札幌に興味はあるものの「人口減が進むと空室が心配」「雪国の維持費が読めない」と感じていませんか。実は、札幌は地方中枢都市の中でも人口が底堅く、観光・IT・大学集積という多様な需要を誇ります。本記事では投資初心者でも理解しやすいように、最新データを交えながら市場の特徴、エリア選定、資金計画、そして2025年度に利用できる制度まで丁寧に解説します。読み終えた頃には、札幌で投資物件をどう見極めるかを具体的にイメージできるはずです。
札幌の人口・経済が示す安定需要

まず押さえておきたいのは、札幌市の人口が地方都市としては珍しく横ばいで推移している点です。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、2025年1月時点で約197万人と前年同期比で0.1%の微減にとどまりました。流出超過が進む道内市町村と対照的に、大学進学や就職を機に若年層が流入し続けていることが背景にあります。
一方で、札幌圏の実質域内総生産は北海道経済の37%を占め、観光とITがけん引役です。札幌駅周辺再開発でオフィス床が拡大し、スタートアップの創業数は2024年度比で15%増えました。経済の多角化は雇用安定を促し、賃貸需要の下支えとなっています。
空室率も確認しましょう。不動産研究所の2025年4月調査では、札幌市中央区のワンルーム空室率は8.2%、全国平均の10.5%より低水準です。つまり、適切なエリア選定を行えば長期的な賃料収入が期待できます。
需要を支える三つのセグメント

重要なのは賃貸需要の内訳を理解することです。札幌では「学生」「若手社会人」「観光・医療関係の短期滞在者」が三本柱となります。まず学生ですが、道内外から約6万人が市内17大学に在籍し、中央区と北区の駅近物件を好む傾向が続いています。
次に若手社会人です。IT関連企業の集積する創成イーストや大通地区には、築浅の1LDKやコンパクト2LDKが人気です。平均年収400万円前後の層が中心で、共益費込み月8万円までを許容ラインとする声が多く聞かれます。
最後に短期滞在者です。新幹線札幌延伸を前にビジネスホテル不足が顕在化し、30日以上のマンスリー需要が拡大しています。冬季スキー観光はもちろん、札幌医科大附属病院周辺では医療滞在ニーズも高まり、家具付き区分マンションが安定稼働しています。言い換えると、この三つのセグメントを想定して物件を選べば、空室リスクを抑えやすいのです。
成功するエリア選定の視点
ポイントは「就業・通学先へのアクセス」と「除雪コスト」のバランスを測ることです。中央区と北区は地下鉄南北線が縦断し、雪の日でも移動しやすいため、家賃が2割高くても入居が決まりやすい傾向にあります。一方、東西線沿線の琴似や宮の沢は家賃水準が下がる代わりにキャッシュフローが出やすく、利回り重視派から支持されています。
さらに、札幌駅北口再開発エリアは2029年完工予定の複合ビル計画が進行中で、地価公示価格は2023年比で年平均4%上昇しています。将来の資産価値を考えるなら、周辺の築浅区分や小規模アパートを早めに押さえる選択肢も現実的です。
一方で、雪害リスクを見逃せません。北側道路に面した物件は除雪車の入りにくさから管理費が嵩む事例が多いです。購入前に管理組合の除雪体制や個別融雪槽の有無をチェックし、年間維持費を試算することが欠かせません。
収支を左右する融資と税務の基礎
実は、札幌の投資利回りは首都圏より高いものの、融資条件はやや厳格です。地方案件に対しては金融機関が自己資金30%程度を求める傾向があります。北海道銀行や北洋銀行のアパートローンは固定1.8%前後が主流ですが、物件評価が高ければメガバンクの1%台後半も狙えます。融資審査では「築年数」と「雪対策費用を加味した収支計画」が重点項目です。
税務面では減価償却が大きなメリットになります。1964年以前の木造長屋が多い首都圏と異なり、札幌の中古RC(鉄筋コンクリート)物件は築25年以内が豊富で、法定耐用年数47年の残存期間が長いです。つまり、毎年の経費計上額が安定し、課税所得をコントロールしやすいと言えます。
加えて、2025年度は住宅ローン減税の投資利用が認められない一方、賃貸住宅の省エネ改修に対する「賃貸住宅エコリノベ補助金」が存続しています。要件は「断熱性能を国交省基準値まで引き上げること」で、補助率は工事費の1/3(上限120万円)。省エネ改修で賃料を1割上げた事例も出ているため、収支改善と税負担軽減の両面で検討の価値があります。
2025年度の制度活用とリスク管理
まず、2025年度の固定資産税軽減制度では新築賃貸住宅が完成後3年間、税額が2分の1となります。ただし、条例指定区域外の物件は対象外です。札幌市では中央区と豊平区の再開発促進地区が指定されており、該当エリアで新築を計画する投資家には有利と言えます。
一方で、地震保険の加入率が道内平均38%と低いため、万が一の備えが不足しがちです。札幌も石狩低地東縁断層帯が想定震源に含まれるため、RC造でも耐震診断を実施し、保険加入までを資金計画に組み込むべきです。火災保険料は2024年10月の改定で約13%上昇しましたが、長期契約の割引率が高いため10年契約で固定する方法がコスト抑制に有効です。
気候リスクでは大雪による屋根荷重が問題になります。国交省ガイドラインでは1平方メートル当たり1500ニュートンが設計基準ですが、築古物件は満たさないケースもあります。購入前に建築確認図書を確認し、必要なら耐雪補強工事を見積もることで、将来的な修繕ショックを回避できます。
まとめ
札幌の賃貸需要は学生・若手社会人・短期滞在者という三層で多様性があり、人口が底堅い点が投資の安心材料です。中央区や北区は安定収益、西区や手稲区は高利回りと、エリアごとに戦略を変えることでリスクを分散できます。融資では自己資金と雪対策費まで含めた収支計画を提示し、2025年度のエコリノベ補助金や固定資産税軽減を活用すればキャッシュフローはさらに向上します。行動に移す際は、除雪体制や耐雪性能を必ずチェックし、長期保有に耐える物件を選ぶことが成功への近道です。
参考文献・出典
- 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
- 札幌市都市局 – https://www.city.sapporo.jp
- 不動産研究所 – https://www.reins.or.jp
- 国土交通省 – https://www.mlit.go.jp
- 北海道経済産業局 – https://www.hkd.meti.go.jp