マンション投資を始めたいものの、「管理費が高いと利回りが下がるのでは」と不安に感じる方は少なくありません。実際に筆者のもとへも「同じ価格帯なのに管理費が倍近く違う物件がある」といった相談が寄せられます。本記事では管理費の仕組みを整理し、投資家が取るべき比較基準を示します。読むことで、購入前に本当に見るべき数字が分かり、将来のキャッシュフロー悪化を防ぐ手立てが手に入ります。
そもそも管理費とは何か

ポイントは、管理費が「建物を日常的に維持するコスト」であり、投資家自身の収支に直結する固定費だという事実です。この費用は入居者からの家賃ではなく、オーナーが毎月支払う責任を負います。
まず管理費には共用部分の清掃や電気代、管理会社への委託料が含まれます。エレベーターやオートロックなど設備が多いマンションほど高額になりやすい構造です。また、管理組合の運営形態によっても差が出ます。自主管理より外部委託の方が負担が大きくなる傾向があり、手間を省くかコストを抑えるかの選択が迫られます。
さらに投資用ワンルームとファミリー向け大型マンションでは、管理費の算出単価が異なります。国土交通省の「マンション総合調査」では専有面積30㎡未満の物件で月額190円/㎡前後、80㎡超では150円/㎡前後が目安と示されています。面積が増えるほど単価は緩やかに下がりますが、総額は大きくなるため、表面利回りだけで判断すると計算が狂う恐れがあります。
一方で、管理費が高いからといって即座に避けると機会損失が生まれます。24時間ゴミ出しや宅配ボックスが完備された物件は入居者満足度が高く、平均空室期間が短いというデータもあります。つまり、利回り低下と空室リスク低下をどう天秤にかけるかが重要です。
管理費が収益に与える影響

実は管理費は、ローン返済と並ぶ支出項目であり、長期シミュレーションの精度を左右します。表面利回りを1%押し下げるほどのインパクトを持つケースも珍しくありません。
例えば東京23区の新築ワンルームを想定し、家賃9万円、管理費月1万2,000円、修繕積立金8,000円と設定します。年間の固定支出は24万円となり、家賃収入108万円に対して約22%を占めます。これが管理費8,000円の物件なら比率は18%に下がり、同じ家賃設定でも手取りは約5万円増える計算です。
しかし管理費単独で判断すると落とし穴があります。高い管理費が充実した設備と優秀な管理体制に裏打ちされていれば、家賃の下落スピードが緩やかになり、10年後の実質利回りで逆転する可能性があるからです。一方、設備は豪華でも管理組合が機能していないケースでは費用対効果が薄れます。
金融機関も管理費や修繕積立金の水準を重視しています。日本政策金融公庫は2025年度の融資審査基準で「維持管理コストが収支計画全体の20%を超える場合は慎重審査」と明文化しました。つまり、過度に高い管理費は融資面でもマイナス評価になり得るわけです。
管理費の相場と物件タイプごとの違い
まず押さえておきたいのは、築年数や規模によって相場が大きく変動する点です。一般に新築ほど管理費は高く、築10年前後でピークを迎え、その後は徐々に下がる傾向があります。
不動産経済研究所が2025年10月に公表したデータによれば、東京23区の新築分譲マンション平均価格は7,580万円で前年比3.2%上昇しました。これに伴い、管理費も平均で月250円/㎡前後に達しています。対して築20年以上の物件では180円/㎡程度が目安となり、同じ30㎡でも年間約2万5,000円の差になります。
設備面でもギャップがあります。単身向けワンルームでは内廊下・宅配ボックス・ディスポーザーの有無で月額2,000〜4,000円の差が生じます。ファミリー向け大型物件ではプールやフィットネスジムを備えることがあり、一戸あたり月1万円超となる例も報告されています。
下記は2025年時点の代表的な水準です。
- ワンルーム(20〜30㎡):190〜260円/㎡
- 2LDK(50〜60㎡):160〜220円/㎡
- 大規模タワー(70㎡超):200〜300円/㎡
あくまで平均値であり、立地や管理形態によって前後します。実際の購入時は必ず複数物件を比較し、自分の投資スタイルに合致するレンジを見極める必要があります。
