不動産価格が高止まりする一方で低金利が続くいま、一棟マンション 投資に興味を持つ人が増えています。しかし「区分と比べて何が違うのか」「大きなローンを抱えても大丈夫か」と不安になる方も少なくありません。本記事では初めての方でも理解しやすいよう、仕組みから資金計画、リスク管理まで順を追って解説します。読み終えるころには自分に合った投資判断の軸が見つかり、次の行動を具体的にイメージできるはずです。
一棟マンション投資が注目される背景

まず押さえておきたいのは、一棟マンション投資が近年注目される理由です。最大の要因は低金利環境が長期化し、レバレッジを活用した不動産投資が効率的になっている点にあります。また、東京都心の新築マンション平均価格は2025年10月時点で7,580万円と高額ですが、一棟物件なら土地と建物を一括で保有でき、土地値下支えの効果を得やすいのも魅力です。
さらに、インフレリスクが意識される中で家賃収入という実物資産のキャッシュフローは、預貯金よりインフレ耐性が高いといわれます。つまり、一棟マンションは資産防衛と長期運用を同時に実現しやすい選択肢です。一方で初期投資が大きく空室リスクも分散しにくいため、正しい知識と計画が不可欠となります。
キャッシュフローを安定させる収支設計

重要なのは、毎月のキャッシュフローをプラスに保つ収支設計です。家賃収入からローン返済、管理費、固定資産税、修繕積立を差し引き、手残りを確保できるかが投資成否を左右します。融資期間は長く取れば月々の返済は軽くなりますが、金利負担と物件の経年劣化を考慮し、30年を超える場合は大規模修繕のタイミングまで織り込む必要があります。
また、修繕費は表面利回りの7〜10%程度を目安に内部留保を積み立てると、突発的な出費にも対応しやすくなります。たとえば表面利回り8%の物件で年間家賃収入が2,400万円なら、少なくとも200万円は修繕原資として残す計算です。この留保が不足すると、空室が重なっただけで赤字に転落しかねません。
実は、減価償却による節税効果もキャッシュフローに大きな影響を与えます。鉄筋コンクリート造(RC造)は法定耐用年数47年ですが、中古で築20年の物件を購入した場合、簡便法により残存耐用年数を短縮して費用計上できるケースがあります。これにより税後キャッシュフローは改善しますが、帳簿上の利益が減り過ぎると金融機関評価に影響するためバランスが重要です。
物件選びで押さえるべき立地と建物条件
ポイントは、人口動態と交通利便性を重視した立地選定です。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2025年から2035年にかけて関東一極集中は緩やかになるものの、都心と駅近の需要は底堅いと見込まれています。都心部は価格が高いものの空室リスクが低く、賃料下落にも耐えやすいメリットがあります。
一方、郊外でも駅徒歩10分以内や再開発エリアなら、取得価格を抑えつつ安定収益を得られる場合があります。つまり、絶対的な地価水準よりも将来の賃貸需要を左右する要素を複合的に評価することが大切です。
建物条件では耐震性と修繕履歴を確認します。新耐震基準(1981年改正)以降に建築されたRC造で、10〜15年おきに大規模修繕が実施されていれば、金融機関の評価も高まりやすくなります。また、共用部にエレベーターがある場合、保守点検費と更新費が将来のコストに大きく影響するため、残存耐用年数と資金計画を紐づけて考えることが欠かせません。
2025年度の融資動向と資金調達のコツ
まず押さえておきたいのは、2025年度も続く金融機関の不動産融資スタンスです。日本銀行の「貸出態度判断指数」では地銀・信金ともに慎重姿勢が続いていますが、自己資金2〜3割を投入し、DSCR(債務返済余裕率)1.2倍以上を示せば、個人投資家への融資は依然可能です。
固定金利型の住宅ローン控除は居住用が対象ですが、投資用物件でも政策金融公庫や一部信金が活用できる「グリーンローン」など環境配慮型融資が拡大しています。2025年度は太陽光発電など省エネ設備を備えた物件に対し、金利優遇が0.1〜0.3%上乗せされるケースが見られます。こうした制度を利用するには、建物診断書やエネルギー性能証明を事前に取得しておくと審査がスムーズです。
資金調達では、共同担保や追加保証人よりも、自己資金と物件評価で勝負する方が長期的に安全です。自己資金比率を高めれば、家賃下落や金利上昇に対する耐性が上がり、再投資の際の信用も築けます。つまり、短期的な資金効率だけでなく、次の案件に備えた信用戦略として自己資金を位置づけることが大切です。
リスク管理と出口戦略
実は、リスクを抑える最大の方法は出口戦略を先に描くことです。保有中に得るインカムゲイン(家賃収入)だけでなく、売却時にいくらで出られるかを常に想定しておくと、利回りの見方が変わります。将来の売却価格は周辺の取引事例と収益還元法の両面から予測し、3%程度の利回り上昇に耐えられる価格で取得できれば、安全域が広がります。
また、空室リスクはエリア特性だけでなく運営体制にも左右されます。賃貸管理会社は複数社を比較し、客付け力や修繕対応の速さを重視してください。ファミリータイプ中心の物件であれば長期入居が見込めますが、転勤族が多いエリアではシングル需要が安定するなど、ターゲットに応じた設備投資が必要です。
災害リスクも見逃せません。ハザードマップで洪水・地震の危険度を確認し、保険だけでなく防災設備の強化や避難経路の確保を入居募集時のアピールポイントにすると、入居者満足度も高まります。さらに、管理計画認定制度(2022年スタート)は2025年現在も有効で、長期修繕計画や維持保全の状況を示すことで、売却時の評価向上が期待できます。
まとめ
ここまで一棟マンション 投資の魅力とイロハを見てきました。低金利とインフレ耐性を活かしつつ、立地・建物・資金計画を丁寧に組み合わせれば、安定したキャッシュフローを長期にわたり得ることが可能です。一方で初期費用の大きさや空室、修繕といったリスクも伴います。だからこそ収支シミュレーションと出口戦略をセットで考え、金融機関や管理会社と信頼関係を築くことが成功への近道です。まずは小さくても確かな情報収集と現地調査から始め、自分のリスク許容度に合った一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 日本銀行「貸出態度判断指数」 – https://www.boj.or.jp/statistics/outline/bsurvey/
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」 – https://www.ipss.go.jp
- 国土交通省「管理計画認定制度ガイドライン」 – https://www.mlit.go.jp
- 環境省「グリーンファイナンス推進プログラム2025」 – https://www.env.go.jp