不動産の税金

不動産 相続 贈与vs相続 2025年版・賢い資産承継の選び方

不動産を家族に残す方法として「相続」と「贈与」のどちらが得なのか、悩んでいる方は多いはずです。税金や手続きが複雑に感じられ、専門家に相談する前に基礎を知りたいという声もよく耳にします。本記事では、2025年12月時点で有効な制度と最新の税制改正を踏まえ、「贈与vs相続」の比較ポイントを丁寧に解説します。読み終えれば、自分の家族構成や資産規模に合った最適な承継プランの方向性が見えてくるでしょう。

贈与と相続の基本を押さえる

贈与と相続の基本を押さえるのイメージ

ポイントは、同じ不動産の移転でも課税タイミングと税率が大きく異なる点を理解することです。まず制度の概要を整理し、後の節で実務的な比較へつなげます。

贈与とは、生前に財産を無償で渡す契約行為を指します。贈与税は毎年の合計贈与額に課税され、基礎控除の110万円を超える部分に累進税率が適用されます。一方、相続は死亡に伴う財産移転であり、相続税は遺産総額から基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を差し引いた課税遺産に対してかかります。

両税は「課税ベースをどう捉えるか」が大きな違いです。また、2025年度税制では生前贈与の持ち戻し期間が最長7年へ拡大され、相続開始前3年以内の贈与だけが加算対象だった従来ルールから変更されています。つまり、多額の生前贈与で節税を図るには、より早いタイミングから計画的に動く必要があるわけです。

さらに、相続時精算課税制度を選ぶと贈与税が一時的に非課税(累計2,500万円まで)となり、相続時にまとめて精算します。メリットは大きいものの、評価額の変動リスクや特定贈与者への限定適用など注意点が多く、後述するシミュレーションが欠かせません。

2025年度税制改正で変わったポイント

2025年度税制改正で変わったポイントのイメージ

まず押さえておきたいのは、生前贈与に関するルールが2024年以降段階的に変わり、2025年時点で完全適用になっていることです。改正の狙いは、贈与税と相続税をより一体的に捉え、極端な節税スキームを抑制する点にあります。

今回の目玉は「持ち戻し期間の拡大」です。具体的には、相続開始前4~7年内に行った贈与のうち、年間110万円を超えた部分が相続財産に加算されます。国税庁発表資料によれば、これにより課税対象が平均10~15%増える世帯が多いと見込まれています。ただし、基礎控除内に収まる家庭では増税インパクトは限定的です。

一方で、相続時精算課税の利便性は高まりました。贈与時の申告を簡素化する「源泉徴収方式」が導入され、提出書類が従来の約半分に削減されています。また、適用者を60歳以上→65歳以上の親からに拡大し、高齢の被相続人に配慮する形となりました。

注意すべきは、住宅取得資金の非課税特例や教育資金一括贈与の特例など、期限付き制度が存在する点です。2025年度においては、住宅取得資金贈与の非課税枠(最大1,000万円・省エネ住宅で1,500万円)は引き続き有効ですが、2026年末が現行期限と示されています。つまり、利用を検討するなら早めの行動が求められるわけです。

税額シミュレーションで見る贈与vs相続

重要なのは、理論だけでなく具体的な金額で比較することです。ここでは、都内3,000万円の区分マンションを長男へ承継するケースをモデルにシミュレーションします。税率は2025年時点のものを使用し、単純化のため諸費用は除外します。

まず贈与の場合、マンションの評価額が固定資産税評価額2,100万円と仮定します。110万円を差し引いた1,990万円に贈与税が課され、累進税率は45%(控除265万円)となります。結果として贈与税は約635万円になります。さらに登録免許税や不動産取得税が発生し、総負担は約700万円に達します。

相続の場合はどうでしょうか。遺産総額が基礎控除を超えない単独相続であれば相続税はゼロです。仮にほかに金融資産があり、課税遺産2,000万円と想定しても、子1人なら税率10%、控除50万円で相続税は150万円程度に収まります。つまり、このモデルでは相続のほうが税負担が小さくなるわけです。

