不動産投資を始めたばかりの方は、家賃が入る喜びと同時に「確定申告は何から手を付ければいいのか」という不安に直面します。税金の手続きが複雑だと感じると、投資自体を躊躇してしまうかもしれません。しかし基本を押さえれば、数字に強くなくてもスムーズに申告でき、節税メリットまで享受できます。本記事では2025年12月時点の最新ルールを踏まえ、確定申告の流れと要点を分かりやすく解説します。読み終えるころには、手続きの全体像と準備すべき書類が明確になり、翌年の申告に自信をもって臨めるはずです。
確定申告が必要になるタイミングを理解する

まず押さえておきたいのは、どの段階で確定申告義務が生じるかという基本です。不動産所得が年間20万円を超えると、会社員であっても原則として申告が必要になります。一方、赤字でも青色申告を選択すれば翌年以降へ損失を繰り越せるため、申告しておく価値は十分あります。
国税庁の統計によると、2024年分の不動産所得者の約65%が給与所得と並行して申告していました。つまり多くの投資家が本業を持ちながら手続きを行っているため、会社員だから難しいという思い込みは不要です。また、家族名義で物件を購入し、実際の管理を自分が行う場合も所得が誰に帰属するかがポイントになります。名義人と実質的な管理者が異なると税務調査で指摘されやすいため、契約書や口座の整合性をあらかじめ確認しておきましょう。
収入と経費を正しく集計する方法

重要なのは、家賃収入と必要経費をもれなく整理することです。家賃は銀行口座へ振り込まれた金額だけでなく、更新料や駐車場代などの付随収入も含めます。一方で、管理委託料や固定資産税、火災保険料などは経費として控除できます。
経費計上の可否で迷いやすいのが、水道光熱費や通信費です。物件管理のために使用した割合を合理的に按分し、領収書を保管しておくと安心です。また、入居募集の広告料は支出した年に全額経費計上できるため、成約実績と紐づけて管理会社の請求書を保存しましょう。国税庁の「経費に関するFAQ」には、具体的な根拠条文が掲載されているので参照すると判断に迷いません。
最後に、収入と経費を月次で記帳しておくと、決算期にまとめて集計する負担が大幅に減ります。クラウド会計ソフトを使えば、領収書をスマホで撮影するだけで自動仕訳される機能もあり、経費漏れを防ぐ効果が高まります。
減価償却と青色申告のメリットを最大化する
ポイントは、建物と設備を減価償却費として計上し、課税所得を圧縮する仕組みを理解することです。木造アパートなら法定耐用年数は22年、RC造マンションなら47年ですが、中古物件では残存年数や簡便法を用いて短期間で償却できる場合があります。
さらに、青色申告特別控除65万円(2025年度も継続)は電子帳簿保存とe-Tax提出が条件です。帳簿を適切に作成すれば、給与所得と合算する場合でも控除額がそのまま節税につながります。特に所得税率が20%の層なら、控除だけで13万円以上の税負担軽減効果が期待できます。
加えて、青色申告者は家族へ支払う給与を「専従者給与」として経費にできる点も見逃せません。例えば配偶者が物件清掃や入金確認を担当し、年120万円を支払えば、その分所得を減らせるわけです。ただし、業務実態と給与水準が社会通念上妥当かどうかが審査ポイントになるため、日報や作業写真を残しておくと説得力が増します。
2025年度税制で押さえるべき変更点と注意点
実は2025年度から、電子帳簿保存法の宥恕措置が終了し、メール添付の請求書もPDF保存ルールの対象となりました。期日までにデータ保存要件を満たさない場合、青色申告特別控除が55万円に減額されるため注意が必要です。
また、政府は空き家対策として「特定空き家の固定資産税増額措置」を強化しています。所有戸数が多い投資家は、長期間空室のまま放置すると翌年度の税負担が増える可能性があるため、リフォームや売却を含めた活用計画を早めに立てましょう。なお、本制度は自宅用物件だけでなく投資用物件も対象になる点が特徴です。
一方で、住宅ローン減税は自宅用の制度であるため、投資用物件には適用されません。投資家向けの減税策としては、耐震や省エネ性能を高めることで取得税や不動産取得税の軽減措置を受けられるケースがあります。ただし、2025年12月時点で適用期限が明示されているため、工事発注時期と登記完了日を税理士と確認しておくと安心です。
ミスを防ぐための準備とスケジュール管理
まず、1月中に前年分の通帳コピーと領収書を整理し、2月上旬には試算表を作成すると余裕を持って書類チェックができます。e-Tax送信は混雑する3月中旬を避け、2月下旬の夜間に行うと接続エラーのリスクが小さくなります。
提出書類でよく漏れるのが、減価償却資産の明細書と借入金の年末残高証明書です。金融機関によっては郵送が遅れることもあるため、1月のうちに再発行を依頼しておくと安心です。また、青色申告の場合は総勘定元帳と仕訳帳を10年間保存する義務があります。クラウド会計なら電子保存が容易ですが、バックアップを外部ストレージにも取っておくと災害時のデータ消失を防げます。
さらに、税理士へ依頼する場合でも自分で基礎資料を整えれば報酬は抑えられます。2025年の全国平均では、不動産所得の申告報酬は1物件あたり約8万円ですが、領収書のスキャンまで終えて渡すと1〜2万円下がる事例が多いです。手間とコストのバランスを考え、自分に合う役割分担を選びましょう。
まとめ
ここまで「不動産投資 確定申告」に必要な基本から2025年度の最新ルールまで解説しました。ポイントは、収入と経費を正確に把握し、減価償却や青色申告特別控除を活用して課税所得を抑えることです。そして電子帳簿保存法への対応や提出期限を守ることで、不要なペナルティを回避できます。早めに資料を整理し、クラウド会計や専門家の力も取り入れれば、確定申告は決して難しくありません。今回のガイドを参考に、安心して本業と投資の両立を進めてください。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 財務省(税制改正大綱2025) – https://www.mof.go.jp
- 総務省(住民基本台帳人口移動報告2024) – https://www.soumu.go.jp
- 国土交通省(不動産価格指数2025年版) – https://www.mlit.go.jp
- 独立行政法人住宅金融支援機構(住宅市場動向調査2024) – https://www.jhf.go.jp