不動産投資の世界では「利回りが高い物件ほど良い」とよく言われます。しかし実際に購入してみると、広告に載っていた数字と手取りの収益が大きく違うケースも少なくありません。そこで本記事では、収益物件 高利回り物件を選ぶ際の基本知識から、2025年12月時点の最新データを交えたエリア戦略、融資や制度活用のポイントまで詳しく解説します。読み終えるころには、利回りの「数字の裏側」を読み解き、将来の安定収益につながる判断軸を身につけられるはずです。
高利回りの仕組みを正しく理解する

まず押さえておきたいのは、表面利回りと実質利回りの違いです。広告に大きく表示されるのは表面利回りですが、手残りを左右するのは運営コストを差し引いた実質利回りになります。
表面利回りは「年間家賃収入 ÷ 物件価格」で計算されます。対して実質利回りは管理費・修繕費・固定資産税などを差し引いて算出します。例えば東京都心で表面4.5%のワンルームを買っても、管理委託費が8%、修繕積立金が月1万円かかれば、手取りは3%台に落ちることが珍しくありません。
一方で、郊外のアパートで表面利回り7%を確保し、入居率を95%前後で保てれば、実質6%台をキープできる例もあります。つまり高利回り物件と聞いたときには、「経費率はいくらか」「将来の大規模修繕はいくらかかるか」を必ずセットで確認する必要があります。
加えて、長期で見た賃料下落も重要です。国土交通省の家賃動向調査によると、木造アパートの20年後の平均賃料は新築時の約80%になります。利回り計算をする際は、この下落率を織り込んでシミュレーションしなければ、想定より早くキャッシュフローが悪化する恐れがあります。
エリア選定で利回りを底上げするコツ

実は同じ金額を投じても、エリア次第で利回りとリスクのバランスは大きく変わります。2025年の日本不動産研究所データによれば、東京23区の平均表面利回りはワンルーム4.2%、アパート5.1%です。
東京23区は空室リスクが低く、賃料下落も緩やかです。その代わり物件価格が高いため、自己資金が限られる初心者にはハードルが高い側面があります。そこで注目されるのが、政令指定都市までの通勤圏や、人口横ばいの地方中核都市です。人口の転入が微増傾向にある駅徒歩10分圏の築浅アパートであれば、表面利回り6〜7%を狙いながら、空室率も抑えやすくなります。
ただし、郊外でも乗降客数が減少している駅周辺は要注意です。総務省の国勢調査を見ると、人口減少が始まった市区町村は賃貸需要の落ち込みも早い傾向が出ています。現地調査では昼夜の人通りや近隣の再開発計画を確認し、5年後10年後の需給バランスを想像する姿勢が欠かせません。
また、エリア選定では自治体の政策も見逃せません。例えば横浜市は民間賃貸住宅への耐震改修補助を拡充し、条件を満たせば最大200万円の補助金を2025年度も継続しています。こうした制度を活用できる地域なら、改修後の競争力アップと補助金によるコスト削減で、実質利回りを引き上げる効果が期待できます。
物件タイプ別に見る利回りの傾向
ポイントは、物件タイプごとに利回りの水準と維持コストが大きく異なる点です。タイプ別の特徴を理解すれば、自分の投資目的に合う選択肢が見えてきます。
区分マンションは一室単位で買えるため、初期資金が少なくても始められます。ただし修繕積立金と管理費が毎月発生するため、表面利回りが4%台ではキャッシュフローがほぼ残らないケースがあります。長期投資で資産価値の目減りを抑えたい人向きと言えるでしょう。
一棟アパートは利回りが高い反面、空室が出ると収入が一気に下がります。2025年時点で木造アパートの平均表面利回りは全国でおよそ7%ですが、入居率が90%を切ると実質利回りは5%前後まで下落します。そのため管理会社選びと入居付けの仕組みづくりが生命線となります。
