築年数が30年以上のアパートを買っても本当に儲かるのか──。家賃下落や修繕費の不安から二の足を踏む方は少なくありません。しかし、適切なリフォームと空室対策を組み合わせれば、新築より高い利回りを実現できるのが築古アパート 経営の醍醐味です。本記事では、2025年10月時点の最新市場データを交えながら、物件選びから資金繰り、税制優遇までを丁寧に解説します。読み終える頃には、月10万円のキャッシュフローを現実的に描けるようになるはずです。
築古アパート投資が注目される背景

まず押さえておきたいのは、築古物件の市場環境が改善している事実です。国土交通省の住宅統計によると、2025年8月の全国アパート空室率は21.2%で前年比0.3ポイント改善しました。つまり、リノベーション需要の高まりに伴い、築古でも差別化できれば入居者を確保しやすい状況が続いています。
一方で、築古アパートは新築より物件価格が30〜50%程度低いケースが多く、購入時点で高利回りが狙えます。都内23区でも表面利回り9%前後、地方中核都市なら12%超えが珍しくありません。また、建物価格が低いほど減価償却費が多く取れるため、課税所得を圧縮しやすいメリットもあります。
ただし、建物の瑕疵(かし)リスクが大きい点は否定できません。重要なのは、購入前に長期修繕計画を立て、修繕履歴と現況をプロに診断させることです。特に給排水管や屋根は交換費用が高額なので、残存耐用年数を把握せずに購入すると、初年度から大赤字になる恐れがあります。
初期費用とリフォーム費の見積もり方

ポイントは、購入経費と改装費を分けて管理し、合計で投資利回りが崩れない範囲に収めることです。物件価格の8%前後を諸費用として見積もり、そこに室内外のリフォーム費を加えます。経験的には、築30年以上なら戸当たり40万〜60万円を見込むと概算がブレにくくなります。
実は、リフォーム内容によっては補助金を活用できる場合があります。2025年度の「先進的窓リノベ支援事業」では、高性能断熱窓への交換費用の1/2相当、上限200万円までが還元されます。ただし、申請は着工前に行う必要があるため、施工会社とスケジュールを共有しておきましょう。
費用感をイメージしやすくするため、代表的な改装項目と相場をまとめます。
- 室内フルリフォーム(床・壁・設備)…25万〜35万円/戸
- 共用部塗装…80万〜120万円/棟
- 屋上防水・屋根交換…150万〜250万円/棟
このように、外装工事は大規模になりがちです。したがって、購入時に外観が整っている物件を選ぶと、初期投資を抑えやすくなります。
賃料設定と空室対策のコツ
重要なのは、家賃を上げるよりも稼働率を高める方が、年間キャッシュフローに与える影響が大きい点です。例えば、家賃4万円の部屋を2千円上げるより、2カ月の空室期間を1カ月に短縮する方が、年間で2万円以上の収入増になります。
空室対策でまず効果的なのが、Wi-Fiと宅配ボックスの設置です。日本郵政の調査では、単身世帯の約65%が宅配ボックス付き物件を選好しています。導入費用は30戸規模で60万円程度ですが、入居者が入れ替わるごとに再募集費用を削減できるため、3年ほどで回収可能です。
また、リノベーションの際はデザイン性よりも機能性を重視しましょう。耐久性のあるフロアタイルや汚れに強いタイル調クロスなら、原状回復費が毎回数万円浮きます。つまり、賃料を維持しながらランニングコストを削減できるため、長期的な利回りが安定します。
収益シミュレーションと資金繰り管理
まず押さえておきたいのは、手残りを試算する際、返済比率を家賃収入の50%以内に抑えることです。金利2.0%、期間20年、融資比率80%で試算すると、年間返済額は借入1,000万円当たり約61万円になります。家賃収入が年間180万円なら、返済後に119万円が残り、さらに固定資産税や管理費を差し引いても月10万円のキャッシュフローが見込めます。
一方で、空室率が20%に悪化し、金利が1%上昇するシナリオでも回るかを必ず確認してください。シミュレーションでマイナスが出る場合は、自己資金を厚くするか、返済期間を延ばす交渉が必要です。また、賃料入金とローン引落日がずれると資金ショートを起こすので、家賃保証会社を使い入金日を固定化する手も有効です。
さらに、築古アパート 経営では修繕積立が欠かせません。年間家賃収入の5%を修繕積立金として別口座にプールしておくと、大規模修繕への備えになります。これを実行しても黒字化できるプランでなければ、購入を見送る判断も重要です。
税制優遇と2025年度の支援策
実は、築古アパートにも利用できる税制優遇が複数あります。最大のポイントは建物部分の減価償却です。木造なら法定耐用年数22年を過ぎた時点で、残りの価格を4年で償却できるため、初期4年間は帳簿上の赤字で所得税を圧縮できます。
次に、耐震改修促進法に基づく固定資産税の減額措置です。2025年度も継続しており、耐震基準を満たす改修を行うと、翌年度の固定資産税が2分の1に減額されます(適用期限は2026年3月31日工事完了分まで)。適用には自治体への事前申請が必須なので、工事契約前に確認しましょう。
最後に、先進的窓リノベ支援事業を再度取り上げます。高性能窓への改修は入居者の光熱費削減にも直結し、物件の競争力向上に寄与します。補助対象となる工事費は上限があるものの、環境価値を訴求できるため、入居者募集時の宣伝効果も高まります。
まとめ
築古アパート 経営は、物件価格の安さと税制メリットを組み合わせ、高利回りを狙える投資手法です。重要なのは、購入前に修繕コストを精査し、返済比率を50%以内に抑えることでした。さらに、宅配ボックスなど差別化設備を導入し、稼働率を高める工夫が長期安定収益につながります。補助金や固定資産税減額も上手に利用し、シミュレーション通りのキャッシュフローを実現してください。まずは気になる物件の長期修繕計画を書き出し、一歩踏み出すことから始めてみましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 統計局 家計調査 – https://www.stat.go.jp
- 環境省 先進的窓リノベ支援事業公式サイト – https://www.env.go.jp
- 日本郵政 住宅ニーズ調査2024 – https://www.jp-post.jp
- 国税庁 法定耐用年数表 – https://www.nta.go.jp