インフレ率が上昇を続ける中、銀行預金だけでは資産を守りきれないと感じている方は少なくないでしょう。総務省統計局の消費者物価指数によると、2023年から2024年にかけて物価は年3%を超えるペースで上昇し、2025年に入っても高止まりの傾向が続いています。こうした環境下で再注目されているのが、築古アパートへの不動産投資です。
特に、銀行融資が難しい築古物件でも柔軟に対応してくれるノンバンク融資を活用すれば、初心者でも収益物件を取得できる可能性が広がります。ノンバンクとは預金業務を行わない貸金業者のことで、不動産担保ローンを専門に扱う会社が数多く存在します。銀行が融資を渋る法定耐用年数超過物件でも、収益性や担保価値を適正に評価してもらえるのが最大の特徴です。本記事では、築古アパートがインフレ対策として有効な理由から、ノンバンク融資の具体的な条件、成功事例、運営のコツまで体系的に解説します。
築古アパートがインフレ対策に有効な3つの理由

インフレ局面で不動産が現金より強いと言われるのには、明確な理由があります。家賃は物価に連動しやすい性質を持っているため、収益物件は購買力の目減りを防ぎながらキャッシュフローを生み出せるのです。ただし、不動産なら何でも良いわけではありません。築古アパートが特にインフレ対策として注目される理由を3つの観点から見ていきましょう。
実物資産として価値を維持する力
現金をただ保有していると、インフレによって購買力が年々下がっていきます。一方、不動産は実物資産であり、建物の価値は減少しても土地の価値は物価上昇に連動する傾向があります。国土交通省の住宅・土地統計調査によれば、都市部の住宅地は長期的に見ると物価上昇率と同程度かそれ以上のペースで地価が推移してきました。つまり、築古アパートを保有することで、インフレに対するヘッジ効果が期待できるわけです。
さらに重要なのは、不動産は「使える資産」である点です。自分で住むこともできますし、人に貸して家賃収入を得ることもできます。現金は物価上昇とともに価値が目減りするだけですが、不動産は使い方次第でインフレ環境下でも収益を生み続けてくれます。この実用性と収益性の組み合わせが、築古アパート投資の魅力となっています。
高利回りと減価償却による節税効果
日本不動産研究所のデータによると、築20年以上の木造アパートの想定利回りは都心近郊で7〜9%、地方中核都市では10%前後が平均とされています。これは築浅物件より3ポイント前後高い水準で、投下資本を早期に回収できる点が魅力です。利回りが高ければ、金利負担が大きくなるノンバンク融資を使っても十分なキャッシュフローを確保できます。実際、表面利回り10%の物件であれば、金利5%のノンバンク融資を使っても利ざやを稼ぐことが可能です。
加えて、木造の場合は法定耐用年数22年を超えると4年で減価償却できるため、課税所得を大きく圧縮できます。インフレで名目家賃が上昇しても、減価償却費で相殺することで手残りを確保しやすくなるのです。たとえば年間家賃収入300万円の物件で、減価償却費が年200万円計上できれば、課税対象となる不動産所得は100万円に抑えられます。この節税効果は、築古物件ならではの大きなメリットと言えるでしょう。
修繕計画でリスクをコントロールできる
築古物件は修繕リスクが高いというイメージがありますが、適切な計画を立てれば十分にコントロール可能です。重要なのは購入前にインスペクション(建物診断)を実施し、5年以内に発生しそうな修繕費を見積もることです。屋根防水や給排水管の劣化は外観からは把握しにくいものの、専門家と一緒に調査すれば数百万円規模の突発出費を防げます。
修繕費を織り込んだうえで利回りを計算することが、築古投資成功の第一歩となります。たとえば、購入後3年以内に外壁塗装で150万円、5年以内に屋上防水で100万円が必要だと分かれば、これを年間50万円の修繕積立として計上します。そのうえで、家賃収入から諸経費と修繕積立を差し引いた実質利回りがプラスになるかを確認するのです。このプロセスを踏めば、想定外の出費に慌てることはありません。
ノンバンク融資の特徴と活用メリット

築古アパートへの投資を検討する際、最初にぶつかる壁が融資の問題です。都市銀行や地方銀行は、法定耐用年数を超えた物件への融資に消極的なケースが多く、審査が通りにくい傾向があります。たとえば木造アパートの法定耐用年数は22年ですから、築25年の物件では残存耐用年数がゼロと判断され、銀行融資が受けられないことが珍しくありません。そこで選択肢として浮上するのがノンバンク融資です。
ノンバンク融資の金利とLTV・DSCR相場
