不動産投資の入り口として人気が高いREIT(不動産投資信託)ですが、「1000万円を一括投入して本当に大丈夫だろうか」と迷う人は少なくありません。価格変動や分配金の先行きが気になり、始める一歩が踏み出せない声を多く聞きます。この記事では、1000万円というまとまった資金をREITに投じる際のメリットと並び、あまり語られないデメリットを中心に解説します。さらに2025年度の税制や公的制度を踏まえたリスク管理術も紹介しますので、最後まで読めば資金を守りながら運用を進める具体的なイメージがつかめるはずです。
1000万円で始めるREIT投資の基本

まず押さえておきたいのは、REITが株式市場で売買される金融商品であるという点です。投資家は少額から分散投資ができ、実物不動産よりも流動性が高いという特徴に惹かれます。一方で、基準価格は日々変動し、分配金も業績によって上下するため、預金のような元本保証はありません。
実際、日本取引所グループの2025年4月データによれば、東証REIT指数は過去10年間で年平均リターン5.1%を示しています。ただし同期間にリーマンショック級の急落は無かったものの、コロナ禍では一時30%近い下落を経験しました。つまり価格変動リスクを軽減するには、投資時期を分散する「時間分散」や、複数銘柄を組み合わせる「銘柄分散」が不可欠です。
さらに、1000万円を一括で投じる場合でも、NISA(少額投資非課税制度)の利用枠を考慮すれば税負担を抑えられます。2025年度の新NISAは年間360万円、総枠1800万円まで非課税なので、数年に分けて枠内で積み立てる方法も検討できます。資金を寝かせずに運用しつつ、税制優遇を最大限活用する視点が重要です。
知っておきたい主要デメリット

ポイントは、REIT固有のリスクを具体的に把握しておくことです。見落とされがちなのは流動性の高さが逆に変動幅を大きくする点で、実物不動産と同じ感覚で構えると痛手を負いかねません。
第一に、金利上昇リスクがあります。REITは物件取得のために多額の借入を行う仕組みなので、長期金利が上がると支払利息が増え、分配金が減少する可能性が高まります。日本銀行は2024年3月にマイナス金利を解除しており、金融庁のレポートでは2026年までに0.5%程度の追加利上げシナリオも示されています。この点は1000万円 REIT デメリットの中でも特に影響が大きいといえます。
次に、不動産市況悪化リスクです。国内オフィス需要は東京圏で堅調といわれる一方、国土交通省「不動産価格指数」では地方主要都市の商業地が2023年から横ばいに転じています。保有物件の含み損が膨らむと、資産売却を余儀なくされ、結果的に分配原資が減る構図です。投資家は利回りばかりでなく、物件所在地や用途に目を向ける必要があります。
最後に、レバレッジ型ETFとの混同リスクがあります。似たティッカーで高利回りをうたう商品も増えていますが、値動きのメカニズムが異なるため、意図せずハイリスク商品を買ってしまうケースがあります。証券口座の発注画面では、商品概要を必ず確認し、信託報酬やレバレッジ倍率をチェックしましょう。
1000万円を守るリスク管理の考え方
実は、デメリットを正面から受け止めれば、対策もシンプルになります。重要なのは、資金配分と出口戦略を同時に設計することです。具体的には「資産三分法」に近い考え方が役立ちます。
第一の柱として、運用資金の3割を流動性の高い国内REITで運用し、残りを円建て債券や現金で保有すると、価格急落時に買い増し余力が生まれます。日本証券業協会の試算では、2008年の急落局面で現金余力を30%確保していた投資家は、下落後に平均単価を20%以上引き下げられたと報告されています。
第二の柱は、ドル建て資産でのヘッジです。円安が進めば海外REITや米国トレジャリーボンドの評価額が上がり、国内REITの値下がりを相殺する効果が期待できます。為替リスクを許容できる割合を5〜10%にとどめることで、ポートフォリオ全体のブレを緩和できます。
最後に、出口戦略として分配金利回りが低下した銘柄を定期的に組み替える「ローテーション」を取り入れます。東証REIT指数構成銘柄の平均利回りは2025年8月時点で3.6%ですが、2.5%を下回った場合は成長性より安定性を重視した銘柄に乗り換える基準を設けると、長期収益の安定に寄与します。
2025年度の制度と税制を踏まえた対策
まず、2025年度の税制改正で変わる点を知ることがリスク管理の第一歩です。金融庁は「投資法人課税の見直し」を当面見送ると公表しており、REITの内部留保に対する課税強化は行われません。このため、分配金の8割超を支払う限り実質課税ゼロという仕組みは維持されます。
一方で、個人投資家に影響するのは「金融所得課税の一体化」案です。2025年度は現行の20.315%が据え置かれましたが、2027年度以降の引き上げ議論が残ります。したがって、NISA口座での非課税メリットを最大化するため、一般NISA枠と併用して早めに資産を移すことが重要です。特に新NISA成長投資枠は売却後に枠が復活しないため、分配金再投資よりも長期保有に向いています。
また、国土交通省が推進する「不動産ファンドESG評価制度」は2025年4月に本格稼働しました。環境配慮型REITにはグリーンローンの適用金利が0.1%程度優遇される例が増えています。低コストで資金調達できるREITは分配金余力が厚くなるため、ポートフォリオに含めると金利上昇局面でも相対的に有利です。
長期運用で差がつくポートフォリオ構築
重要なのは、1000万円を「いつ」「どこに」投じるかという時間と構成のバランスです。長期視点では、人口動態や都市開発計画を反映したセクター分散が欠かせません。具体例として、物流施設REITはEC市場拡大を背景に稼働率98%超を維持し、分配金の変動幅が小さいことが知られています。
一方、ホテル特化型REITはインバウンド需要に左右されますが、観光庁の2025年6月推計では訪日客数が4000万人を突破見込みです。こうしたセクター混在型のポートフォリオを組むことで、景気変動の波を受けにくくできます。加えて、上場インフラファンドを5%ほど組み込むと、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)による安定収益を取り込めます。
最後に、リバランスの頻度を決めることが長期運用を安定させます。四半期ごとに評価額をチェックし、各セクターの比率が目標から±5%を超えたら調整するとルール化すれば、感情に流されず機械的に売買できます。これにより、1000万円規模でもプロ並みのリスクコントロールが実現できます。
まとめ
ここまで、1000万円をREITに投じる際に見落としがちなデメリットと、その対策を具体的に解説しました。価格変動、金利上昇、不動産市況の悪化といったリスクは避けられませんが、時間分散と銘柄分散、そして税制優遇の活用で影響を最小化できます。まずは投資比率と出口戦略を明確に定め、定期的なリバランスで状況をチェックしましょう。行動を先延ばしにせず、今日から情報収集とシミュレーションを始めれば、1000万円という大切な資金を守りながら資産形成を加速できます。
参考文献・出典
- 日本取引所グループ(JPX) – https://www.jpx.co.jp
- 金融庁「金融レポート2024-2025」 – https://www.fsa.go.jp
- 国土交通省「不動産価格指数」 – https://www.mlit.go.jp
- 観光庁「訪日外国人統計2025年6月推計」 – https://www.mlit.go.jp/kankocho
- 日本証券業協会「個人投資家調査レポート2024」 – https://www.jsda.or.jp