不動産投資を始めたいけれど、「自己資金が足りない」「空室が続くと赤字が心配」という声をよく耳にします。実際、2025年8月時点で全国のアパート空室率は21.2%と高止まりしており、収益確保の工夫は欠かせません。そこで注目したいのが、国や自治体の補助金を活用したリノベーションと、敷地内外に駐車場を設けて追加利益を生む併設経営です。本記事では、アパート経営で利用できる2025年度の主要補助金、駐車場による利益向上の実例、さらにはキャッシュフローを堅実に伸ばす具体策まで、初心者でもすぐに実践できるポイントを順序立てて解説します。
アパート経営で収益を生む仕組み

まず押さえておきたいのは、賃料収入だけがアパート経営の稼ぎではないという事実です。家賃収入は毎月の安定キャッシュフローを担いますが、礼金・更新料・自販機設置料など細かな副収入を積み上げることで利回りは大きく改善します。特に東京都や政令市の中心部では、副収入が年間家賃収入の5〜8%を占めるケースも珍しくありません。
一方で、空室が続けば収入は直ちに目減りします。国土交通省の住宅統計によると、エリアごとの空室率格差は最大で15ポイント以上あり、郊外と都市部ではリスクが大きく異なります。これを補うために、敷地を有効活用して駐車場経営を組み合わせたり、補助金を使って室内外を魅力的に改修する戦略が重要です。つまり、複数の収益源を束ねることで、家賃が下がってもトータルの利益を維持できる体制を築くことができます。
さらに、減価償却を活かした節税も収益に直結します。鉄骨造なら耐用年数は34年ですが、中古取得の場合は短期間で償却でき、キャッシュは温存しつつ課税所得を圧縮できます。これらを組み合わせれば、利回りが一見平凡な物件でも、実質利回りは大幅に跳ね上がるのです。
2025年度の補助金を味方にする方法

重要なのは、補助金を借入金の“代わり”ではなく“味付け”として活用する姿勢です。2025年度も継続している「既存賃貸住宅省エネ改修支援事業」は、断熱材の追加や高効率給湯器の導入に対して工事費の3分の1(上限120万円)を補助します。申請は2025年12月末までですが、予算枠に達すると早期終了するため、計画段階で施工会社と連携して申請書を整えることが欠かせません。
加えて、「賃貸住宅耐震化促進事業」は、旧耐震基準の物件を耐震等級1相当へ引き上げる場合、工事費の最大50%(上限150万円)を助成します。耐震改修後は火災保険料が下がるケースもあり、長期的なコスト削減効果も見逃せません。つまり、単に補助金をもらうだけでなく、付随する保険料や修繕費の減額まで含めて総合的にメリットを計算することがポイントになります。
なお、環境省の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」は、EV充電設備を設置する駐車場にも適用され、一基あたり15万円(上限設置費の50%)が支給されます。若い入居者層はEV対応かどうかを重視し始めており、充電器の有無が成約率に直結する例も増えています。これらの制度を組み合わせれば、初期投資を抑えつつ物件価値を底上げできるのです。
駐車場を併設して利益を底上げ
実は、アパート経営と駐車場経営は相性が非常に良いです。駐車場収入は利用料を前払いで徴収しやすく、滞納リスクが低いため、キャッシュフローの安定剤として機能します。都市部では平置き月極駐車場の平均料金が首都圏で2万円、地方中核市でも8,000円程度あり、1台分のスペースで年間10万円以上の純利益が期待できます。
さらに、入居者に優先権を与えつつ外部契約も受け付ければ、空室期間でも駐車場は稼働します。土地が限られている場合は、機械式や二段式ラックを導入し、駐車可能台数を増やす方法もあります。設置費は高いものの、2025年度の「機械式駐車場安全対策補助金」で改修費の40%が補助される自治体もあり、投資回収期間を短縮できます。
言い換えると、駐車場は家賃下落局面でも稼働率が落ちにくい“保険”として機能します。それに加え、EV対応区画を設ければ差別化が図れ、充電器利用料を別に徴収することで収益が二重構造になります。結果として、表面利回りが7%の物件でも、駐車場と充電器収入を合わせれば実質9%まで引き上げられるケースが確認されています。
利益計算とキャッシュフローの実践
ポイントは、補助金や副収入をどうキャッシュフロー表に落としこむかです。例えば、家賃収入が年間600万円、駐車場4台で年間48万円、EV充電器利用料が年間12万円とします。ここに省エネ改修補助金120万円を取得し、改修費総額300万円を10年償却すれば、初年度は税引き前キャッシュフローが一気に増加します。
さらに、固定資産税は耐震改修後の評価額減によって年8万円ほど圧縮できることがあります。管理費や修繕積立を保守的に見積もっても、アパート単体利回り7%、駐車場込みで9%、補助金と節税効果を加味すると実質11%を達成するシミュレーションが成り立ちます。もちろん、市場金利や空室率の変動を加味したバッファーを設けることが大切です。
ここで忘れてはならないのが、返済比率の目安です。金融機関は年間返済額が家賃収入の50%を超えると融資姿勢が厳しくなりますが、駐車場や充電器収入を加えることで返済比率を実質40%以下に抑えやすくなります。数字で示すことで、融資担当者にも計画の妥当性をアピールでき、金利交渉を有利に進められるのです。
リスク管理と出口戦略
まず、リスクは「発生確率」と「影響度」に分けて考えます。空室リスクは発生確率が高めですが影響度は中程度、耐震・水害リスクは発生確率は低くても影響度が大きいのが特徴です。耐震改修とハザードマップ確認は、補助金を利用して早めに手を打っておくことで、金融機関の融資継続意欲を高める効果も期待できます。
一方で、駐車場経営には近隣競合の登場や月極需要の変動といったリスクがあります。需要が落ち込んだ場合でも、時間貸しパーキングへの転換や、EVカーシェア会社との提携で固定収入を確保する選択肢があります。これらの代替策を計画に盛り込むことで、収益の谷を浅くすることができます。
出口戦略として、物件を売却する際は「エネルギー性能が高い」「駐車場収益が確立している」という付加価値が評価額に上乗せされます。国交省のサンプル分析では、省エネラベル付き賃貸住宅は未改修物件より売却価格が平均8%高いというデータもあります。つまり、補助金と駐車場を活用して得た追加利益は、そのまま資産価値として手元に残るのです。
まとめ
ここまで、アパート経営で補助金と駐車場を組み合わせて利益を最大化する方法を解説しました。2025年度の補助金を活用した省エネ・耐震改修は、物件価値を高めながら初期投資を圧縮できます。また、駐車場やEV充電器による副収入は、空室リスクを緩和しキャッシュフローを安定させる強力な柱になります。最終的に、数字で裏付けた計画を示すことで融資条件も引き寄せられ、実質利回り10%超えも十分視野に入ります。ぜひ本記事を参考に、複数の収益源を束ねた長期安定型のアパート経営に挑戦してみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省住宅統計調査 2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 環境省 クリーンエネルギー自動車導入促進補助金 2025年度概要 – https://www.env.go.jp
- 国土交通省 既存賃貸住宅省エネ改修支援事業 2025年度公募要領 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 固定資産税評価基準 2025年度改訂版 – https://www.soumu.go.jp
- 東京都 機械式駐車場安全対策補助金 2025年度 – https://www.metro.tokyo.lg.jp