不動産投資に興味はあるけれど、木造アパートでは将来の修繕費が心配という声をよく聞きます。そこで注目されているのが、鉄筋コンクリート造(RC造)マンションの経営です。耐久性と銀行評価の高さが魅力ですが、初期投資が大きいため慎重な判断が欠かせません。本記事では、RC造マンション経営の基礎から資金計画、運営のコツまで体系的に解説します。読み終えたときには、初心者でも具体的な検討ステップが描けるようになるはずです。
RC造マンション経営が注目される背景

ポイントは、人口動態と金融環境がRC造マンションの需要を後押ししていることです。国土交通省の住宅着工統計によると、2024年度からRC造集合住宅の着工数は微増を維持し、都心部では新築需要が依然高い状況です。また、2025年10月時点で主要都市のオフィス空室率が下げ止まり、単身世帯向け賃貸の需要が堅調に推移しています。
まず、RC造は法定耐用年数が47年と長く、金融機関の融資期間が延ばしやすい特性があります。返済期間が長ければキャッシュフローに余裕が生まれ、長期保有戦略を採りやすくなります。一方で、建築コストは木造に比べ30〜40%高いのが一般的です。つまり、RC造マンション経営では「長寿命×長期融資」を活かし、初期の資金負担と将来の収益安定性をバランスさせる視点が欠かせません。
さらに、新築マンションの平均価格は東京23区で7,580万円(不動産経済研究所、2025年)と過去最高を更新しています。価格上昇が続く局面では、土地を含めた資産価値が維持されやすく、出口戦略の選択肢が広がります。しかし、金利上昇リスクや賃料下落の影響を長期で受ける可能性もあるため、多角的なシナリオ分析が必要です。
まず押さえておきたいRC造の特徴

重要なのは、RC造の耐震性・遮音性・断熱性が賃貸市場で優位に働く点です。鉄筋とコンクリートの組み合わせにより震動吸収力が高く、阪神・淡路大震災以降の新耐震基準にも適合しやすい設計が普及しています。入居者は安全性への意識が年々高まっており、耐震性能が募集時の大きな訴求ポイントになります。
遮音性もRC造マンション経営のアピール材料です。単身者はもちろん、共働き世帯も近隣騒音に敏感で、内見時に「コンクリート壁で生活音が漏れにくい」という説明があると成約率が上がる傾向が見られます。日本賃貸住宅管理協会の入居者意識調査でも、遮音性を重視する回答は2023年度から増加し、2025年度は全体の64%に達しました。
一方で、RC造は将来の大規模修繕コストが高額になります。具体的には外壁補修や屋上防水で1戸あたり80万〜120万円が目安です。修繕積立金を月々の賃料収入から計画的に確保し、15年ごとの改修時期に備えることが不可欠です。言い換えると、安定収益を得るためには「稼いだ利益をいかに次のメンテナンスに回すか」というキャッシュフロー管理が核心となります。
購入時に見極めたい収益性とリスク
実は、RC造マンション経営で最初に躓くケースの多くが、表面利回りだけで物件を選んでいる点にあります。表面利回りとは年間家賃収入を購入価格で割った単純な指標で、管理費や修繕費、空室損を加味しません。金融機関の審査や自己の資金計画を固めるには、運営費を差し引いた「実質利回り」を重視する姿勢が必要です。
空室率については、東京都心で平均4〜5%、地方中核市で8〜10%が2025年の目安とされています。国土交通省「賃貸住宅市場概況」によると、駅徒歩7分以内のRC造ワンルームでは空室率が都心で3%を切るケースもあります。立地と管理品質が空室を左右するため、購入前に近隣の競合物件を実地調査し、賃料水準と募集期間を把握しておきましょう。
リスク面では災害と法規制が挙げられます。とくに浸水リスクは地価が安いエリアほど高まる傾向があり、水害ハザードマップを購入判断の軸に据えることが重要です。2025年度の建築基準法改正で、「避難経路確保」が強化され、既存物件でも増改築時に対応を求められる場合があります。法規制コストは後から上乗せされるため、収益シミュレーションに余裕を持たせる設計が安全策と言えます。
資金計画と融資戦略の基本
まず押さえておきたいのは、RC造マンション経営では長期固定金利を選ぶ投資家が増えている点です。2025年10月現在、都市銀行の20年固定金利は2.3〜2.6%、地方銀行や信金では2.0%前後に設定されるケースもあります。インフレ抑制策により金利が上昇トレンドにあるため、固定金利で返済額を確定させるメリットが高まっています。
自己資金は物件価格の25〜30%用意すると、融資審査での評価が上がり、金利条件が優遇される可能性があります。例えば総事業費1億円のRC造マンションを想定すると、自己資金3,000万円、融資期間30年、金利2.5%で毎月返済額は約39万円です。想定家賃収入が月80万円、運営費率30%、修繕積立月8万円なら、手残りは約9万円になります。この手残りを増やすには、運営費を下げるか家賃を維持する工夫が要となります。
2025年度も継続する「新築住宅の固定資産税減額措置」は、120㎡以下の居住部分に対し3年間、税額を2分の1に軽減します。RC造マンション経営でも適用可能で、初期のキャッシュフローを改善する効果があります。ただし、4年目以降の税額増加を資金計画に織り込むことを忘れないようにしましょう。
運営フェーズで差がつく管理術
ポイントは、入居者に「住み続けたい」と思わせる運営が長期収益を支えることです。RC造マンションは構造的に強いものの、共用部の美観を保てなければ退去率が上がります。エントランスのLED照明化や宅配ボックスの設置など、小額投資で満足度を高める施策を検討してください。
入居者対応では、24時間駆け付けサービスを導入すると管理コストは月数千円増えますが、オーナーの緊急対応ストレスが減り長期的には退去抑制につながります。日本賃貸住宅管理協会のデータによると、同サービスを導入した物件は退去率が平均2ポイント低下しました。
また、RC造特有の結露対策も重要です。外壁が厚く気密性が高いぶん、換気を怠ると室内湿度が上がりカビが発生しやすくなります。2025年の省エネ基準改正で24時間換気の効果が再評価されており、換気システムの定期清掃を管理会社に義務付けるとクレームを防ぎやすくなります。つまり、建物のハードと管理のソフトを一体で考える姿勢が、RC造マンション経営を成功に導くカギとなるのです。
まとめ
ここまでRC造マンション経営の魅力と注意点を整理しました。耐久性と金融機関評価の高さは大きなメリットですが、初期投資と修繕費をカバーする資金計画が欠かせません。購入前に実質利回りと空室リスクを検証し、長期固定金利や税制優遇を組み合わせることで、キャッシュフローの安定性を高められます。運営に入った後は、共用部の美観維持と入居者サービスを強化し、退去率を低水準に抑える工夫が必要です。行動に移すなら、まずは地元の金融機関に融資条件を確認し、ハザードマップと周辺家賃相場を確かめる現地調査から始めてみましょう。堅実な準備が、RC造マンション経営を将来の安定収入へと導いてくれます。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 賃貸住宅市場概況 2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 不動産経済研究所 新築マンション価格動向 2025年10月 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 日本賃貸住宅管理協会 入居者ニーズ調査 2025年度 – https://www.jpm.jp
- 総務省 ハザードマップポータルサイト – https://disaportal.gsi.go.jp