不動産の税金

築古でも狙える不動産クラウドファンディングの仕組みと選び方

利回りは欲しいけれど、物件を自分で管理するのは手間がかかりそう。しかも最近は築古のアパートが安く出回っていると聞いても、空室や修繕費が心配で一歩を踏み出せない。そんな悩みを持つ初心者にとって、不動産クラウドファンディングは少額から試せて学びながら利益を狙える選択肢です。本記事では、仕組みの基本から築古案件の見極め方、さらに2025年度時点で利用できる税制優遇まで、実体験と最新データを交えて分かりやすく解説します。

不動産クラウドファンディングとは何か

不動産クラウドファンディングとは何かのイメージ

まず押さえておきたいのは、不動産クラウドファンディングがインターネット上で複数の投資家から資金を集め、運営会社が物件を取得・運営し、利益を按分して分配する仕組みだという点です。国土交通省の調査では、2024年度の市場規模は約1,200億円とされ、5年前の4倍に成長しています。

従来のJ-REITが株式市場で取引されるファンド型であるのに対し、クラウドファンディングは一つひとつの案件に直接出資する小口共同投資型です。つまり物件の特徴や運営方針を自分で選べる自由度が高く、1万円から参加できる点が強みになります。また、投資家は匿名組合契約か任意組合契約を通じて出資するため、法律上は有限責任にとどまり、元本以上の損失は負いません。

一方で、未上場であるがゆえに途中売却はできず、期間中は資金がロックされる欠点があります。さらに、運営会社の与信や物件の管理体制によって成果が大きく変わるため、単なる利回り比較だけでなく、運営実績や報告体制を確認する姿勢が求められます。

仕組みを理解するための3つの視点

仕組みを理解するための3つの視点のイメージ

ポイントは資金の流れ、利益の計算方法、投資家保護の三層構造を順に押さえることです。これを理解すると、広告に出てくる“想定利回り”の裏側が見えてきます。

第一に資金の流れです。投資家はプラットフォームで出資申込を行い、信託口座に資金を振り込みます。運営会社はこの資金で物件を取得し、賃料収入や売却益をプールします。利益が出た段階で、信託銀行が分配金を計算し、源泉徴収税20.42%を差し引いた後に投資家へ振り込みます。

第二に利益の計算方法です。賃料収入型の場合、家賃から管理費・修繕費・税金を差し引いたネット収益を分配します。売却益重視型では、運用期間終了時の売却差益を上乗せして一括分配するケースもあります。募集時に示される利回りは、これらを年率換算した「想定」である点に注意が必要です。

第三が投資家保護の仕組みです。不動産特定共同事業法では、運営会社は第二種金融商品取引業の登録が必須で、監督官庁に定期報告を行います。さらに、信託保全スキームが導入されている案件では、運営会社が倒産しても信託口座の資産は分別管理されるため、元本が保護されやすい構造になっています。

築古物件が組み込まれる理由とリスク

実は築古物件こそクラウドファンディングで多用される傾向があります。理由は取得価格が抑えられ、短期間のリノベーションで賃料アップや早期売却益を狙いやすいからです。2023年以降、築30年以上の区分マンションをリノベして運用する案件が人気となり、平均募集完了時間が2時間以内との統計もあります。

しかし、築古には固有のリスクがあります。第一に修繕費の予測が難しく、工事が長引けば運用期間が延びて利回りが下がります。第二に耐震基準です。1981年以前の旧耐震基準物件は金融機関の評価が厳しく、売却先が限定される恐れがあります。第三に空室率で、築年数が古いほど入居者の内見数が減りやすい傾向が総務省の住宅調査で確認されています。

そこで重要なのは、物件調査報告書における「長期修繕計画」と「耐震診断結果」を必ず確認することです。運営会社が事前に大規模修繕を実施し、旧耐震物件は原則除外するポリシーを掲げている場合、築古でもリスクは大幅に下がります。また、賃貸需要を裏付ける周辺人口データや競合物件の稼働率を読み解くことで、空室リスクを数値で把握できます。

投資先を選ぶときの実践チェックポイント

まず押さえておきたいのは、利回りだけでなく運営体制と情報開示レベルを重視する姿勢です。以下の4点を押さえると、初心者でも失敗確率を下げられます。

  • 運営会社の累計調達額と元本毀損件数
  • 信託保全や優先劣後出資などリスク分担構造の有無
  • 物件の立地指標(駅徒歩・空室率・将来人口)と築年数
  • 運用レポートの頻度と内容(写真・収支・工事進捗)

たとえば優先劣後構造では、運営会社が劣後出資として10〜30%を負担し、評価額が下落しても劣後部分から損失が吸収されます。これにより投資家の元本安全性が高まる仕組みです。また、運用レポートで工事前後の写真と収支差異を公開している会社は、情報開示姿勢が強く信頼度が上がります。

最後に、案件の募集ページでキャッシュフロー表を必ずダウンロードし、表面利回りとネット利回りの差を確認しましょう。管理費・修繕積立金・広告料を控除したネット利回りが4%を下回る場合、築古物件では利幅が薄く、想定外の修繕が発生すると赤字に転落するリスクが高まります。

2025年度の制度と税制優遇を押さえる

重要なのは、2025年度時点で実際に適用される法制度を理解しておくことです。まず、不動産クラウドファンディングは「不動産特定共同事業法」に基づき、オンライン取引を行う特例事業者として国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けます。2023年の改正で電子取引の本人確認が厳格化され、2025年はマイナンバーカードのeKYCで口座開設が完結します。

次に税制面です。分配金は利息等として20.42%の源泉徴収が行われ、確定申告で他の雑所得と合算できます。2025年度の税制改正では、クラウドファンディング特有の追加優遇措置は導入されていませんが、住宅ローン控除や登録免許税の軽減など既存の不動産減税と重複しない形で課税が完結するため、手続きは比較的シンプルです。

さらに、相続税評価では組合持分が「非上場株式類似」の財産区分として扱われ、現金より評価が下がるケースがあります。相続対策として築古案件に分散投資する富裕層が増えているのはこのためです。ただし評価方法は案件ごとに異なるため、税理士へ事前相談することが推奨されます。

まとめ

本記事では、不動産クラウドファンディングの基本構造から築古物件のリスクと魅力、そして2025年度制度のポイントまでを整理しました。利回りの数字だけに目を奪われず、運営会社の実績、優先劣後構造、長期修繕計画を確認することで、失敗確率は大きく下がります。まずは少額で複数案件に分散し、運用レポートを読み解く習慣をつけてみましょう。そうすれば、築古物件のキャッシュフローを味方にしながら、安定した資産形成への道が開けます。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産特定共同事業に関する調査報告書(2024年版) – https://www.mlit.go.jp/
  • 金融庁 「クラウドファンディングに係る監督指針」 – https://www.fsa.go.jp/
  • 総務省 住宅・土地統計調査(2023年速報) – https://www.stat.go.jp/
  • 日本クラウドファンディング協会 市場データ2025 – https://www.jcfa.or.jp/
  • 国税庁 タックスアンサー No.1510「雑所得の課税方法」 – https://www.nta.go.jp/

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