不動産の税金

不動産 相続と生前贈与の基本ガイド

不動産を持つと、いつか必ず「相続」や「生前贈与」をどうするかという問題に直面します。税金の違いを理解しないまま放置すると、遺された家族が高額な相続税に悩むケースも少なくありません。また早めに手を打てば、納税資金の確保や節税の選択肢が広がります。本記事では不動産 相続 生前贈与の基礎から2025年度の最新税制までを整理し、初心者でも具体的な行動がイメージできるよう解説します。

相続と生前贈与の違いを整理する

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まず押さえておきたいのは、相続と生前贈与では課税のタイミングと計算方法が大きく異なる点です。相続税は被相続人の死亡時にすべての遺産を合算して計算し、基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人」の式で決まります。一方、生前贈与では贈与した年ごとに贈与税を計算し、年間110万円までは非課税となる暦年課税が基本です。

さらに2025年度時点で生前贈与は「相続開始前7年以内の贈与を相続財産に加算する」制度が導入されています。以前の3年から期間が拡大したため、早めに計画を立てる必要が高まりました。つまり、生前贈与は相続税対策になる一方で、タイミングを誤るとかえって税負担が増えることもあるのです。

2025年度税制のポイント

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重要なのは、2025年度の税制改正で「資産移転の時期の選択に中立的な課税」を目指す方向がより鮮明になった点です。贈与税の税率構造自体は変わらないものの、相続前7年加算が恒久化されたことで、贈与と相続を一体で考える姿勢が求められます。また贈与税の申告は電子申告が基本となり、国税庁のe-Taxを用いれば添付書類の一部を省略できるようになりました。

一方で相続税の配偶者控除(取得財産のうち1億6,000万円または法定相続分まで非課税)や小規模宅地等の特例(最大80%評価減)は2025年度も存続しています。これらの特例を組み合わせることで、実効税率を大幅に下げられるケースが多く見られます。加えて、不動産取得税や登録免許税は相続時に課税されないため、相続による取得のほうが取得コストを抑えられる側面も覚えておきましょう。

不動産を生前贈与する際の評価と手順

ポイントは、贈与税の課税対象となる評価額を正しく把握することです。不動産の評価は原則として「固定資産税評価額」に基づきますが、住宅用地の場合は路線価と比べ2〜3割低いことが多いため、同じ土地でも評価額が大きく変わる可能性があります。生前贈与ではこの評価額がそのまま贈与税計算のもとになるので、最新の評価証明書を市区町村で取得し確認することが第一歩です。

実務の流れは次のとおりです。最初に司法書士へ名義変更登記の依頼をし、贈与契約書を作成します。登記が完了したら、贈与を受けた人が翌年3月15日までに贈与税の申告を行います。電子申告を使えば控除証明書や評価証明書をPDF添付でき、窓口に行く手間を省けます。なお建物を贈与すると不動産取得税が課税される点も忘れがちなので注意が必要です。

相続発生後に活用できる特例

実は、相続が発生してからでも節税の余地は残っています。その代表例が小規模宅地等の特例で、自宅や賃貸用物件の評価額を最大80%減額できます。たとえば固定資産税評価額5,000万円の自宅を配偶者が相続した場合、評価額は1,000万円まで下がり、基礎控除内に収まるケースも珍しくありません。

また、物件の修繕や解体費用を相続財産から控除できることも見落とされがちです。国税庁通達では、死亡時点で必要と認められる未払費用は債務控除の対象になると定められています。老朽化した賃貸アパートの場合、数百万円の修繕見積書を取得しておけば相続税を減らしつつ物件価値を維持できるため一石二鳥です。

賢いプランニングの進め方

まず家族全員で財産リストを共有し、おおよその相続税額をシミュレーションすることが肝心です。シミュレーションには国税庁の「相続税・贈与税の税額試算コーナー」を活用すると、評価額と控除額を入力するだけで大まかな納税額がわかります。その結果を踏まえ、生前贈与で不動産を移転するか、相続特例を使うかを比較しましょう。

次に専門家を選ぶ段階では、税理士と司法書士を同時に紹介してくれる不動産会社を利用すると手続きがスムーズです。さらに、相続開始前後に慌てないよう、納税資金を確保するための生命保険や不動産売却の出口戦略も検討します。つまり、相続と生前贈与は単体で考えるのではなく、家族のライフプランと資産全体を踏まえて総合設計することが成功への近道なのです。

まとめ

不動産 相続 生前贈与をめぐる税制は、2025年度から相続開始前7年以内の贈与加算など一体課税の色合いが強まりました。しかし小規模宅地等の特例や配偶者控除は依然有効で、適切に利用すれば税負担を大幅に抑えられます。大切なのは評価額を正確に把握し、タイミングと手続きを間違えないことです。家族で情報を共有し、早めに専門家へ相談することで、安心して資産を次世代へ引き継ぎましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 土地価格指数 – https://www.stat.go.jp
  • 法務省 登記事務取扱手続 – https://www.moj.go.jp
  • e-Tax国税電子申告・納税システム – https://www.e-tax.nta.go.jp

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