不動産投資に興味はあるものの、「一棟マンション 経営はハードルが高そう」と感じていませんか。実は区分所有より手間は増えますが、その分だけ収益の柱も増やせます。本記事では初めての方でも失敗しにくいよう、資金計画から物件選定、運営管理までを体系的に解説します。読了後には、具体的な行動ステップが見え、資産形成の道筋を描けるはずです。
一棟マンション経営の基本構造を押さえる

まず押さえておきたいのは、一棟マンション経営が「土地と建物を一括で所有し、賃料収入を最大化するビジネス」である点です。区分所有と異なり、共用部分の意思決定を自分で行えるため、修繕やリノベーションの自由度が高まります。また、建物全体に対して金融機関の担保評価が付くため、融資条件が有利になりやすいのも特徴です。
一方で、購入価格が1億円を超えるケースも珍しくなく、多額の借入を抱えるリスクがあります。さらに、入居者がゼロの状態でも固定資産税やローン返済は待ってくれません。つまり、高い収益ポテンシャルの裏側には、空室率や金利変動に耐えられる資金体力が不可欠だと理解してください。この点を踏まえ、次章では具体的な数字を用いて収益モデルを分解していきます。
収益とキャッシュフローを数字で読む

重要なのは、表面利回りではなく実質利回りを見る習慣です。たとえば年間家賃1,200万円、物件価格2億円の場合、表面利回りは6%ですが、管理費や修繕積立、共用部電気料などの経費が年間300万円かかると、実質利回りは4.5%に低下します。さらに借入金利2%で1億6,000万円を融資した場合、年間返済額は約640万円となり、手元に残るキャッシュフローは260万円にすぎません。
また、国土交通省「賃貸住宅市場の実態調査」によれば、築20年を超える物件の平均空室率は13%まで上昇します。空室リスクを加味したうえで、家賃下落シナリオを組み込むことが欠かせません。具体的には、空室率15%、家賃5%下落、金利1%上昇という厳しめの想定でもキャッシュフローが黒字であれば、金融機関の融資審査にも好影響を与えます。
さらに、減価償却による節税メリットも理解しましょう。鉄筋コンクリート造(RC造)の法定耐用年数は47年ですが、中古取得なら残存耐用年数を基に短期で費用計上できます。これにより課税所得を圧縮し、手取りを高める仕組みを作れます。ただし税務上の解釈には個別性があるため、購入前に税理士へ相談することが前提です。
成功する物件選びと立地の見極め
ポイントは、賃貸ニーズが長期にわたり維持されるエリアを選ぶことです。総務省の人口推計(2025年4月)では、東京23区の20〜34歳人口は前年度比で1.1%増と微増傾向にあります。特にJR山手線内側の駅徒歩10分圏は転入超過が続き、空室リスクが顕著に低いと報告されています。その一方で、賃料は平均7,580万円という新築分譲価格の高騰が投資利回りを圧迫します(不動産経済研究所)。
つまり、都心で利回りを確保するには築古物件を買い取り、価値を高めるバリューアップ戦略が有効です。例えば、築30年RC造の共用部にLED照明とスマートロックを導入し、付加価値を訴求する手法があります。工事費300万円で家賃を月額3,000円引き上げれば、年間36万円の収入増となり、表面利回り1.8%向上が期待できます。また、大学周辺のワンルーム特化や、病院近接エリアでのファミリー向け二重ロック設置など、需要層に合わせた差別化が欠かせません。
一方、郊外エリアでは、土地値に対して建物価格が高い“新築プレミアム”を避け、バス便15分以内の駅近土地を狙うことで初期投資を抑えられます。ただし、将来的な人口減少リスクが大きいため、出口戦略としての売却や賃料改定シミュレーションを必ず作成してください。立地選びは、マクロデータとミクロな生活動線の両面から丁寧に検証する姿勢が重要です。
融資と2025年度の税制優遇を活用する
まず、金融機関との交渉では「自己資金2割+諸費用」を目安に提示すると、金利と融資期間の条件が好転しやすい傾向があります。日本政策金融公庫では、賃貸住宅向けに最長25年、金利1.8%台の融資メニューが2025年度も継続中です。民間銀行は物件評価重視のため、事業計画書に空室シナリオを盛り込み、DSCR(債務返済比率)1.3倍以上を示すと審査が通りやすくなります。
税制面では、青色申告特別控除の65万円枠が2025年度も存続しているため、一棟マンション経営者は帳簿付けを電子帳簿保存法に対応させるだけで節税効果を最大化できます。また、固定資産税の新築住宅減額措置(3年間1/2軽減)は、賃貸用共同住宅も対象となり、2026年3月31日までの建築確認取得分が期限です。耐震改修促進法に基づく耐震補強を行った場合の投資税額控除も適用できるため、築古を買って改修する戦略と相性が良いと言えるでしょう。
ただし、制度は年度ごとに改正されるため、適用条件を必ず最新の官報で確認してください。専門家との連携を怠ると、せっかくの優遇が使えず収支が崩れるリスクがあります。融資と税制を両輪で活用し、資金繰りを長期にわたり安定させることが成功の鍵です。
運営管理とリスク対策の実践ポイント
基本的に、一棟マンション経営は「収支計画」と「運営体制」の両立が欠かせません。管理会社に任せきりにするのではなく、月次レポートを読み込み、クレーム内容や共用部の修繕履歴を把握する習慣を持ちましょう。入居者の属性を分析し、退去時期が集中する3月にはキャンペーンを仕込み、空室期間を短縮する工夫も必要です。
また、保険によるリスクヘッジも忘れられがちです。火災保険はもちろん、2025年度から販売が拡大している「家賃補償特化型保険」は、空室発生時に最大12カ月分の家賃を補填します。保険料は月額賃料の3〜5%とコスト増になりますが、キャッシュフローの底割れを防ぎ、金融機関の評価指標にプラスとなるため検討に値します。
設備更新計画は、長期修繕計画書を自ら作成することで可視化できます。エレベーター交換や屋上防水など大規模修繕は、費用が年間キャッシュフローを超えることもあります。10年先までの支出シミュレーションを行い、毎月の修繕積立金を設定することで、予見可能性を高めておくことが肝心です。こうした地道な管理が、最終的な売却価格を押し上げ、投資全体の利回り向上につながります。
まとめ
ここまで、一棟マンション 経営の基礎から資金調達、物件選定、運営管理までを俯瞰しました。高い収益性を狙うなら、厳しめのシミュレーションと長期修繕計画をセットにし、空室リスクや金利上昇に備える姿勢が不可欠です。まずは自己資金割合と物件タイプの条件を整理し、信頼できる専門家とともに事業計画書を作成してください。早めに行動を起こすことで、市場環境が大きく変わる前に有利な物件を確保できるでしょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp
- 不動産経済研究所 新築マンション市場動向 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 日本政策金融公庫 賃貸住宅向け融資情報 – https://www.jfc.go.jp
- 日本経済新聞 不動産投資関連ニュース – https://www.nikkei.com