不動産投資に興味はあるものの、現物物件に数千万円を投じるのは怖い──そんな悩みを抱える方は多いでしょう。そこで候補に挙がるのが、証券口座さえあれば数万円から買えるREIT(不動産投資信託)です。しかし、まとまった余裕資金として「300万円」をどう配分し、何に注意すべきかは意外と語られていません。本記事では、300万円 REIT デメリットという切り口で、初心者が見落としがちな弱点と対策を深掘りします。読み終えた頃には、資金を守りつつREITを活用する具体的な行動プランが描けるはずです。
300万円からREITを始める現実

まず押さえておきたいのは、300万円という金額がREIT投資においてどの程度のインパクトを持つかです。東京証券取引所のデータでは、2025年9月末時点のJ-REIT平均価格は1口あたり約16万円、平均利回りは3.8%でした。単純計算で300万円なら18〜19口を購入でき、年間配当はおよそ11万円前後が期待できます。
しかし、投資資金をすべてREITに振り向けると、市場変動の影響を受けやすくなります。例えば2022年の金利上昇局面では、J-REIT指数が半年で14%下落し、配当収入で相殺しきれない含み損が生じました。つまり、少額と言えども資金配分とリスク管理は不可欠です。
一方で、現物不動産と比べると流動性の高さは大きな魅力です。売却の都度、仲介手数料や印紙税が発生する物件投資と異なり、REITは証券会社の売買手数料のみで現金化できます。この柔軟性が、300万円の運用に向いている理由でもあります。
REIT投資の典型的なデメリット

重要なのは、リターンの裏側に潜むデメリットを正しく把握することです。第一に、価格変動リスクが想像以上に大きい点が挙げられます。REITは不動産の賃料収入を源泉としつつも、株式市場で取引されるため、金利・為替・景気指標と連動して価格が短期的に上下します。
次に、物件の中身を自分で選べないという制約があります。ポートフォリオの組成は運用会社に委ねられており、テナント構成や立地を細かく自分でコントロールできません。言い換えると、運用会社の選定が投資成否を左右します。
さらに、レバレッジ(借入金)によるリスクも軽視できません。日本の総合型REIT平均LTV(総資産に占める借入金比率)は2025年6月で46%と、金融緩和期よりわずかに高い水準です。金利上昇が続けば分配金が減少し、価格下落と配当減のダブルパンチを受ける可能性があります。
デメリットを和らげる資金計画
ポイントは、300万円を一度に投じない分散投資戦略です。筆者の経験では、半年から1年にわたって複数回に分けて購入することで、平均取得価格を平準化しやすくなります。例えば毎月25万円ずつ買い付ければ、金利や景気指標が変化する環境を織り込めます。
また、現金比率を3割ほど残すと、下落局面で追加投資や他資産への乗り換えが可能になります。日本証券業協会が公開する個人投資家アンケートでは、現金余力の有無が投資継続率を左右するとの結果が出ています。余力は精神的な安全装置でもあるのです。
配当再投資も長期的なリターンを底上げします。たとえば利回り3.8%で税引き後3.0%を複利運用すると、10年後にはおよそ34%の資産増が見込めます。ただし、NISA口座を活用しなければ配当課税20.315%がその都度差し引かれるため、制度利用の有無で差は顕著です。
300万円を守るリスク管理術
実は、売却ルールを事前に決めるだけでダメージを最小化できます。具体的には、取得価格から15%下落した時点で一部売却し、損失確定とポートフォリオ調整を同時に行う方法が効果的です。日本取引所グループのバックテストでも、あらかじめ損切りラインを設けた方が、長期総合リターンが高まるケースが多いと示されています。
一方で、分配金が減った場合の対応も欠かせません。運用報告書でLTVが50%を超え、かつ固定金利比率が低いREITは金利上昇に弱い傾向があります。そうした銘柄を保有する際は、分配金の2年平均成長率をチェックし、マイナスに転じた時点で入れ替えを検討しましょう。
保険的な発想として、REITと相関の低い国内債券やインフラファンドを10〜20%組み入れる方法もあります。こうすることで、景気後退局面でも資産全体の値動きを抑えやすくなります。
2025年度の税制と少額投資優遇策
まず押さえておきたいのは、2025年度も少額投資非課税制度(新NISA)が継続している点です。年間投資枠360万円のうち成長投資枠240万円では、REITも非課税対象となります。この枠を活用すれば、配当金と値上がり益の両方で税負担ゼロを実現できます。
一方で、ふるさと納税や住宅ローン控除と違い、NISAに期限付き補助金はありません。制度終了を見込んだ駆け込み需要も現状では想定されていないため、焦らず計画的に利用できます。しかし、非課税期間が恒久化されたとはいえ、ロールオーバー制度はなく、売却後の枠復活もありません。枠を使い切る前提で銘柄選びを慎重に行う必要があります。
さらに、2025年度税制改正により、投資法人が分配金控除を適用する条件が緩和され、法人税負担が減少しました。これにより、分配金の安定度は中長期的に高まる見込みです。ただし、個人側の課税は変わらないため、NISA口座外での投資では従来どおり課税される点を忘れないでください。
まとめ
本記事では、300万円 REIT デメリットというテーマで、少額資金ならではの課題と対策を整理しました。価格変動やレバレッジといった弱点はありますが、購入タイミングの分散、現金余力の確保、税制優遇の活用という三つの工夫でリスクを抑えながらリターンを狙えます。今後はご自身のライフプランと照らし合わせ、NISA枠の配分や損切りラインを具体的に設定してみてください。着実な実行こそが、300万円を将来の大きな資産へ育てる最短ルートです。
参考文献・出典
- 日本取引所グループ – https://www.jpx.co.jp
- 東京証券取引所 J-REITデータ – https://www.jpx.co.jp/markets/j-reits
- 日本銀行 金融政策決定会合資料 – https://www.boj.or.jp
- 財務省 税制改正の概要(2025年度) – https://www.mof.go.jp
- 日本証券業協会 個人投資家調査 – https://www.jsda.or.jp