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不動産投資 エリア 札幌で狙うべき地域と物件選び

札幌で不動産投資を始めようと考えているものの、「人口が減る北海道で本当に貸し手は見つかるのか」「雪国ならではの修繕費が心配だ」と感じる方は少なくありません。しかし実際の札幌市は、道内で唯一人口が増え続け、転入者の四割以上が単身世帯というデータもあります。この記事では、札幌の最新市場動向を踏まえたエリア選びの考え方、物件タイプごとの利回り、2025年度の税制優遇までを体系的に解説します。読み終えるころには、札幌のどこにどのような物件を持つべきか、自信を持って判断できるようになるはずです。

札幌市場は今も成長しているのか

札幌市場は今も成長しているのかのイメージ

まず押さえておきたいのは、札幌市の人口と世帯構成の現状です。総務省の2025年版住民基本台帳によると、札幌市の人口は196万人を超え、5年連続で微増しています。特に20〜39歳の転入超過が続き、単身世帯比率は54%に達しました。この若い層の流入が賃貸需要を下支えし、家賃相場は2020年比で平均3%上昇という結果が出ています。

一方で、新築マンションの供給戸数は年間約4,000戸で横ばいです。賃貸需要の伸びに供給が追いつかないため、空室率は日本賃貸住宅管理協会の調査で5.4%と、政令指定都市平均より1ポイント低い水準にあります。つまり、適切な立地と賃料設定を行えば、長期の空室リスクは比較的小さいと言えます。

雪害による修繕費を心配する声もありますが、市が推奨する高断熱仕様物件は暖房コストが従来比25%削減でき、維持費を抑えやすい点が特徴です。加えて、2025年度の札幌市住宅エコ改修補助金が継続しており、断熱改修費の三分の一(上限60万円)が補助対象となります。

中央区と周辺区のエリア特性

中央区と周辺区のエリア特性のイメージ

重要なのは、札幌と言っても区ごとに需要構造が異なる点です。中央区はオフィスと繁華街が集まり、地下鉄南北線沿線のワンルームが常に高稼働です。平均表面利回りは4.5%と低めですが、家賃下落が小さく、出口売却時も値崩れしにくい特徴があります。

一方で北区や豊平区は、大学や専門学校が多いため学生需要が旺盛です。築20年前後の木造アパートでも5.5〜6.5%の利回りを確保しやすく、投資効率を重視するなら検討の価値があります。さらに東区は物流系企業の寮需要が増え、40㎡前後の1LDKが狙い目です。

ただし西区や南区は地下鉄駅から遠いエリアが多く、車移動が前提になります。駐車場付き物件であれば空室対策が可能ですが、雪かきや除雪費の負担も増えるため、想定利回りに5%程度の修繕積立を上乗せしてシミュレーションしておくと安心です。

物件タイプ別に見る利回りとリスク

ポイントは、札幌特有の気候と入居者ニーズに合わせた物件選びです。RC造の築浅区分マンションは冬でも室温管理がしやすく、光熱費が読みやすい点で人気があります。家賃は抑えめでも、平均空室期間が1ヶ月以内と短く、実質利回りが安定しやすい傾向です。

木造アパートは初期投資を抑えられる反面、屋根の雪下ろしや外壁補修が必須です。管理会社の除排雪サービスを年間契約すると、戸当たり3万円前後の費用が発生します。それでも利回りはRC造より1.5〜2ポイント高いことが多く、キャッシュフロー重視の投資家に向いています。

実は札幌では、シェアハウス需要も徐々に広がっています。転勤者が多い中央区で、家具付き個室6室のシェアハウスを運営した場合、運営開始3年目の平均稼働率は92%という民間調査があります。ただし運営ノウハウと法規制対応が不可欠なため、初心者は管理会社と提携したサブリース型で経験を積むと失敗を抑えられます。

資金計画と2025年度税制優遇

まず自己資金を物件価格の25%程度用意すると、地方銀行の融資金利を1.1〜1.3%まで抑えやすいです。札幌は物件価格が首都圏より低いため、2,000万円台でも銀行評価が出やすく、複数棟の買い進みを計画しやすいメリットがあります。

2025年度も住宅ローン控除の投資用適用は受けられませんが、不動産取得税の1,200万円控除と固定資産税の新築3年間半額措置は継続しています。さらに札幌市の「空き家活用促進補助金」は、築30年以上の戸建てを賃貸転用する場合に改修費の四割(上限80万円)が支給されるため、リノベ再生を狙う投資家は活用すると良いでしょう。

資金計画のシミュレーションでは、雪害保険の上乗せ料率やボイラー交換費を織り込むことが欠かせません。具体的には、築20年超の木造であれば毎年家賃収入の7%を修繕費としてプールし、金利上昇2%のストレステストを同時に行うことで、長期的なキャッシュフローの安定度を確認できます。

初心者が陥りやすい落とし穴と対策

結論として、札幌投資で最も多い失敗は「除雪対応を甘く見る」ことです。管理会社任せにすると追加費用が膨らみ、収支が予定より年15万円以上悪化するケースがあります。契約前に共用部の除雪範囲と費用負担の詳細を明示し、3社以上から見積もりを取る習慣をつけましょう。

また、駅距離だけで判断しがちですが、冬季は地下鉄駅からのロードヒーティング有無で入居者の印象が大きく変わります。中央区の桑園駅周辺はロードヒーティング整備率が高く、徒歩10分でも体感距離が短いと評価されるため、駅近にこだわらず周辺環境を実地で確認することが重要です。

さらに、地元管理会社の情報量を活用する視点も欠かせません。札幌には全国チェーンが少なく、地域密着型の会社が空室改善策を持っています。物件探しの段階で管理会社同行の内見を依頼し、家賃査定とリフォーム提案を同時にもらうことで、購入後の収支ギャップを最小限に抑えられます。

まとめ

札幌は人口が微増し、若年単身世帯が多いという全国でも珍しい都市構造を持っています。中央区で安定を狙うか、北区・東区で利回りを高めるかは、投資目的とリスク許容度次第です。雪国ゆえの修繕費と除雪コストを正しく見積もり、2025年度の補助金や税制優遇を組み合わせれば、表面利回り5%でも実質収益を押し上げることができます。まずは現地を歩き、管理会社と連携しながら数字を磨き、札幌ならではの強みを生かしたポートフォリオを構築してみてください。

参考文献・出典

  • 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
  • 札幌市統計ポータルサイト – https://www.city.sapporo.jp/toukei
  • 日本賃貸住宅管理協会 – https://www.jpm.jp
  • 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
  • 札幌市住宅エコ改修補助金案内 – https://www.city.sapporo.jp/ae/housing
  • 北海道新聞 2025年10月30日朝刊特集記事

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