ノンバンクの金利は一般的に4.0〜6.0%程度で、銀行融資の1.5〜3.5%と比べるとやや高めに設定されています。しかし、その分審査基準が柔軟で、法定耐用年数を超えた築古物件でも融資を受けられる可能性があります。金利が高い理由は、ノンバンクが預金を原資としていないため調達コストが高いことと、築古物件は銀行より高いリスクを取っている点にあります。裏を返せば、そのリスクを取ってくれるからこそ、銀行で断られた物件でも資金調達できるわけです。
LTV(Loan to Value:担保評価額に対する融資比率)は70〜80%程度が一般的で、物件評価額の7〜8割まで借り入れできるケースが多いです。たとえば評価額2000万円の物件なら1400〜1600万円が融資上限の目安となります。自己資金として残りの400〜600万円を用意する必要がありますが、銀行融資が全く受けられない状況と比べれば十分に現実的な選択肢です。
また、審査で重視されるのがDSCR(Debt Service Coverage Ratio:元利返済カバー率)で、年間の純営業収益(NOI)を年間返済額で割った値が1.2倍以上あれば審査が通りやすくなります。たとえば、年間家賃収入が300万円、諸経費を差し引いた純営業収益が240万円、年間返済額が180万円の場合、DSCRは約1.33倍となり、審査基準をクリアできる計算です。ノンバンクは銀行以上にこの数値を重視するため、物件選びの段階でDSCRを計算しておくことが重要です。
審査スピードと柔軟性が最大の武器
ノンバンク融資の最大のメリットは、銀行では難しい築古物件への融資が受けられる点です。耐用年数切れの木造アパートでも、物件の収益性や担保価値を適正に評価してもらえれば融資が下りる可能性があります。銀行は「築年数」という形式的な基準で機械的に判断しがちですが、ノンバンクは実際の家賃収入や立地条件を個別に見てくれるケースが多いのです。
さらに、審査スピードが速く、申し込みから2〜3週間で融資実行に至るケースも珍しくありません。銀行融資では1〜2ヶ月かかることを考えると、良い物件を素早く押さえたい投資家には大きなアドバンテージとなります。不動産市場では掘り出し物件ほど早く売れてしまうため、このスピード感は想像以上に重要です。実際、「買付証明書を出してから2週間以内に融資が下りなければ他の買い手に回す」という売主も少なくありません。
金利負担とのバランスを取る
一方で、金利が高い分だけ毎月の返済負担は重くなります。たとえば、2000万円を金利5%・15年で借りた場合、月々の返済額は約15.8万円となり、金利2%の場合の約12.9万円と比べて約3万円多くなります。この差額がキャッシュフローを圧迫するため、物件の利回りが十分に高いことが融資活用の前提条件となります。目安としては、表面利回りが10%以上ある物件でないと、ノンバンク融資を使っても手残りを確保するのは難しいでしょう。
また、繰上返済に対して違約金が発生するケースもあるため、契約時には返済条件を細かく確認しておく必要があります。ノンバンクは融資期間全体での利息収入を見込んで金利を設定しているため、早期に完済されると収益が減ってしまいます。そのため、融資実行から3〜5年以内の繰上返済には残債の2〜3%程度の違約金を設定している会社もあります。将来的に借換えを考えている場合は、この点も契約前に必ず確認しましょう。
共同担保とフルローン戦略の実践法
自己資金が限られている初心者投資家にとって、共同担保を活用したフルローン戦略は有力な選択肢となります。共同担保とは、購入する物件だけでなく、すでに所有している不動産や他の資産を追加担保として差し入れることで、融資額を増やす手法です。この方法を使えば、頭金ゼロに近い形で築古アパートを取得できる可能性があります。
たとえば、自宅を共同担保に入れることで、築古アパートの購入価格の100%近くまで融資を受けられるケースがあります。自宅の評価額が3000万円で住宅ローン残債が1000万円なら、差し引き2000万円の担保余力があります。この余力を使って、1500万円の築古アパートをフルローンで取得するといった戦略が考えられるわけです。自己資金を温存できるため、複数物件への投資や突発的な修繕費への備えとして手元資金を残せるのが大きなメリットです。
ただし、共同担保を入れるということは、返済が滞った場合にその資産も差し押さえの対象になるリスクを負うことを意味します。したがって、フルローンを組む際は、空室率が20%に達しても返済を続けられるか、金利が2%上昇しても耐えられるかといったストレスシナリオでシミュレーションを行い、無理のない返済計画を立てることが不可欠です。自宅を失うリスクまで取るのですから、慎重すぎるくらいがちょうど良いと考えてください。
成功事例から学ぶノンバンク融資の活用術
