不動産投資を始めたいけれど、地価の高騰で都心の物件には手が届かない——そんな悩みを抱える方は少なくありません。実は、東京都心から電車で20分前後の府中市には、家賃需要が安定しながら価格がまだ割安な「収益物件」が豊富にあります。さらに、裁判所が行う「競売物件」を活用すれば、一般流通より低い価格で仕入れるチャンスが広がります。本記事では府中の市場環境、競売の仕組みとリスク、探し方、運営術、そして2025年度に活用できる制度までを網羅的に解説します。読み終わるころには、自分に合った投資戦略が具体的に描けるはずです。
府中が収益物件の穴場といえる理由

まず押さえておきたいのは、府中市が持つ「安定収益」の土台です。2025年版東京都統計年鑑によると、府中市の人口は26万人強で過去10年ほぼ横ばいを維持しています。JR中央線と京王線のダブルアクセスに加え、再開発で商業施設が集中し、通勤・通学に便利なエリアとして支持を集めています。
ファミリー層だけでなく、東京外国語大学や警察学校の学生・研修生も多く、ワンルームからファミリータイプまで幅広い賃貸ニーズがあります。都心に比べれば家賃は控えめですが、購入価格とのバランスを考えると利回りが高く出やすい点が魅力です。東京都住宅政策本部の家賃相場データでは、2025年の府中市ワンルーム平均賃料は7.3万円で、渋谷区の約6割にとどまります。
一方、地価は2020年以降ゆるやかな上昇を続けるものの、同線沿線の吉祥寺や立川に比べると依然割安です。国交省地価LOOKレポートでは、2025年第2四半期時点の商業地指数が吉祥寺を100とすると府中は75となっています。つまり、今後もキャピタルゲイン(値上がり益)とインカムゲイン(賃料収入)の両方を狙える「伸びしろ」が残されています。
競売物件とは?仕組みとメリットを整理

重要なのは、競売物件の基本構造を理解することです。競売とは、ローン返済が滞った不動産を裁判所が差し押さえ、入札形式で売却する手続きです。買受希望者は「BIT(不動産競売物件情報サイト)」に掲載された3点セット(物件明細・評価書・現況調査報告書)を閲覧し、期間入札で競います。
競売最大の利点は、相場の7〜8割程度で落札できる可能性がある点です。最高裁判所司法統計によれば、2024年度全国平均の落札価格は売却基準価額の108%でしたが、基準価額自体が市場価格より20%前後低く設定されるため、実勢比で約15%割安という計算になります。自己資金を抑えれば利回りが上がり、融資審査も通りやすくなります。
ただし、室内に立ち入って確認できないまま入札するケースが多く、瑕疵(欠陥)のリスクはつきものです。占有者が退去に応じない場合、引渡命令や強制執行に追加費用と時間がかかります。買い手責任が大きい手続きだからこそ、情報収集とリスクヘッジが欠かせません。
府中で競売物件を探す手順と注意点
実は、府中エリアの競売市場は物件数がそれほど多くありません。そのため「準備の質」が成否を分けます。BITで検索するときは、府中市・三鷹支部管轄の東京地方裁判所立川支部を中心にチェックし、過去の落札データも蓄積しましょう。
最初の段階では、外観写真と評価書から「築年数」「延べ床面積」「路線価」を確認し、概算利回りを計算します。仮に1,800万円の落札想定価格で年間家賃収入が180万円なら、表面利回りは10%です。税金や修繕を差し引き、手取り6%を確保できるかが目安になります。
入札書の郵送期限は公告から約4週間しかありません。書類不備は即無効となるため、物件調査、金融機関への事前相談、登記簿・賃貸借契約のチェックを速やかに行う必要があります。また、占有者の有無を確認し、必要なら退去交渉をプロの司法書士や弁護士に依頼するコストを見積もることが大切です。
さらに、府中市は準防火地域が多く、木造収益物件の増改築には延焼の恐れを考慮した追加工事が求められる場合があります。建築指導課で事前相談し、リノベーション費用が跳ね上がらないよう計画しましょう。
利回りを高める運営戦略と出口戦略
ポイントは、落札後のバリューアップによって純粋利回りを底上げすることです。内装リノベーションでは、単なるクロス張替えより、防音フローリングや宅配ボックスなど「比較的安価で付加価値が高い設備」を優先すると投資効率が良くなります。家賃1万円アップを実現できれば、年間12万円の増収で物件価値も上昇します。
運営面では、賃貸管理会社の選定が欠かせません。家賃保証(サブリース)は空室リスクを転嫁できますが、手取りが減る点に注意が必要です。一方で集金代行方式なら家賃収入が直に入るため、資金繰りが読みやすくなります。どちらの方式でも管理委託料は3〜5%が相場なので、見積もりを比較し交渉する姿勢が求められます。
出口戦略として、物件を5年以上保有して譲渡すると長期譲渡所得となり、税率が約20%に低減します。2025年度税制改正でもこの区分に変更はなく、短期(5年以下)の約39%との差は大きいままです。賃貸経営で利益を積み上げながら、地価や金利動向を見て売却タイミングを計ると、トータルリターンを最大化できます。
2025年度に活用できる税制・融資制度
まず押さえておきたいのは、投資用物件でも受けられる「不動産取得税の軽減措置」です。2025年度も土地取得分の課税標準を評価額の2分の1に減額する特例が継続しており、さらなる延長が予定されています。また、耐震基準適合証明を取得した住宅は登録免許税の税率が0.3%から0.1%に下がります。
金融面では、日本政策金融公庫の「生活衛生・観光等利活用資金」が、空き家を活用した賃貸経営目的にも使えるようになりました(2025年4月改訂)。金利は変動で年1.0〜1.8%と民間より低く、自己資金10%でも審査対象になります。府中市内の空き家対策担当窓口に相談すると、物件紹介やリフォーム補助の情報が得られる場合があります。
税務上、木造アパートは法定耐用年数22年を超えると4年で減価償却できます。築古競売物件を購入して短期に費用計上し、所得税を圧縮する手法は2025年も健在です。ただし過度な節税狙いは金融機関の評価を下げる恐れがあるため、長期保有と収益性を重視する姿勢を示すことが重要です。
まとめ
府中市は人口と賃貸需要が安定し、都心より手頃な価格で収益物件を購入できる注目エリアです。競売を使えばさらに仕入れコストを抑えられ、利回りを高める余地が大きくなります。ただし、瑕疵や占有者リスク、入札期限の短さといった競売特有のポイントを理解し、事前調査と専門家の活用を徹底することが成功への近道です。実地調査・資金計画・出口戦略を三位一体で組み立て、2025年度の税制や公的融資を上手に活用すれば、初心者でも堅実な不動産投資を実現できます。
参考文献・出典
- 東京都総務局統計部 – https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp
- 国土交通省 地価LOOKレポート – https://www.mlit.go.jp
- 最高裁判所 司法統計年報 – https://www.courts.go.jp
- 東京都住宅政策本部 賃料相場データ – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp
- 日本政策金融公庫 資金案内ページ – https://www.jfc.go.jp