不動産投資に興味はあるものの、「何から手を付ければいいのか分からない」「立地はどう選ぶべきか」と迷う人は多いでしょう。アパートは区分マンションより規模が大きく、空室リスクの重みも違います。しかし適切な手順で準備し、データを基に立地を見極めれば、長期的に安定したキャッシュフローを得ることは十分可能です。本記事では、アパート経営 始め方 立地選定の要点を体系的に整理し、初心者がつまずきやすい資金計画から物件選び、運営戦略までを丁寧に解説します。読み終えた時には、自分に合ったスタートラインが見え、最初の一歩を自信を持って踏み出せるはずです。
アパート経営を始める前に押さえたい全体像

まず押さえておきたいのは、アパート経営が「事業」であるという認識です。家賃収入は給与所得と違い、入居者募集や修繕計画など自ら判断すべき事項が多岐にわたります。一方で、他人資本でレバレッジを効かせられる点が大きな魅力です。国土交通省の2025年住宅統計によれば、全国アパート空室率は21.2%と高止まりする一方、都心の駅近5分圏は12%前後にとどまります。つまり立地を絞れば需要は依然旺盛であり、物件力と運営力を掛け合わせることで高い稼働率を維持できます。
実際の事業フローは、資金計画→物件探索→融資打診→売買契約→運営開始という順になります。各段階で必要書類や交渉相手が変わるため、全体像を先に把握すると迷いが減ります。また2025年度税制では、青色申告特別控除65万円など不動産所得に活用できる一般制度が継続中です。こうした節税効果を前提にCF(キャッシュフロー)を組むことで、安定経営の道筋を描けます。
初期資金と融資の基本

重要なのは、自己資金と融資のバランスです。金融機関は2025年現在、個人オーナー向け投資用アパートへの融資を物件価格の70〜80%に抑える傾向があります。つまり価格1億円の物件なら、諸費用込みで2500万〜3000万円程度の自己資金が必要になる計算です。ここで自己資金を厚めに用意すると返済比率が下がり、融資審査が通りやすくなるだけでなく、金利優遇を引き出せる場合があります。
また日本銀行「貸出約定平均金利」(2025年4月速報)では、投資用不動産ローンの平均は年1.85%です。しかし都市銀行と地方銀行では0.3%前後の差があるため、必ず複数行を比較しましょう。返済期間は物件の耐用年数が目安になりますが、木造アパートであっても長期保有が前提なら25年以上取れるケースもあります。金利タイプは変動と固定に大別されますが、固定期間選択型を組み合わせると金利上昇のリスクと月々の返済額の両面でバランスが取りやすくなります。
最後に、自己資金は「購入資金」と「運営予備費」に分けて管理してください。購入後すぐに給湯器交換など突発的な修繕が発生することも珍しくありません。購入総額の5%程度を予備費として別口座に置けば、キャッシュフローが急に赤字化する事態を回避できます。
立地選定で見るべき五つの視点
ポイントは、人口動態・交通利便性・賃料相場・生活インフラ・将来計画の五つを体系的に確認することです。まず人口動態は、総務省「住民基本台帳人口移動報告」で20〜40代の転入超過が続くエリアかを調べます。次に交通利便性として、駅徒歩10分圏かつ複数路線が利用可能であれば、空室リスクが大きく下がります。
賃料相場は不動産情報サイトだけでなく、レインズマーケットインフォメーションで成約事例を確認すると現実的なラインが分かります。ここで表面利回りに惑わされず、想定賃料が周辺水準と乖離していないかを必ず検証してください。生活インフラはスーパーや総合病院までの距離に加え、近年はコインランドリーや宅配ロッカーの有無が若年層のニーズに影響します。
最後に都市計画図を閲覧し、再開発や道路計画を確認します。例えば東京都の「都市整備局都市計画情報」によれば、主要駅前での再開発が決定している地区では、完成前から賃料が上向く事例が報告されています。逆に区画整理で一時的に騒音が増えるエリアもあるため、完了時期と賃料下落リスクの両面を見る視点が欠かせません。
物件選びのチェックポイント
まず押さえておきたいのは、構造・築年数・間取りの三要素です。木造は軽量鉄骨と比べて維持費がかかりやすい一方で、建築費が抑えられ利回りが高くなる傾向があります。築年数は法定耐用年数を過ぎていても、適切に改修されていれば金融機関が評価する場合があるため、修繕履歴の有無を詳しく確認しましょう。
間取りは1Rか1Kで悩む人が多いのですが、2025年の賃貸市場では、専有面積20㎡以上・バストイレ別が単身向けの成約条件になりつつあります。またテレワーク需要の定着で、室内にデスクを置ける7帖以上の広さがあると競争力が増します。
設備面ではインターネット無料やスマートロックが標準化しつつあり、導入費用は10戸規模で初期30万円程度に下がっています。家賃を月1000円上げても6年程度で回収できる計算なので、購入時に同時導入を検討しましょう。
運営開始後の安定経営戦略
実は運営フェーズこそ、オーナーの腕前が問われます。入居者募集は管理会社に任せきりにせず、広告料(AD)の設定や写真のクオリティを毎シーズン見直すと、募集期間を短縮できます。国土交通省の調査では、ADを家賃1カ月から1.5カ月に増やすと平均募集期間が22日短縮するというデータがあります。
修繕計画は長期視点で組みます。外壁塗装や屋根防水は12〜15年周期、給排水管の交換は30年前後が目安です。毎年の家賃収入の5〜7%を修繕積立として別管理すると、急な工事でもキャッシュフローが悪化しにくくなります。また固定資産税評価の更新年度には税理士と相談し、減価償却費との兼ね合いを調整すると手取りが安定します。
さらに、入居者満足を高めることで長期入居に結び付きます。定期清掃を週1回から週2回に増やすだけで、クレーム数が30%減少したケースも報告されています。満室経営の鍵は最終的に「入居者満足度が広告になる」という循環を作り出すことに尽きます。
まとめ
アパート経営は、始め方を体系立てて理解し、立地選定をデータで裏付けることで成功確率が大きく向上します。資金計画では自己資金と融資条件を丁寧に整え、五つの視点で立地を見極めたうえで、構造や設備に優位性のある物件を選ぶことが重要です。運営段階では、修繕積立と入居者満足を両輪に、安定したキャッシュフローを育てていきましょう。この記事を手引きに、まずは気になるエリアの人口動態と賃料相場を確認し、一歩目の行動につなげてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 2025年度版 – https://www.soumu.go.jp
- 日本銀行 貸出約定平均金利等 2025年4月 – https://www.boj.or.jp
- 東京都都市整備局 都市計画情報 2025年9月閲覧 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- レインズマーケットインフォメーション 2025年上半期版 – https://www.reins.or.jp