不動産の税金

初心者でも分かる一棟マンション利回りの見極め方

不動産投資に興味はあるものの、「一棟マンションの利回りは複雑そう」と感じていませんか。実際、表面利回りや実質利回り、資金調達まで考えると専門用語が多く、戸惑う方が少なくありません。しかしポイントを押さえれば、数字が示す意味を読み取り、自分に合った案件を選べるようになります。本記事では2025年10月時点の最新データを交えつつ、利回りの基礎から収益向上のコツ、リスク管理までを丁寧に解説します。読み終えるころには、物件情報を見た瞬間に「投資価値があるか」を判断できる力が身につくでしょう。

利回りを理解する第一歩は「計算式」と「水準」

利回りを理解する第一歩は「計算式」と「水準」のイメージ

重要なのは、利回りが何を意味し、どの水準なら妥当かを把握することです。利回りは年間の家賃収入を物件価格で割って求める指標で、投資効率を示します。

まず表面利回りは、家賃収入の総額を購入価格で割った単純計算です。東京23区の平均表面利回りは、日本不動産研究所によるとワンルームで4.2%、ファミリータイプで3.8%です。数字だけを見ると低く感じますが、都心は空室リスクが小さく安定したキャッシュフローが見込めるため、利回りの絶対値より安全性を重視する投資家が多いのが現状です。

一方で地方都市の一棟マンションは表面利回り6〜8%が珍しくありません。ただし人口減少や賃貸需要の偏りが大きく、空室が増えると実質利回りが急落します。つまり利回りの数値だけではなく、立地や需要をセットで考えることが大切です。

表面利回りと実質利回りの差を埋める

表面利回りと実質利回りの差を埋めるのイメージ

まず押さえておきたいのは、実質利回りが投資判断の核心になる点です。実質利回りは、家賃収入から維持費や空室損を差し引いて計算するため、現金の流れをより正確に示します。

管理費や修繕積立金、共用部電気代といったコストは、建物規模や築年数によって大きく異なります。目安として、RC造(鉄筋コンクリート造)の一棟マンションは年間家賃収入の15%前後が維持費に消えるケースが多いです。これを考慮しないと、表面利回り8%でも実質は5%台に落ち込むことがあります。

さらに空室率の設定が利回りを左右します。総務省統計局の住宅・土地統計調査によると、全国平均空室率は14%程度ですが、都心駅近では5%以下、郊外では20%前後に達する地域も存在します。保守的なシミュレーションとして、地方物件は空室率20%、都心物件でも10%を想定すると、実質利回りの計算が現実的になるでしょう。

収益性を高める運営術と資金調達

ポイントは、購入後の運営で利回りを改善できる余地を見極めることです。まず賃料改定の余地があるか、つまり周辺相場より安く貸していないかを確認します。もし現在の家賃が相場より1割低いなら、満室時の家賃総額を底上げでき、利回り改善の余地は大きいと言えます。

次にリノベーション戦略です。築20年以上のRCマンションでも、内装と共用部を刷新することで家賃を10〜15%引き上げた事例が増えています。改装費用を年間家賃の1年分以内に抑えられれば、投資回収期間は7〜8年程度で、長期保有中に利回りが確実に向上します。

資金調達では、金融機関の融資条件が利回りに直結します。2025年10月時点で、都市銀行の投資ローン金利は1.6〜2.2%、地方銀行は2.0〜3.0%が目安です。金利が1%違うと30年返済で総支払額が数百万円単位で変わるため、複数行を比較し、団体信用生命保険の内容も含めて総コストを計算しましょう。

リスク管理と出口戦略をセットで考える

実は利回りだけを追うと、想定外のリスクに目をつぶりがちです。耐震性や修繕履歴など建物の健康状態が悪いと、思わぬ大規模修繕が必要になり、利回りは一気に低下します。購入前に建物診断を実施し、長期修繕計画を確認することが欠かせません。

さらに火災保険や地震保険の加入内容によって、災害時のキャッシュアウトが変わります。国土交通省の地震被害想定データでは、首都直下地震の被害額が1棟当たり平均2,000万円に達する可能性も指摘されており、補償上限や免責金額を必ずチェックしましょう。

出口戦略として、将来的に売却する場合の想定価格を購入時点で考えることが重要です。不動産経済研究所によれば、2025年の新築マンション平均価格は東京23区で7,580万円と前年より3.2%上昇しました。価格は金利や景気に左右されるため、売却益よりも安定した賃料収入で投資回収を図り、価格が好転したタイミングで売る方針がリスクを抑えます。

2025年度の市場動向と活用できる制度

まず押さえておきたいのは、2025年度の税制・金融環境が利回りに与える影響です。現行の減価償却制度では、築30年以上のRC物件でも法定耐用年数47年を超えた分は4年の定額法で償却できます。これにより取得初年度から経費計上額が増え、キャッシュフローの向上が期待できます。

また、2025年度の「中小企業経営強化税制」は、不動産管理会社が一定要件を満たす耐震改修や省エネ改修を行った場合、即時償却または10%の税額控除を選択できます。適用期限は2026年3月31日までで、マンション共用部のLED化や高効率給湯器導入が対象となるため、改修による賃料アップと節税を同時に狙えます。

金融面では、金融庁のモニタリングによって投資用融資の審査は引き続き厳格ですが、健全な計画を示せば金利優遇が得られる余地があります。家賃下落や修繕費高騰など複数のシナリオを提出することで、金融機関との交渉を有利に進められるでしょう。

まとめ

一棟マンションの利回りを正しく読み解くには、表面利回りと実質利回りの差を把握し、維持費や空室率を現実的に見積もることが欠かせません。さらに運営改善や低金利融資を組み合わせることで、購入時の計算上の利回りを数年で引き上げることも可能です。最後に、耐震性や修繕計画を精査し、出口戦略まで描くことで、長期的に安定したキャッシュフローを確保できます。数字だけに惑わされず、データと現場情報の双方を確認しながら、自分のリスク許容度に合った物件を選びましょう。

参考文献・出典

  • 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
  • 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp
  • 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp
  • 金融庁 令和7事務年度金融行政方針 – https://www.fsa.go.jp

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