不動産を相続するとき、「評価額がいくらになるのか分からない」という不安を抱く人が少なくありません。土地や建物の価格は市場の動きだけでなく、税法上のルールや行政データによっても決まります。本記事では、不動産 相続 評価額計算の基本から、2025年度の最新基準、そして評価を適正かつ有利に進めるコツまでを丁寧に解説します。読み終えた頃には、税理士や不動産会社と話す際に必要な基礎知識が身につき、相続手続きを落ち着いて進められるでしょう。
相続税評価額の仕組みを押さえよう

重要なのは、相続税で使われる評価額が「時価」ではなく、法律で定められた算定基準に基づく点です。国税庁が発表する「路線価」や固定資産税評価額がベースとなり、これらは公的データのため自分で確認できます。
まず土地は、路線価方式または倍率方式で評価します。前者は道路ごとにつけられた1平方メートル当たりの価格に地積を掛け、後者は固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける仕組みです。建物は固定資産税評価額をそのまま使うため、建築費や築年数ではなく自治体の評価額が軸になります。
また相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人」の計算式で、2025年度も変更ありません。この控除額を超えない限り申告義務は発生しませんが、複数の不動産を持つ場合は合計評価額が意外に膨らむので油断は禁物です。つまり評価額を正しく把握することが、相続税対策の第一歩となります。
土地の評価方法を理解する

まず押さえておきたいのは、土地評価には「形」「間口」「奥行」など多くの補正がある点です。たとえば間口が狭い旗竿地は、路線価から20〜30%の減額率が適用されるケースがあります。これは「同じ面積でも活用しにくい土地は低く評価する」という税法の考え方です。
さらに奥行が長すぎる場合や、道路との高低差が大きい場合も補正率が下がります。国税庁の路線価図には補正率一覧が添付されているため、対象地の形状を地図と照合しながら確認すると具体的な数字が見えてきます。
一方で、市街化調整区域など建築制限が厳しい土地は、倍率方式が適用されることがあり、倍率は地域ごとに0.7〜1.3倍程度と幅があります。自治体の固定資産税評価額通知書を手元に置き、国税庁の「評価倍率表」を照らし合わせると、おおむねの評価額を自力で試算できます。業者に依頼する前に試算しておくと、提示された数字が妥当かどうか判断しやすくなるでしょう。
建物の評価と減価要因
ポイントは、建物評価が築年数に比例して下がるわけではない点です。建物価値は固定資産税評価額に依存し、評価替えは原則3年ごとに行われます。そのため築20年の木造住宅であっても、固定資産税評価額が残っていれば一定額で計上されます。
減価要因として代表的なのは「区分所有建物における共用部分の評価」「耐震基準適合証明」の有無です。マンションの場合、専有面積の割合で建物全体の固定資産税評価額を按分するため、同じ専有面積でも総戸数が多いと一戸あたりの評価額が下がる場合があります。また1981年以前の旧耐震基準物件でも、耐震補強工事を行い証明書を取得すると、固定資産税評価額が減額される自治体が増えています。
店舗や賃貸アパートは「貸家建付地(かしやたてつけち)」の扱いとなり、土地評価額が約20%下がる特例があります。つまり賃貸経営中の建物は、空室率が多少あっても借家権割合30%を差し引き評価できる点が見逃せません。
評価額を抑える実務上のテクニック
実は、現状を整理するだけでも評価額を抑えられるケースが多々あります。未登記家屋を正しく登記すると、固定資産税評価額が想定より低く出る場合がありますし、建蔽率を超過した増築部分は評価対象外となることもあるからです。
さらに小規模宅地等の特例は2025年度も継続しており、居住用宅地は330平方メートルまで80%減額、貸付事業用宅地は200平方メートルまで50%減額を受けられます。ただし適用条件として「相続開始直前に被相続人が居住していた」など細かい要件があるため、専門家への確認は欠かせません。
加えて令和6年度税制改正で導入された「配偶者居住権」は、2025年も活用可能です。配偶者が自宅に住み続ける権利を分割し、居住権部分を評価額から控除できる仕組みで、残余の所有権は大幅に圧縮されます。家族構成次第では相続税を数百万円単位で軽減できるため、遺言作成の段階から検討すると効果的です。
2025年度の制度変更と注意点
まず知っておきたいのは、2025年度から相続登記の義務化が全面施行される点です。相続から3年以内に登記申請をしないと10万円以下の過料が科されます。登記を怠ると不動産の評価額が確定せず、次世代への相続で混乱が拡大するリスクがあります。
また、国税庁は評価基準の透明性向上を目的に、AIを用いた路線価の自動算定システムを試験導入しています。将来的に補正率の見直しが進む可能性があり、最新データを随時チェックすることが必要です。
固定資産税の負担調整措置についても、2025年度は据え置きと発表されていますが、次期改定では商業地の負担水準が上がる見通しです。そのため市街地のテナントビルを所有する場合、早めに減価償却や修繕計画を立てて固定資産税評価額の上昇に備えると安心です。
結論として、制度は毎年少しずつ変わるものの、基本の計算式と評価手順を理解していれば大きく迷うことはありません。定期的に公的サイトを確認し、数字の裏付けを持つ姿勢が将来の節税効果につながります。
まとめ
この記事では、不動産 相続 評価額計算の全体像と2025年度の最新ルールを解説しました。路線価と固定資産税評価額を基盤に、土地は形状補正、建物は固定資産税評価額を用いる点を押さえ、特例や減額要因を漏れなく適用することが重要です。相続登記義務化や配偶者居住権など新制度にも目を向け、早めに専門家と連携すれば、評価額をコントロールしながら家族の資産を守れます。まずは自身の不動産データを集め、簡易試算から着手してみてください。
参考文献・出典
- 国税庁「財産評価基本通達」 https://www.nta.go.jp
- 国税庁「路線価図・評価倍率表」 https://www.rosenka.nta.go.jp
- 総務省「固定資産税に関する調査」 https://www.soumu.go.jp
- 国土交通省「土地総合情報システム」 https://www.land.mlit.go.jp
- 全国地価調査(国土交通省)https://www.mlit.go.jp
- 日本銀行「資金循環統計」 https://www.boj.or.jp