コストは内部留保をほとんど持たない分配重視型です。法律上、利益の90%以上を分配することで法人税が実質免除されるため、高い分配金が実現します。一方で、大規模修繕に備える自己資金が乏しいため、追加増資が発生するリスクがあります。

最後に、東証に上場しているREITは60銘柄超に増え、物流系やホテル系といったセクターの選択肢が広がりました。個々の物件を選ぶ手間なく分散投資ができる点が、現物投資との大きな違いです。

REIT投資のメリットと注意点

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ポイントは、少額から始められる手軽さと、流動性の高さです。1口十万円前後で購入でき、株式と同様にマーケットが開いている時間なら即座に売却できます。このため、現物不動産では難しい短期的な資金需要にも対応しやすいのが魅力です。

次に、収益の安定性を考えます。実はREITは複数物件の賃料をまとめているため、単一物件のトラブルが直ちに分配金へ影響することは多くありません。2025年度の東証REIT指数ボラティリティは年率10%前後に収まり、TOPIXの15%より低い水準で推移しています。

しかし、金利上昇リスクには注意が必要です。金融庁の統計では、1%の長期金利上昇が分配金を平均3%押し下げる試算が示されています。借入比率の高い銘柄ほど影響を受けやすいため、LTV(負債比率)が50%以下の保守的な銘柄を選ぶと安心です。

さらに、流動性が高いが故に価格変動は避けられません。2020年のコロナショック時には、物流系を除き価格が一時半値になった例もあります。下落局面でも冷静に追加購入できる余力を残すことが、長期で安定リターンを得る鍵となります。

任意売却の基礎知識と利用シーン

まず押さえておきたいのは、任意売却がローン返済が困難になったとき、競売を避けるための柔軟な売却手段だという点です。債権者と合意の上で時価に近い価格で売却できるため、競売より高値が付きやすく、残債を減らしやすい特徴があります。

金融機関が任意売却に応じる条件として、「売却見込み額が残債を大きく下回らない」「借り手が誠実に交渉を行う」ことが挙げられます。東京地裁の競売統計によると、競売落札価格は評価額の約70%にとどまる一方、任意売却は85%程度を確保できた事例が多いと報告されています。

また、任意売却は債務者側の生活再建に寄与します。競売記録が残ると今後の融資審査に不利になりますが、任意売却なら個人信用情報への影響を抑えやすいのです。さらに、退去時期や引越し費用についても柔軟に協議できるため、精神的負担を軽減できます。

それでも、時間的猶予は限られています。期限の利益を喪失してから6カ月程度で競売開始決定が下るケースが一般的です。早めに専門家へ相談し、査定や債権者交渉を進めることが成功のポイントと言えるでしょう。

REITと任意売却物件の比較活用術

実は、REITでキャッシュフローを確保しつつ、任意売却物件を割安で取得する戦略が有効です。REIT分配金でローン返済の一部をまかないながら、現物物件の値上がり益を狙うことで、収益源を二本立てにできます。

任意売却物件は市場価格より10〜20%安く取得できる可能性があります。例えば、築15年の都内ファミリーマンションを3,600万円で購入し、家賃15万円を確保できれば、表面利回りは5%を超えます。REITの分配金4%と合わせると、ポートフォリオ全体の利回りを押し上げられるでしょう。

一方で、任意売却物件にはリフォーム費用や法律関係のリスクが潜みます。そこで、REITの高い流動性を利用して追加資金を捻出する選択肢を持っておくと安心です。つまり、急な修繕が必要になれば、REITの一部を売却して資金を確保し、物件価値を維持することができます。

また、税務面では2025年度税制改正により、REIT分配金に対する所得税・住民税合計20.315%の源泉徴収は据え置きです。任意売却物件の減価償却費を活用すれば、課税所得を抑えつつキャッシュフローを維持できるため、両者の組み合わせは相互補完効果が大きいと言えます。

2025年度の市場動向と実践アドバイス

まず、国内景気は緩やかな回復基調が続き、オフィス空室率は東京都心部で4%台まで改善しています。総務省の人口推計によれば、都心回帰が再加速しており、住宅系REITの賃料も底堅い状況です。一方、日銀の長期金利誘導目標は0.75%上限まで引き上げられ、金利上昇局面に入った点は要警戒です。

こうした環境下で重要なのは、固定金利でローンを組むか、LTVを抑えたREITを選ぶか、金利感応度を下げる対策です。さらに、任意売却物件を検討する場合は、駅徒歩10分圏内や管理組合の修繕積立金が潤沢な物件を選ぶと、出口戦略が取りやすくなります。

また、政府の「2025年度住宅省エネ支援事業」は、中古住宅の断熱改修にも補助金を出しています。任意売却で取得した築古物件を断熱強化すれば、補助金と家賃プレミアムの両方を狙えるため、収益改善の好機となるでしょう。

結論として、REITで市場全体の恩恵を受けつつ、任意売却物件で個別の割安チャンスを拾う二段構えは、金利上昇と人口集中が並行する2025年の市場に適した戦略です。情報収集と資金計画を並行させ、機動的に動ける体制を整えておきましょう。

まとめ

REITは少額・高流動性で不動産収益を得られる手段であり、分配金4%前後の安定利回りが魅力です。一方、任意売却はローン返済困難時の出口策であると同時に、投資家が割安物件を取得できる入り口にもなります。両者を組み合わせれば、キャッシュフローと資産拡大のバランスを取った運用が可能です。まずは資金計画を見える化し、信頼できる仲介会社や弁護士と連携して、市場の波に柔軟に対応できるポートフォリオを構築してください。行動を早めるほど、選択肢は広がります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産証券化研究会 – https://www.mlit.go.jp
  • 金融庁 金融モニタリングレポート2025 – https://www.fsa.go.jp
  • 東証REIT指数データ – https://www.jpx.co.jp
  • 総務省 人口推計(2025年8月確定値) – https://www.stat.go.jp
  • 東京地方裁判所 競売統計資料 – https://www.courts.go.jp

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