管理費を抑える具体的な方法
重要なのは、購入前の調査と購入後の交渉の両面からアプローチすることです。管理費は「決まっているもの」と思われがちですが、実は改善余地があります。
購入前は、同エリア・同規模の相場と照らし合わせ、突出して高い場合には理由を確認します。管理委託契約を見せてもらうと、管理会社への報酬率が8%から5%へ下げられる可能性が見つかることがあります。また、長期修繕計画の内容が過大になっていないかを確認し、不要な項目が含まれていれば見直しを提案できます。
購入後にオーナーとして参加できるのが総会です。管理会社の変更議案や委託業務の削減を提案することで、数年で5〜10%のコスト削減が達成される例があります。筆者が携わった渋谷区の築15年物件では、委託内容を精査し、夜間警備を機械警備に切り替えた結果、管理費が月2,500円下がりました。空室率に影響を与えず費用だけが減ったため、実質利回りが0.4ポイント改善しました。
それでも管理費が高いままなら、家賃アップでの相殺を検討します。共用部のリニューアルやWi-Fi無料化など付加価値を付け、2,000円の家賃増額に成功した事例も多いです。管理費を単に削るのではなく、投資回収と入居者満足のバランスを取る視点が欠かせません。
物件選びと長期的な運用戦略
ポイントは、管理費を単独で評価するのではなく、ライフサイクルコスト全体で判断することです。購入後20年間のキャッシュフローを比較すれば、見た目の利回り差が逆転するケースもあります。
投資初心者が取り組みやすいのは、管理費と修繕積立金の合計が家賃収入の20%以内に収まる物件です。これを超えるとローン返済や突発的な修繕が重なった際にキャッシュアウトが発生しやすく、精神的な負担も大きくなります。一方で、将来的な資産価値の伸びを狙ってタワーマンションに投資する戦略もあり得ます。その場合は管理費の上昇余地と賃料上昇余地を同時にシミュレーションし、資産入替の出口戦略を描くことが欠かせません。
ファイナンス面では、2025年度も低金利環境が続いていますが、固定金利と変動金利の差は縮小傾向にあります。管理費が高めの物件ほど返済比率が高くなりがちなので、金利上昇局面での耐性を確かめるため、固定金利を選ぶ投資家が増えています。日本銀行のデータによると、固定金利を選択した個人投資家は前年から12%増加しました。
最後に「比較 マンション投資 管理費」という視点で物件を眺めると、自分の許容できるリスクと手間が明確になります。同じ築年数・立地でも管理費の差は年間十万円規模になることがあり、早期に気付けば交渉や改善で利益を守る余地が広がります。
まとめ
本記事では管理費の仕組みと相場、収益への影響、そしてコストを抑える実践的な方法を解説しました。結論として、管理費は単に安ければ良いわけではなく、設備や管理体制とのバランスを見極める姿勢が必要です。そのうえで家賃収入に対する管理費比率を20%以内に保ち、長期シミュレーションで耐性を確認すれば、安定したマンション投資が見えてきます。購入前の細かな比較と購入後の継続的な改善こそが、10年後のキャッシュフローを大きく左右します。まずは気になる物件の管理費明細を取り寄せ、他物件と並べて比べることから始めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 マンション総合調査2024年度版 – https://www.mlit.go.jp
- 不動産経済研究所 新築マンション市場動向2025年10月 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 日本銀行 金融システムレポート2025年4月 – https://www.boj.or.jp
- 日本政策金融公庫 2025年度 不動産投資融資基準 – https://www.jfc.go.jp
- 東京都都市整備局 マンション管理状況レポート2025 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp