不動産投資に興味はあるものの、「何から始めればいいのか分からない」「高額な買い物で失敗が怖い」という声をよく耳にします。特に収益物件の場合、購入から運営までの手順を誤ると長期にわたり負担を抱えることになりかねません。本記事では、物件選定から資金計画、リスク調査、運営管理、そして2025年時点で活用できる税制メリットまで、初心者でも理解しやすい流れで解説します。読み終える頃には、自分に合った「収益物件 手順」をイメージできるようになるはずです。
物件選びの基本ステップを押さえる

まず押さえておきたいのは、収益物件選びを段階的に進めることです。立地、物件タイプ、想定利回りという三つの軸を照らし合わせる作業が肝となります。
立地は最寄り駅からの距離だけでなく、将来の人口動態や都市計画も確認します。国土交通省の都市計画データによると、再開発エリアは家賃水準が維持されやすい傾向があります。物件タイプについては、ワンルームマンションが管理しやすい一方、ファミリー向けは入居期間が長く安定するという特徴があります。想定利回りは、表面利回りだけで判断せず、固定資産税や管理費を差し引いた実質利回りを試算することが重要です。
手順としては、候補エリアを三つ程度に絞り込み、ポータルサイトで販売中の物件を比較するのが一般的なスタートとなります。その後、現地調査で周辺の賃料相場と空室率を確認し、机上の計算とのずれがないか検証します。このプロセスを省くと、購入後に家賃を下げざるを得ない状況に陥るため注意が必要です。
資金計画とローンの組み立て方

実は、資金計画を甘く見て始めるとキャッシュフローがすぐに赤字へ傾きます。ポイントは自己資金、借入条件、修繕費用の三点をバランスさせることです。
自己資金は物件価格の20%を目安に用意すると、金融機関の融資審査で有利になります。2025年の主要地銀データでは、頭金2割以上で金利が年0.2%下がるケースが多数報告されています。次に借入条件ですが、返済比率が家賃収入の50%以内に収まる計画を立てると、金利上昇リスクにも耐えやすくなります。借入期間を長くすると月々の返済は軽くなるものの、総返済額が増える点も忘れないようにしましょう。
修繕費用は築年数によって大きく異なります。築15年超の区分マンションでは、購入後5年以内に大規模修繕が発生する確率が高いとマンション管理センターの統計が示しています。したがって、毎月の家賃収入の10%程度を修繕積立に回す習慣を付けると、突発的な支出に慌てずに済みます。また、仲介手数料や登記費用など諸費用も初期投資額の7%前後になるため、資金繰り計画に入れておく必要があります。
物件調査とリスク判定のコツ
重要なのは、現地調査と書類調査をセットで行うことです。どちらか片方だけではリスクを見落とす可能性が高まります。
現地調査では、建物の外観だけでなくゴミ置き場や共用部の清掃状況を確認します。管理が行き届いている物件は入居者の質も良い傾向があり、長期的な空室リスクを抑えられます。また、平日と休日、昼と夜の二回に分けて周辺環境を観察すると、騒音や治安の実態を把握しやすくなります。
書類調査では、レントロール(入居者一覧表)と管理組合の議事録が欠かせません。家賃滞納率が3%を超える物件は、運営面で問題を抱えている可能性が高いといえます。さらに、長期修繕計画が実際の積立金と合致しているか確認することで、将来の追加負担を予測できます。固定資産税評価証明書を取り寄せれば、おおよその毎年コストも算出できます。
最後に、災害リスク判定を忘れないようにしましょう。国土交通省「重ねるハザードマップ」で洪水・地震リスクを確認し、必要に応じて保険料も試算します。保険加入が前提のローン商品もあるため、早い段階でトータルコストを把握する姿勢が重要です。
運営管理でキャッシュフローを安定させる
ポイントは、家賃収入を維持しつつ支出を最適化する仕組みを作ることです。購入後の運営が成功すれば、投資効率は大きく向上します。
まず賃貸管理会社の選定ですが、手数料の安さだけで決めるとサービス内容に不満が出る場合があります。過去の入居付け実績、クレーム対応スピード、原状回復費用の水準を数字で比較すると納得感が高まります。管理委託契約では、解約通知の期限や広告料負担のルールを細かく確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
家賃設定は市場に合わせて年1回見直すのが理想です。東京都賃貸住宅市場レポート(2025年上期)によれば、築10年以内のワンルームは平均家賃が前年同月比で1.8%上昇しています。こうしたデータを基に、リフォームを実施するタイミングで家賃アップを狙うと収益力が向上します。一方、長期入居者に対しては更新料や共益費の調整で収益を確保する方法もあります。
支出面では、火災保険と地震保険を一括見直しするだけでも年間数万円の削減が期待できます。さらに、LED照明やインターホンの遠隔監視化など小規模な省エネ投資を行うと、電気代削減と入居者満足度アップを同時に達成できます。こうした工夫を積み重ねることで、キャッシュフローが安定し、次の物件購入へ踏み出しやすくなるのです。
2025年の税制メリットを活かす
基本的に、収益物件の税制メリットは減価償却費と損益通算にあります。2025年度の税制改正では、これらの仕組み自体に大きな変更はなく、適用期間も延長されています。
減価償却費とは、建物価格を耐用年数で割って毎年経費計上できる制度です。木造アパートなら耐用年数22年、RC造マンションなら47年が目安となり、建物価格が大きいほど節税効果が高まります。損益通算は、家賃収入で赤字が出た年に給与所得など他の所得と相殺できる仕組みで、所得税や住民税を抑える効果があります。
注意点として、2025年度から中古物件の耐用年数見直しに伴い、築古木造の加速度的償却は一部制限が強化されました。具体的には、法定耐用年数を過ぎた物件でも、残存耐用年数を20%ルールで短縮して計算する方法が廃止されています。そのため、築古物件で節税を狙う場合は、購入前に税理士とシミュレーションを行うことが必須となります。
一方、特定空家の活用促進を目的とした「民間賃貸住宅活用特例」は2025年度も継続中です。この特例では、地方公共団体が指定した空家を賃貸住宅に改修した場合、改修費の10%相当額を所得税から控除できます。ただし、登録期間は2027年3月までと期限があるため、検討中の方は早めに手続きを進めるとよいでしょう。
まとめ
本記事では、収益物件を選び、購入し、運営するまでの手順を段階ごとに整理しました。立地と利回りを偏りなく評価し、自己資金と借入条件を最適化することで、キャッシュフローは安定します。さらに、現地と書類の二重調査でリスクを可視化し、運営段階では家賃設定と経費削減を定期的に見直すことが鍵となります。税制メリットを正しく理解し、2025年度の最新ルールに沿って計画を組めば、収益物件投資は着実に資産形成へつながるでしょう。まずは一物件を徹底的に分析し、自分自身で数字を管理する習慣を身に付けることから始めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 都市計画情報提供サービス – https://www.mlit.go.jp/tikasokuchi/
- 国土交通省 重ねるハザードマップ – https://disaportal.gsi.go.jp/
- 一般社団法人 マンション管理センター 統計資料 – https://www.mankan.or.jp/
- 東京都住宅政策本部 賃貸住宅市場レポート2025上期 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 日本銀行 金融システムレポート2025 – https://www.boj.or.jp/