不動産の税金

不動産投資の始め方 相続対策ガイド

不動産投資に興味はあるものの「大きな借金を抱えそうで不安」「相続税対策になると聞くけれど難しそう」と感じていませんか。実は、ポイントを押さえれば初心者でも堅実に資産を築きつつ将来の相続リスクを軽減できます。本記事では資金計画から物件選び、2025年度の最新税制までをまとめ、投資の始め方と相続対策の両面をわかりやすく解説します。読み終える頃には、具体的な第一歩を踏み出すイメージが描けるはずです。

無理なく始めるための資金計画の基本

無理なく始めるための資金計画の基本のイメージ

重要なのは、自己資金と融資のバランスを最初に明確にすることです。総務省家計調査によると、持ち家世帯の平均貯蓄は約1,900万円ですが、不動産投資の自己資金としては物件価格の20〜30%を目安にすると返済負担が抑えられます。また、仲介手数料や登記費用など諸費用は物件価格の7〜10%かかるため、予備資金も忘れずに計上しましょう。

次に、融資条件を比較検討します。日本政策金融公庫の調査では、投資用ローンの平均金利は2.1%前後ですが、地域金融機関の中には1%台を提示するケースもあります。金利が0.5%違うだけで、3,000万円を25年返済すると総返済額は約200万円変わります。つまり、複数行を回って交渉する労力は長期的に大きなリターンを生むわけです。

さらに、空室率や修繕費を含む収支シミュレーションを必ず作成しましょう。国土交通省の住宅市場動向調査では、全国平均の空室率は12%程度ですが、築20年以上のアパートでは20%を超える例も珍しくありません。空室率20%、金利上昇1.5%という厳しいシナリオでも毎月のキャッシュフローが黒字になる計画を立てると、急な市場変動にも耐えやすくなります。

相続対策として不動産を活用する理由

相続対策として不動産を活用する理由のイメージ

まず押さえておきたいのは、土地や建物は相続税評価額が時価より低くなる傾向にある点です。国税庁の路線価は実勢価格の70〜80%を目安に設定されるため、現金よりも評価額が圧縮され、課税対象が減少します。また、賃貸物件にすると貸家建付地評価が適用され、土地は20%前後、建物は30%前後の更なる減額が可能です。

一方で、相続人間のトラブル回避も大きなメリットになります。現金は分割しやすい半面、遺産分割協議で意見が割れることが多く、解決まで長期化しがちです。不動産を法人化して共有持分を整理しておけば、持分移転や売却益の配分を明確にでき、揉め事を減らせます。

加えて、2025年度も存続する「相続時精算課税制度」を活用すると、60歳以上の親から18歳以上の子へ2,500万円まで贈与税を非課税で移転できます。この枠を利用して自己資金を贈与し、子名義で投資物件を取得するケースも増えています。ただし、相続時に合算課税されるため、資産総額と将来の評価額をシミュレーションし、税理士へ相談することが必須です。

物件選びと購入手続きのステップ

ポイントは、長期安定収益につながるエリアと物件タイプを見極めることです。国土交通省「土地総合情報システム」によると、首都圏では駅徒歩10分圏内の中古マンションが年平均2.8%の賃料上昇を維持しています。一方、地方都市でも大学や病院周辺は単身需要が底堅く、利回り8%超の物件が見つかる場合もあります。

物件視察では、昼夜の雰囲気や周辺施設の動線を必ず確認しましょう。昼間は静かな住宅街でも、夜は騒音がひどいケースがあるからです。実際に筆者が購入した大阪市内のマンションでは、夜間の交通騒音を事前に把握できたことで家賃を1,000円抑えても空室期間が半減しました。

購入手続きは、①買付証明書提出 ②重要事項説明 ③売買契約 ④決済・引渡しの順に進みます。ここで注意したいのが、融資承認前に違約金が発生する手付解除期日を迎えないよう日程を調整する点です。また、仲介会社から紹介される火災保険は保険料が高い場合があるため、ネット系保険との比較も欠かせません。

法律と税制の最新ポイント(2025年度版)

実は、2024年の税制改正で話題になった「暦年贈与の持ち戻し期間延長」は、2025年度も引き続き3年から7年へ拡大されています。これにより、亡くなる直前の駆け込み贈与だけでなく7年前までの贈与が相続財産に含まれるため、計画的な早期贈与がさらに重要になりました。

また、2025年度の登録免許税の軽減措置は、住宅取得資金贈与の非課税特例と同様に2026年3月31日まで延長されています。具体的には、自己居住用の住宅を取得する際の所有権移転登記にかかる税率が0.3%から0.15%へ半減されるため、親子間売買や夫婦間贈与で活用するケースが増えています。

さらに、民法改正により「配偶者居住権」が制度化され、配偶者が亡くなるまで無償で住み続けられる権利を設定できるようになりました。この権利は相続税評価額が大幅に低く算定されるため、残された配偶者の生活を守りつつ課税額を抑える有効な手段です。ただし、設定時には公正証書遺言や家庭裁判所の関与が必要となる場合があるため、専門家のサポートを受けましょう。

長期保有中に行うべき管理とフォローアップ

まず押さえておきたいのは、物件管理を外注するか自主管理するかで収支が大きく変わる点です。不動産経営支援機構の調査では、管理委託料は家賃の5%前後が平均ですが、空室リスク低減や家賃滞納保証まで含むプランを選ぶと手取りが安定します。一方で、自主管理なら手数料を節約できますが、トラブル対応やクレーム処理に時間を取られる覚悟が必要です。

定期点検も欠かせません。築10年目の大規模修繕を怠ると、賃料下落率は年1.5ポイント高まるとのデータがあります。国交省の長期修繕計画ガイドラインでは、外壁塗装や給排水管交換などを15年周期で計画するよう推奨しています。修繕積立金を月1万円積み立てるだけで、将来の突発的な出費を抑えやすくなります。

相続発生後のフォローも事前に決めておくと安心です。法人を設立して物件を管理会社へ売却する「オーナーチェンジ方式」を想定しておくと、相続人の現金化ニーズに柔軟に対応できます。また、遺言書に感情面のメッセージを添える「付言事項」を加えると、遺族間のコミュニケーションが円滑になる効果が期待できます。

まとめ

ここまで、不動産投資の始め方と相続対策を同時に進める具体的な手順を解説しました。自己資金と融資のバランス、評価額を下げる税制の活用、エリア選定と管理体制など、どれか一つでも欠けると計画が崩れやすくなります。まずは収支シミュレーションを作り、信頼できる専門家に相談しながら小さく始めることが成功への近道です。今日の一歩が、将来の家族と自分の安心につながります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp
  • 国税庁 相続税統計 – https://www.nta.go.jp
  • 総務省 家計調査年報 – https://www.stat.go.jp
  • 日本政策金融公庫 2024年度中小企業動向調査 – https://www.jfc.go.jp
  • 不動産経営支援機構 「賃貸住宅市場レポート2025」 – https://www.reio.or.jp

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