家賃収入で安定した副収入を得たいものの、何から手を付けるべきか分からない——そんな悩みは多くの初心者が抱えています。本記事では、物件選びから運用、さらにはREIT(不動産投資信託)まで、資産形成の全体像を五つのステップで整理します。キャッシュフローを正しく把握し、利回りを読み解く力を身に付けることで、将来的なリスクを最小限に抑えられます。読み終わる頃には「自分でも具体的に動けそうだ」と感じられるはずです。
不動産投資のステップをざっくり確認

まず押さえておきたいのは、投資全体を段階的に考える姿勢です。資金計画、物件調査、融資交渉、購入、運用という五つの流れを意識すると、複雑な作業も整理しやすくなります。
最初の段階では自己資金と借入可能額を明確にします。2025年現在、都市銀行のアパートローン金利は年1.8%前後で推移しており、返済比率を年収の35%以内に抑えるのが一般的です。次にエリア選定へ進みますが、総務省の人口推計を確認し、10年間で人口が増えている市区町村を優先すると空室リスクを減らせます。
融資交渉では、事前にキャッシュフロー表を作成し、金融機関に示すと評価が上がります。最後の購入と運用フェーズでは、入居付けを外部管理会社に任せるか自主管理にするかで手間とコストが変わります。一連のステップを紙に書き出し、期限を設定すると行動が加速します。
キャッシュフローを読む力を鍛える

重要なのは、収入と支出を月単位で可視化することです。キャッシュフローとは現金の流れのことであり、表面利回りだけに頼ると予想外の出費で赤字になる危険があります。
たとえば、東京23区のワンルームマンションを月8万円で賃貸すると、年間家賃収入は96万円です。一方で管理費・修繕積立金が年間15万円、固定資産税が7万円、ローン返済が60万円かかると、手元に残るのは14万円に過ぎません。この数字こそが実際の自由資金であり、投資判断の軸になります。
また、長期修繕費を毎月3,000円ずつ積み立てると、将来の大規模修繕にも対応しやすくなります。言い換えると、キャッシュフロー表に「見えない支出」を先に書き込むことで、楽観的な収支計画を防げるのです。金融機関が重視するDSCR(元利返済比率)は1.2以上が目安と覚えておくと、融資交渉もスムーズになります。
利回りの計算と落とし穴
ポイントは、表面利回りと実質利回りを区別することです。表面利回りは家賃収入を物件価格で割った単純な指標で、東京23区平均では4.2%と報告されています(日本不動産研究所)。しかし、実質利回りは諸費用を差し引くため、同じ物件でも3%前後に下がるケースが多いのです。
実質利回りを求める際には、購入時諸費用8%、年間運営費15%、空室率5%を想定すると保守的な試算になります。たとえば総額2,500万円の区分マンションで、年間家賃収入が120万円の場合、実質利回りはおよそ3.2%に落ち着きます。ここで金利上昇リスクを1%織り込むと、さらに0.4ポイント下がるため、自己資金比率を高めることで安全域を確保しましょう。
さらに、地方のアパートで表面利回り10%を超える案件を見かけても、人口減少や賃料下落を考慮すると実質利回りは大幅に低下します。つまり、高利回りをうたうチラシは数字の根拠を必ず確認し、自治体の空室率データや将来人口推計を合わせて検討することが不可欠です。
REITで分散投資を実践する
実は、物件購入に踏み切れない人でも不動産市場へ参加できる選択肢があります。それがREIT(Real Estate Investment Trust)です。REITは多数の投資家から集めた資金でオフィスや商業施設を保有し、賃料収入を配当として分配します。
REITの魅力は、少額から複数物件へ間接的に分散投資できる点です。東証REIT指数の平均分配利回りは2025年10月時点で3.7%前後に位置し、長期債券より高い水準を維持しています。上場銘柄は流動性が高く、必要に応じて売却して資金を回収できるため、現物不動産のような売却手続きの煩雑さがありません。
一方で価格変動リスクは株式市場と連動する部分があり、短期的な値動きに惑わされない姿勢が求められます。加えて、物件の物理的状況を直接確認できないため、運用会社の開示資料や決算説明会を丹念にチェックする習慣が重要です。キャッシュフローを安定させるには、現物不動産とREITを組み合わせたポートフォリオを検討する価値があります。
初心者が次に踏み出す具体的なステップ
まず、家計から投資に回せる余裕資金をはっきりさせることが出発点です。そのうえで、キャッシュフロー表を作り、空室率20%、金利+2%など厳しめの前提で耐久力を測ります。ここまで整えば、金融機関との面談で説得力が増し、好条件の融資を引き出しやすくなります。
次に物件情報サイトを毎日チェックし、気になる物件は現地へ足を運びましょう。駅から歩き、周囲の生活利便施設を自分の目で確認することが、数字だけでは分からない価値を教えてくれます。実際、徒歩10分圏にスーパーがない物件は入居者が離れやすい傾向があります。
最後に、REIT口座を開設し、月1万円でも積み立てを始めると、不動産市況を体感的に学べます。現物購入までの待機期間でも、市場動向をウォッチする習慣が付き、利回り感覚が磨かれるからです。小さな行動を重ねることで、投資のステップが自然と前に進みます。
まとめ
本記事では、資金計画から利回り計算、REIT活用まで、不動産投資を五つのステップで整理しました。キャッシュフローを丁寧に読み、実質利回りで判断する姿勢が安定収益への近道です。さらに、REITを併用することで分散効果が高まり、リスクを抑えながら市場経験を積めます。まずは家計を見直し、キャッシュフロー表を作成するところから始めてみてください。日々の小さな一歩が、将来の大きな資産形成につながります。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」 – https://www.stat.go.jp
- 金融庁「金融レポート2025」 – https://www.fsa.go.jp
- 東京証券取引所「東証REIT指数データ」 – https://www.jpx.co.jp
- 国土交通省「不動産価格指数」 – https://www.mlit.go.jp