実際にノンバンク融資を活用して築古アパート投資を成功させた事例を見ていきましょう。具体的な数字をイメージすることで、自分自身の投資計画を立てる際の参考になるはずです。
事例1:千葉県築40年軽量鉄骨で利回り15%を実現
ある投資家は、千葉県の築40年・軽量鉄骨造のアパート(8戸)を1200万円で購入しました。立地は最寄駅から徒歩12分とやや離れていましたが、近隣に大学があり学生需要が見込める環境でした。銀行では築年数を理由に融資を断られましたが、ノンバンクに物件の収益性を説明したところ、金利4.5%・期間12年で1000万円の融資を受けることに成功しています。
月々の返済額は約9.5万円で、満室時の月額家賃収入18万円から管理費・修繕積立金を差し引いても、毎月6万円以上の手残りを確保できています。表面利回りは18%、実質利回りでも15%程度を実現した好例です。この投資家は購入後すぐに各部屋にWi-Fi設備を導入し、学生向けの家具付きプランを提案したことで満室経営を維持しています。初期投資200万円(自己資金+リフォーム費)で年間手残り70万円以上を得ているため、3年以内に投資回収できる計算です。
事例2:共同担保を活用したフルローン取得
別の事例では、すでに所有していた自宅(評価額2500万円、残債800万円)を共同担保に入れることで、埼玉県の築35年・木造アパート(6戸)1500万円をフルローンで取得した投資家がいます。金利は5.5%とやや高めでしたが、自己資金をほぼ温存したまま投資をスタートできた点が大きなメリットでした。
月額家賃収入12万円に対し、返済額は約9.2万円(15年返済)で、空室が1戸出ても返済に支障がない設計になっています。この投資家は購入後1年目に外壁塗装と共用部の照明LED化で計80万円を投じましたが、それでも手元に現金を残していたため、急な修繕にも慌てることなく対応できました。2年目からは安定して月2万円以上のキャッシュフローを得ており、3年後には地銀への借換えを目指して実績を積んでいるところです。
資金調達後の運営術とリスク管理
融資を受けて物件を取得した後は、いかにキャッシュフローを安定させるかが勝負です。築古物件だからこそ、運営の工夫次第で収益性を高められる余地があります。
現実的なキャッシュフローシミュレーション
まず取り組むべきは、現実的なキャッシュフローシミュレーションの作成です。年間家賃収入から、管理費(家賃の5%程度)、修繕積立金(家賃の5〜10%程度)、固定資産税、火災保険料、空室損失(想定空室率10〜15%)、そしてローン返済額を差し引いた手残りを計算します。ノンバンク融資は金利が高い分、このシミュレーションで黒字が出ることを必ず確認してから投資を決断してください。
実際に数字を入れてみましょう。年間家賃収入240万円の物件で、管理費12万円、修繕積立金20万円、固定資産税8万円、保険料3万円、空室損失(10%)24万円を差し引くと、純営業収益は173万円となります。ここから年間返済額150万円(月12.5万円)を引けば、手残りは年23万円です。この水準であれば、多少の空室増加や修繕費増加にも耐えられるでしょう。逆に、手残りが年10万円以下になるようなら、その物件は避けた方が賢明です。
小規模リフォームで入居率を上げる
築古物件で最初に取り組みたいのは、投下資本に対して入居者満足度を上げやすい小規模リフォームです。外壁塗装は数百万円かかりますが、照明のLED化やポスト交換、エントランス清掃の徹底なら数万円から数十万円で実施できます。国土交通省の賃貸住宅市場データによれば、同一エリアでの家賃差は築年数より室内設備の新旧で大きく開く傾向があります。
退去が出た部屋から順にWi-Fi無料設備やスマートロックを導入すれば、2〜3千円の家賃アップが見込めるケースも多いです。6戸のアパートで全室に月2000円アップが実現できれば、年間14.4万円の収入増となります。リフォーム費用が30万円だったとしても、2〜3年で投資回収できる計算です。重要なのは、「築古だから仕方ない」と諦めず、できる範囲で競争力を高める努力を続けることです。
借換えで金利負担を軽減する
ノンバンクで取得した物件も、数年間の実績を積めば銀行への借換えが視野に入ってきます。たとえば、2年間満室経営を続けて安定したキャッシュフローを証明できれば、地銀や信用金庫が借換えに応じてくれる可能性があります。残債1500万円・残期間10年で金利が5%から2%に下がれば、月々の返済額は約15.9万円から約13.8万円に減少し、年間約25万円のコスト削減となります。
借換えには諸費用(融資手数料、登記費用など)が30〜50万円程度かかりますが、長期的なキャッシュフロー改善を考えれば検討に値する戦略です。ノンバンク融資はあくまで「スタート資金」と位置づけ、実績を積んだら条件の良い融資に切り替えていくという発想が大切です。この借換え戦略を見据えて、日頃から帳簿をしっかりつけ、満室経営を維持する努力を怠らないようにしましょう。