築古RC(鉄筋コンクリート)マンション一棟は、減価償却を活用して課税所得を圧縮できるメリットがあります。耐用年数を過ぎた物件なら4年の定額法で大きく経費計上できるため、税引き後利回りを高めやすいのです。ただし修繕費が高額になりがちなので、専門家による劣化診断で10年分の修繕計画を見積もっておく必要があります。
このように、物件タイプ別の収支構造を理解したうえで、「利回りの数字」と「想定コスト」をセットで比較することが、高利回り物件を選ぶ近道になります。
購入後に利回りを改善する運営術
重要なのは、購入して終わりではなく、運営で利回りを引き上げる発想です。運営改善は小さな工夫の積み重ねで大きな効果を生みます。
まず家賃設定を見直します。近隣相場と同額でも、Wi-Fi無料やスマートロック導入で付加価値を付けると、月額3000円程度の上乗せが可能になることがあります。年間3万6000円の増収は、表面利回り6%の区分マンションなら0.3ポイントの改善に相当します。
次に空室期間の短縮です。リーシングを管理会社任せにせず、写真撮影や物件紹介文章の質を自らチェックします。国土交通省の「賃貸取引に係る情報ガイドライン」では、設備や更新費用を明示した募集広告が早期成約につながると報告されています。情報開示を徹底することで、内見数が2倍に増えた例もあります。
また、運営コストの削減も見逃せません。相見積もりを取るだけで、定期清掃費が月5000円下がることは珍しくありません。年間6万円のコスト削減は、先ほどの増収と合算すると利回りをさらに0.2ポイント押し上げる計算になります。
結果として、購入時に表面6.5%だった物件が、運営改善を重ねることで実質7%台に伸びるケースもあります。高利回りは「買った瞬間」ではなく「運営し続ける姿勢」で完成する点を覚えておきましょう。
2025年度の融資環境と活用可能な制度
まず、2025年12月時点で主要地銀の投資用不動産ローン金利は変動1.9%前後、審査の厳しさはコロナ禍以前に戻りつつあります。フルローンは依然として難しいものの、自己資金1〜2割を用意すれば、年収600万円台でも融資が通る事例が増えています。
金融庁の「主要行貸出動向」によると、自己資金比率を上げると融資金利が0.2〜0.4%下がる傾向が見られます。金利差0.3%は、残高5000万円・30年返済なら総返済額で約250万円の差になります。つまり高利回り物件を生かすには、資金計画と金利交渉がセットで必要です。
制度面では、投資用でも使える国交省の「既存賃貸住宅省エネ改修支援事業」(2025年度)が継続中です。省エネ性能を高める改修で、上限150万円の補助を受けられます。断熱改修や省エネ給湯器の導入で光熱費が下がり、入居者満足度が向上すれば、退去抑制と家賃アップの両方に寄与します。
なお、住宅ローン控除や子育て世帯向け補助は自宅購入向け制度であり、投資用物件には適用されません。混同するとキャッシュフロー計画が狂うので注意しましょう。最新情報は必ず自治体と金融機関に直接確認し、適用条件を文書で残すことがリスク管理になります。
まとめ
本記事では、収益物件 高利回り物件を選ぶうえで欠かせない利回り計算の基本、エリアと物件タイプの特徴、運営改善、そして2025年度の融資環境と補助制度について解説しました。数字だけでなく経費や将来の賃料下落を織り込むことで、購入前のシミュレーション精度が格段に上がります。また、購入後の運営努力で利回りが伸びる余地も大きいことを具体例で示しました。ぜひ本記事で得た視点を生かし、物件選定から運営まで一貫した戦略で一歩を踏み出してみてください。継続的な学習とデータ検証を続ければ、安定したキャッシュフローと資産形成は十分に実現可能です。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
- 総務省 統計局 – https://www.stat.go.jp
- 金融庁 主要行等貸出動向 – https://www.fsa.go.jp
- 不動産流通推進センター – https://www.retpc.jp