不動産投資で数億円規模の資金をどう動かすかは、多くの投資家が抱える共通の悩みです。現物物件を買えば管理や流動性の課題が重くのしかかりますが、かと言って銀行預金に眠らせるのは機会損失が大きすぎます。そこで注目されるのが上場不動産投資信託(REIT)です。本記事では「REIT 比較 2億円」という視点で、初心者にも分かりやすく商品特性と活用法を整理します。読了後には、自身の目標利回りやリスク許容度に応じた投資判断ができるようになるはずです。
なぜ2億円規模でREITを比較するのか

まず押さえておきたいのは、投資規模によって選択肢が大きく変わるという事実です。数百万円ならば1銘柄でも許容できますが、2億円ともなると資産配分を誤れば価格変動の影響が大きくなります。つまり多数の物件に分散投資しているREITをさらに組み合わせることが、安定収益を狙う近道になります。東京証券取引所のデータによると、2025年10月時点で上場REITの平均分配利回りは年4%台前半で推移しています。加えて、売買単位が数十万円からと小口なので、複数銘柄を機動的に組み込める点が2億円規模の運用に適しているのです。
一方でREITは株式市場に連動して値動きしやすい特徴も持っています。だからこそ、銘柄ごとの資産タイプや地域分散を見極めて保有比率を調整する必要があります。特にオフィス主体型と物流施設主体型ではテナント契約期間や賃料改定のタイミングが違い、景気循環への感度が変わります。2億円を一括で投じるのではなく、時間と銘柄をずらして購入することで平均取得単価を平準化する手法も有効です。この戦略を理解するために、次章で具体的なシミュレーションを行います。
上場REITの基本と2億円運用シミュレーション

重要なのは、REITが賃料収入を源泉とするインカムゲインと、価格上昇によるキャピタルゲインの両方を狙える点です。まず想定利回りを年4%、手数料や税引き前で単純計算すると、2億円を上場REITに均等配分した場合、年間800万円の分配金が見込めます。実際には売買手数料や信託報酬が差し引かれるため、手取り利回りは3.5%前後に落ち着くケースが多いと覚えておきましょう。
また、日銀の統計では上場REIT指数の年率ボラティリティはおおむね15%前後です。つまり価格が短期的に2〜3割動くことも珍しくありません。そこでポートフォリオを考える際には、オフィス型30%、住宅型25%、物流型25%、商業施設型20%といった分散モデルがよく用いられます。この配分なら業種特有のリスクを抑えつつ、安定賃料を確保できます。
さらに、株式との相関係数が0.6前後にとどまる点も魅力です。資産全体が株式中心の場合、REITを加えることでポートフォリオ全体の値動きを緩和できます。投資家によってはインデックス連動ETFを併用し、市場平均を上回ることよりもリスク軽減を優先する手法を取るケースが増えています。
私募REITとクラウドファンディング型の選択肢
実は、2億円の資金を持つ投資家は上場REITだけでなく、私募REITや不動産クラウドファンディングにもアクセスできます。私募REITは非上場で、機関投資家向けに設計された商品ですが、最近は最低出資額が1000万円程度の枠を設ける運用会社も出てきました。上場REITと比べて価格変動が小さい半面、換金性が劣る点が注意点です。
不動産クラウドファンディングは、オンライン上で小規模物件を組み合わせたファンドへの出資を募る仕組みです。総務省の資料によると、市場規模は2021年度比で年率20%超の成長を続けています。年利5〜7%をうたう案件も見かけますが、元本保証はありません。償還までの期間が1〜3年と短い案件が多いので、上場REITで長期保有しながら、余裕資金でクラウドファンディング案件を回して利回りを上乗せする方法が考えられます。
とはいえ、案件数が限られるため2億円を丸ごと投入するのは現実的ではありません。上場REIT70%、私募REIT20%、クラウドファンディング10%といったバランスが一例です。こうした配分は、換金時期や税負担も踏まえて随時見直すことが成功の鍵となります。
税制と2025年度の優遇措置
ポイントは、分配金にかかる税金と、上場株式等と同じ取り扱いになる点です。分配金は20.315%の源泉徴収が行われ、確定申告で上場株式の配当と損益通算が可能です。2億円規模の投資では、年間数百万円単位で税負担が発生するため、この通算メリットを活用しない手はありません。
2025年度の税制では、NISA拡充後の一般成長投資枠が年間240万円に拡大されており、REIT ETFも対象です。ただし、2億円全額を非課税に移すのは不可能なので、NISA枠には高配当ETFを優先的に組み込み、残りは課税口座で保有する方法が合理的です。また、法人を設立してREITを保有する場合、分配金は益金として計上される一方、借入金利息を損金算入できるため、効果的な節税が期待できます。
一方、不動産取得税や固定資産税の軽減措置は現物不動産に限られるため、REIT投資には直接適用されません。この点は実物投資との大きな違いであり、比較検討の際は見落としがちなポイントです。
リスク管理とポートフォリオ構築の考え方
まずリスク管理の基本は、保有比率と購入タイミングを分けることです。上場REIT指数の月次リターンを分析すると、配当落ち直後や金利上昇局面で下落しやすい傾向が見られます。そこで、毎月一定額を買い付けるドルコスト平均法を活用し、価格変動リスクを抑える手法が有効です。
また、借入を併用するレバレッジ型ETFは利回りを高める手段として魅力的に映りますが、金利上昇局面で元本が急減するケースがあります。日本銀行は2025年7月に長期金利の変動幅を0.75%まで拡大しました。今後も金利上昇リスクが続くと想定し、レバレッジ比率は総資産の2割を超えないよう制限する姿勢が求められます。
最後に、災害リスクと行政規制にも目を向けてください。国土交通省の公表資料では、沿岸部の物流施設が津波や高潮のハザードマップに重なる割合が上昇しています。物件の立地リスクはREITの決算説明資料に記載されていますので、投資判断前に必ず確認しましょう。結果として、分散と情報チェックを怠らない姿勢が長期的な成果を左右します。
まとめ
本記事では「REIT 比較 2億円」の視点から、上場REITを中心に私募REITやクラウドファンディングを組み合わせる方法まで解説しました。2億円という大きな資金を効率的に運用するには、分配利回りだけでなく、価格変動・換金性・税制・災害リスクを総合的に比較することが不可欠です。結論として、上場REITを軸にしつつ、私募やクラウド型を適度に加えることで、安定と成長のバランスを取る戦略が最も現実的でしょう。ぜひ今日からポートフォリオを見直し、具体的な銘柄選定と購入タイミングの計画を立ててみてください。
参考文献・出典
- 東京証券取引所 – https://www.jpx.co.jp
- 国土交通省 不動産投資市場調査 – https://www.mlit.go.jp
- 日本銀行 金融データ検索サイト – https://www.boj.or.jp
- 総務省 クラウドファンディング市場動向 – https://www.soumu.go.jp
- 財務省 税制改正大綱2025 – https://www.mof.go.jp