賃貸経営に興味はあるものの、「現物不動産は管理が大変そう」「REITなら手軽だけど本当に安全なのか」と迷う方は多いはずです。さらに鉄筋コンクリート造(RC造)の物件は丈夫と聞く一方で、購入後に思わぬ出費が発生するケースもあります。本記事では、REITとRC造の基本を整理しつつ、見落とされがちなデメリットを具体的に解説します。読了すれば、自分に合った投資スタイルを選ぶ判断材料が手に入るでしょう。
REITの仕組みを押さえる

まず押さえておきたいのは、REITが不動産を小口化して証券化した商品だという点です。不動産投資信託とも呼ばれ、投資家は証券取引所を通じて1口数万円から売買できます。国土交通省の統計によると、2025年4月時点で上場REITは70銘柄超に拡大し、時価総額は約20兆円に達しています。
RC造の物件を直接買う場合と比べ、REITは分散投資が容易で、プロが運用するため空室リスクを投資家が直接負担しません。また、流動性が高く、平日の取引時間内なら即座に売却できます。一方で、一般的な配当利回りは4〜5%台に落ち着いており、レバレッジをかけた現物投資に比べて収益の伸びは限定的です。つまり、REITは少額で安定収益を目指す手段として有効ですが、高いキャッシュフローを期待するとギャップが生じやすい点に注意が必要です。
REIT投資で見逃せないデメリット

重要なのは、市場リスクが株式と似た形で顕在化する点です。東証REIT指数は新型コロナ流行時に約40%急落しましたが、現物賃貸は同期間で家賃水準が大きく下落したわけではありません。つまり、証券市場のセンチメントに左右される価格変動がREIT特有の弱点と言えます。
さらに、投資法人の外部成長戦略によっては増資が頻発し、1口あたりの利益が希薄化する可能性があります。増資タイミングは投資家が選べないため、長期保有前提でも思わぬ含み損を抱えることがあります。加えて、物件取得時にかかる諸費用や運用報酬は開示されていますが、個別物件の修繕計画までは詳細を把握できません。その結果、配当が想定より下振れしても投資家は運用方針を直接コントロールできないのです。
最後に税制面を整理すると、REITの分配金は株式配当に近い扱いで、他の金融所得と損益通算できない点が現物不動産と大きく異なります。2025年度税制でもこのルールは維持されており、高所得者ほど課税負担が重くなる点は把握しておくべきでしょう。
RC造とは何か、そのメリットと耐久性
実は、RC造は鉄筋とコンクリートを一体化させる構造で、耐震性と耐火性に優れます。国土交通省の告示では耐用年数47年とされ、木造の22年や鉄骨造の34年より長い点が大きな魅力です。長期的に見て家賃下落がゆるやかな傾向もあり、金融機関の融資期間を長く取れるためキャッシュフロー計画を立てやすくなります。
一方で、建物が重いため地盤改良や杭工事が必要になるケースが多く、建設コストは木造の1.5〜2倍に達します。築古RC物件を取得する場合でも、給排水管がコンクリートに埋設されているため更新工事の費用が高額になりやすい点は要注意です。つまり、耐久性と引き換えに初期投資や修繕費が膨らむ構造上の宿命があります。
RC造物件の隠れたデメリット
ポイントは、修繕計画を甘く見積もると収益が急速に悪化する点です。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、築30年以上のRC集合住宅では外壁タイルの浮きや給排水の漏水が報告率30%を超えています。これらを放置すると入居者満足度が低下し、将来的な家賃下落と退去増加を招きます。
さらに、RC造は共用部分が広く、エレベーターや受水槽といった設備機器も多い傾向にあります。大規模修繕では足場だけで数百万円が必要で、修繕積立金を計画的に積み立てていないと、一度に多額の持ち出しが発生します。加えて、遮音性が高いとはいえ、コンクリートの熱容量が大きいため、夏場は熱がこもりやすく空調費がかさむ物件も存在します。省エネ改修を後から行うには、断熱材の追加や窓交換で数百万円規模のコストがかかるため、取得時には断熱性能も確認する必要があります。
REITかRC造か、選択のポイント
まず押さえておきたいのは、運用の手間と資金規模、そしてリスク許容度の三つを軸に比較することです。REITは証券口座だけで完結し、物件管理や修繕計画を自分で立てる必要がありません。ただし市場変動リスクと税制面のデメリットを受け入れる必要があります。一方、RC造を含む現物投資はレバレッジを活用しやすく、家賃収入から経費を差し引いたキャッシュフローを自分で最適化できます。しかし、多額の初期費用と管理負担、そして長期での修繕リスクを負う覚悟が必須です。
結論として、時間をかけずにインフレーションヘッジを図りたい層にはREITが向いています。対して、資金と労力を投じてでも安定した家賃収入と節税効果を狙うならRC造物件の直接保有が有効です。もっとも、両者は排他的ではありません。ポートフォリオの中でREITを流動性資産、RC造を長期保有資産と位置づけ、比率を調整することで、価格変動と空室リスクを分散する戦略も検討する価値があります。
まとめ
REITは少額で始められ、管理の手間もかからない一方、市場の急変にさらされやすく税制上の制限もあります。RC造は高い耐久性と融資メリットが魅力ですが、初期費用と修繕リスクを軽視できません。両者のデメリットを理解したうえで、自分の投資目的と資金計画を擦り合わせることが成功への近道です。まずはシミュレーションを行い、想定外の出費にも耐えられる余裕を確保してから一歩を踏み出しましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産証券化市場動向レポート 2025年6月版 – https://www.mlit.go.jp
- 東証REIT指数概況 東京証券取引所 – https://www.jpx.co.jp
- 総務省 住宅・土地統計調査 2023年速報 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行 金融システムレポート 2025年4月号 – https://www.boj.or.jp
- 住宅金融支援機構 民間賃貸住宅ローン調査 2025年度 – https://www.jhf.go.jp