補助金・税制優遇を味方につける
築古アパート投資では、各種の補助金や税制優遇を活用することで初期コストや運営コストを抑えられます。2025年度に利用可能な制度を確認しておきましょう。
不動産取得税の軽減措置
2025年度も不動産取得税の軽減措置が継続されており、個人が住宅用物件を取得する際は評価額1200万円までの税率が1.5%に据え置かれています。築古物件でも要件を満たせば適用可能なため、取得時のコストを確実に抑えることができます。たとえば評価額1000万円の物件なら、本来4%の税率で40万円かかるところ、軽減措置で15万円に抑えられます。この25万円の差額は、小規模リフォームの原資として活用できるでしょう。
省エネ賃貸住宅改修補助金
2025年度から開始された「省エネ賃貸住宅改修補助金」は、賃貸住宅の断熱改修に対し費用の3分の1(上限200万円)を補助する制度です。築古アパートの窓を二重サッシに交換したり、断熱材を追加したりする工事が対象となります。申し込み期限は2026年3月末までで、工事完了後に申請する仕組みです。
光熱費削減で入居者にもメリットがあり、物件の競争力向上にもつながります。たとえば6戸のアパート全室の窓を二重サッシ化する工事費が300万円かかった場合、100万円が補助されて実質負担は200万円で済みます。この改修によって「光熱費が安い物件」として差別化でき、家賃を月1000〜2000円アップできれば、5〜7年で投資回収できる計算です。
減価償却と青色申告特別控除
所得税の面では、減価償却がキャッシュフローを守る強力な武器になります。木造で築22年超なら4年、RC造で築47年超なら10年の定額法が原則で、短期に大きく経費計上できるためインフレによる名目家賃上昇分を税負担で相殺しやすくなります。たとえば建物評価額800万円の築30年木造アパートなら、年200万円を減価償却費として計上できます。
さらに、青色申告特別控除65万円を確保するため、小規模でも帳簿を複式簿記で作成し電子申告する体制を整えておきましょう。初心者ほど早めに税理士に相談することで、節税効果を最大化できます。税理士報酬は年10〜20万円程度かかりますが、適切な節税アドバイスで数十万円の納税額を抑えられれば十分に元が取れます。
よくある質問(FAQ)
Q:ノンバンクで築古アパートを買う場合、金利は何%が相場ですか?
A:一般的に4.0〜6.0%程度が相場です。物件の担保価値や借り手の属性によって変動しますが、銀行融資の1.5〜3.5%と比べるとやや高めに設定されています。その分、審査が柔軟で築古物件でも融資を受けやすいのがメリットです。金利が高くても、物件の利回りが10%以上あればキャッシュフローを確保できるケースが多いでしょう。
Q:DSCRは何倍以上必要ですか?
A:多くのノンバンクでは1.2倍以上が審査通過の目安とされています。年間純営業収益が年間返済額の1.2倍以上あれば、返済能力があると判断されやすくなります。シミュレーション時にこの数値を確認しておくと安心です。余裕を持たせるなら1.3〜1.5倍を目指すと、空室や修繕費増加にも対応しやすくなります。
Q:築古アパートでもフルローンは可能ですか?
A:共同担保を活用すれば可能なケースがあります。すでに所有している不動産や資産を追加担保として差し入れることで、物件価格の100%近くまで融資を受けられる場合があります。ただし、共同担保に入れた資産も返済不能時には差し押さえの対象となるため、リスクも高まります。慎重なシミュレーションと余裕ある返済計画が必須です。
まとめ
インフレが続く環境下では、貨幣価値の減少に晒されにくい築古アパートが資産防衛の有力な選択肢となります。銀行融資が難しい物件でも、ノンバンクを活用すれば取得の道が開けます。金利は4〜6%とやや高めですが、高利回りの築古物件であればキャッシュフローを確保しながら投資を続けることが可能です。
成功のカギは、購入前のインスペクションで修繕リスクを把握し、DSCRや空室率を織り込んだ現実的なシミュレーションを作成することです。ノンバンク融資は審査が柔軟で実行スピードが速い反面、金利負担が重いという特性があります。この特性を理解したうえで、表面利回り10%以上の物件を選び、DSCR1.2倍以上を確保できる条件で融資を組むことが重要です。
さらに、省エネ補助金や減価償却といった制度を活用しながら運営コストを最適化していけば、築古アパートはインフレに負けない資産形成の武器になります。小規模リフォームで入居率を上げ、数年後には銀行への借換えで金利負担を軽減するという戦略も視野に入れましょう