始めてアパート経営に挑戦する方の多くが、「修繕費はどれくらい見ておけばいいのか」「RC造マンションは本当に長持ちするのか」と悩みます。修繕費を甘く見積もるとキャッシュフローが狂い、最悪の場合は物件の売却を余儀なくされます。本記事では、2025年10月時点で有効なデータと制度に基づき、RC造マンションを軸とした修繕費の考え方を丁寧に解説します。読み終えるころには、長期の資金計画とリスク管理のコツがつかめるはずです。
アパート経営で修繕費が重要な理由

まず押さえておきたいのは、修繕費が収益の安定性を大きく左右する点です。国土交通省の住宅統計によると、2025年8月時点の全国アパート空室率は21.2%でした。空室が長期化すると家賃収入が減り、修繕に回す資金が不足しがちです。つまり、計画的に修繕費を積み立てることが、空室リスクへの備えにもなるわけです。
さらに、修繕費には突発的な「臨時修繕」と計画的な「大規模修繕」があります。屋根や外壁の塗装、給排水管の交換などは十年単位で費用がかかり、金額も数百万円規模にのぼります。一方、細かな補修を怠ると物件の印象が悪化し、入居者募集に影響が出るため注意が必要です。
重要なのは、家賃収入の10%前後を毎月の修繕積立に充てる習慣を付けることです。例えば月額家賃が総額80万円なら、8万円を別口座で確保するイメージです。こうした小さな積み上げが、後々の大規模修繕を無理なく実行する力になります。
RC造マンションの構造と長寿命のメカニズム

実は、RC造(鉄筋コンクリート造)マンションは木造や軽量鉄骨造に比べ耐久性が高いことで知られます。コンクリートが鉄筋を覆うことで酸化を防ぎ、耐火性も高まるため、構造体の寿命は60年以上といわれます。その結果、修繕周期が長く、外壁や屋上防水を中心としたメンテナンスに集中できる点が魅力です。
とはいえ、長寿命ゆえに大規模修繕の金額も大きくなりがちです。一般社団法人のデータでは、延床面積1,000㎡規模のRC造マンションの場合、12年目と24年目に実施される大規模修繕費が平均1,200万円前後に達します。木造より周期は長いものの、金額は高くなる傾向があるので資金計画が欠かせません。
ポイントは、外壁塗装やシーリング材の劣化サインを見逃さないことです。ひび割れや白華現象(エフロレッセンス)が発生した時点で早期補修を行えば、漏水や鉄筋腐食を防げます。結果として、大規模修繕の時期を後ろ倒しにできるケースもあります。
修繕費を見積もる具体的な方法
まず、物件購入時に「長期修繕計画書」を取得することが出発点です。売主や管理会社が作成した計画書には、外壁塗装、屋上防水、エレベーター更新など、項目ごとの費用と周期が記載されています。これを基に、年間の平均修繕費を算出し、家賃収入から逆算して積立額を決めましょう。
言い換えると、数字で把握しておけば、融資返済と修繕費を同時に賄えるかどうかが明確になります。例えば、12年後に1,200万円の大規模修繕を予定する場合、毎年100万円、月当たり約8万3,000円を積み立てればよい計算です。やみくもに「毎月家賃の○割」というより、具体的に割り出す方が安心です。
また、築20年以上の中古RC造マンションを購入する場合、近い将来に修繕が集中する可能性があります。重要なのは、購入価格が割安でも修繕費を上乗せした総コストで評価することです。さらに、不動産経済研究所のデータでは、2025年10月時点の東京23区の新築マンション平均価格は7,580万円でした。新築との差額が大きいほど修繕費のバッファーを確保しやすくなる点も見逃せません。
キャッシュフローと長期資金計画の立て方
まず押さえておきたいのは、家賃収入・返済・修繕費・税金を一体で捉えることです。家賃は定期的に入りますが、修繕費は一定ではなく突発的に現れます。そのため、シミュレーション上は「空室率20%」「金利上昇2%」といった厳しめの条件でも黒字が保てるか確認しましょう。
結論として、金融機関の返済比率を家賃収入の50%以下に抑えると、修繕費と税金を賄う余裕が生まれます。例えば月100万円の家賃収入に対し返済50万円以内なら、修繕積立10万円、税金10万円、手残り30万円という配分が現実的です。
さらに、固定金利と変動金利を組み合わせる「ミックスローン」も選択肢になります。長期の金利リスクを抑えつつ短期で返済を進めることで、空室が増えてもキャッシュフローを維持しやすくなります。修繕積立を優先する月が生じても、返済負担が急増しない体制を整えることが重要です。
2025年度の補助制度と活用のコツ
ポイントは、断熱改修や再エネ設備に対する補助金を修繕と同時に活用することです。2025年度は「既存住宅省エネ改修支援事業」が継続しており、窓の高断熱化や高効率給湯器の導入に対し最大120万円まで補助されます(申請期限は2026年3月末まで)。同じ足場を使う外壁塗装と同時に行えば、足場費用を二重に払わずに済みます。
また、東京都内であれば「東京都太陽光パネル設置助成」が2025年度も実施されています。屋上防水と合わせて太陽光を載せると、売電収入で修繕費の一部を賄えるメリットがあります。ただし、補助金は先着順のため、工事スケジュールと申請時期を管理会社と共有しておく必要があります。
最後に、自治体の助成金は年度ごとに予算枠が変わります。情報収集を怠らず、着工前に申請の可否を確認しましょう。補助金を活用すれば実質利回りが向上し、資金繰りに余裕が生まれます。
まとめ
RC造マンションを軸にアパート経営を考える場合、修繕費は「高額だが周期が長い」という特徴があります。長期修繕計画書を基に具体的な積立額を決め、家賃収入の中で無理なく確保することが成功への近道です。また、補助制度を組み合わせることで支出を抑え、キャッシュフローを安定させることが可能です。今日からできる行動として、まずは物件ごとの修繕履歴と計画書を手に入れ、年間の積立シミュレーションを作成してみましょう。将来の大規模修繕にも慌てず対応できる体制が整います。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年8月速報 – https://www.mlit.go.jp
- 不動産経済研究所 新築マンション市場動向 2025年10月 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 一般社団法人 マンション修繕技術センター「マンション修繕費用実態調査2024」 – https://www.mastc.or.jp
- 経済産業省 既存住宅省エネ改修支援事業 2025年度概要 – https://www.enecho.meti.go.jp
- 東京都 環境局 太陽光パネル設置助成 2025年度要綱 – https://www.kankyo.metro.tokyo.jp