ただし、評価額が今後大幅に値上がりする可能性が高いエリアなら、早めに贈与しておくことで将来の相続税評価を抑えられる場合もあります。相続税評価は取得時ではなく死亡時の評価額で決まるため、上昇リスクをどう読むかが分かれ目になります。

結論として、税額比較は「現在の評価額」「将来の値上がり余地」「家族全体の課税状況」という3要素をセットで見ることが不可欠です。シミュレーションソフトや税理士の試算を活用し、数字に基づいた判断を心がけましょう。

手続きとコストの現実的な違い

実は、税額だけでなく手続きの手間やランニングコストも見逃せません。贈与では契約書の作成、公証人の確定日付取得、翌年3月15日までの贈与税申告が必須です。登録免許税は固定資産税評価額×2%、不動産取得税は同評価額×3%(住宅用特例で×1.5%)がかかり、納税時期も分散しています。

一方、相続手続きは戸籍収集や遺産分割協議書の作成に時間を要します。それでも、相続登記の登録免許税は0.4%と贈与より低率です。また、2024年施行の相続登記義務化により、死亡後3年以内の登記申請が義務づけられ、怠ると過料の対象になります。専門家費用を含めると、相続手続き総コストは概ね30万〜60万円が目安です。

定期的な管理費や修繕積立金は名義人に請求されるため、贈与完了と同時に子へ移転します。被相続人が支払いを続けても問題はありませんが、税務上は「負担付贈与」とみなされる可能性があるため、支払者変更も忘れずに行うことが望ましいです。

こうしたプロセスの煩雑さは、家族内コミュニケーションを円滑に保つうえでも重要です。特に兄弟姉妹がいる場合、贈与で一人を優遇すると後の遺産分割でもめるリスクが高まります。遺言書を併用する、生命保険金で代償分割を用意するなど、手続きと感情面の両面から対策を講じることが求められます。

不動産評価の引き下げテクニックと注意点

まず押さえておきたいのは、同じ物件でも評価方法により課税額が変わることです。相続税評価は国が定める「路線価」や「倍率方式」で算定し、市場価格の7〜8割程度に下がるのが一般的です。区分所有マンションでは、建物部分の減価償却が進むほど評価が下がりやすく、築20年以上なら時価の半分以下になる例もあります。

贈与時に適用される固定資産税評価額は、市場価格の6割前後が目安です。このため、築古マンションを贈与すれば相続時より有利に見えるケースがあります。ただし、賃貸中物件では「貸家建付地評価」が適用され、土地部分がさらに20%程度下がる半面、家賃収入が続く点をどう評価するかが議論となります。

ここで注意が必要なのは、意図的な評価引き下げを狙った過度なリフォームや短期売買です。国税庁は2023年以降、いわゆる「タワマン節税」を封じるため、高層マンションの階層格差補正率を導入しました。評価差が著しい場合、税務調査で否認されるリスクがあります。

ポイントは、適正評価の範囲で減額効果を得ることです。具体的には、区分マンションなら管理組合資料を整え、耐震診断報告書を添付することで減価要因を客観的に示せます。戸建ての場合は、地盤調査や老朽化写真を添えて固定資産税評価の減額申請を行うと認められる確率が高まります。要するに、裏付けとなる書類をそろえたうえで専門家と連携することが賢明です。

まとめ

贈与と相続のいずれを選ぶかは、税負担だけでなく家族のライフプランや不動産の将来価値を総合的に考える必要があります。2025年度税制改正で贈与の持ち戻し期間が延びたため、早めの資産移転が従来以上に重要になりました。一方で、相続の基礎控除を活用すれば、ある程度の資産規模でも税負担を抑えられる可能性があります。まずは簡易シミュレーションで方向性をつかみ、必要に応じて税理士や不動産鑑定士に相談しながら具体的なプランを練りましょう。行動を先延ばしにせず、家族全員が納得できる承継計画を早期に整えておくことが、将来のトラブル回避と節税の両立につながります。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 財務省「2025年度税制改正の概要」 – https://www.mof.go.jp
  • 総務省統計局「住宅・土地統計調査」 – https://www.stat.go.jp
  • 不動産研究所「全国賃料指数(2025年版)」 – https://www.reins.or.jp
  • 法務省「相続登記義務化に関するFAQ」 – https://www.moj.go.jp

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