多くの人が「不動産投資=賃貸マンション」と考えがちですが、実は土地の使い方次第で選択肢は大きく広がります。中でも駐車場経営は、建物を建てずに始められる気軽さから注目を集めています。とはいえ、初期費用やリスク、将来性を正しく理解しないまま参入すると収益が伸び悩むことも少なくありません。本記事では「不動産投資 種類 駐車場経営」をテーマに、基礎知識から収益計算、2025年以降の市場動向までを丁寧に解説します。読み終えたころには、自分に合った投資戦略を描けるようになるはずです。
不動産投資の選択肢と駐車場経営の立ち位置

まず押さえておきたいのは、不動産投資には賃貸住宅、商業ビル、トランクルームなど多様な種類があることです。駐車場経営はその中でも「土地活用型」に分類され、建物を伴わないため設備投資が比較的少なく済みます。また、運営管理がシンプルで、空室リスクが即売上減につながりにくい点も特徴です。
国土交通省の2024年「土地利用動向調査」によると、都市部の遊休地の約14%が駐車場として活用されています。賃貸住宅の空室率が上昇するエリアでも駐車場需要は堅調なケースが多く、一定の安定収入を得やすいとされています。ただし、立地や周辺競合によって収益性は大きく変動するため、他の投資種目と同様に綿密な市場調査が欠かせません。
一方で、駐車場経営は土地を手放す、もしくは将来建物を建てるといった出口戦略を柔軟に設計できる点が強みです。契約期間が短く、解体費用もほぼ不要なため、市況変化に合わせて活用方法を切り替えられます。つまり、長期保有を前提とした賃貸住宅と比べ、機動力の高さが大きな魅力となるわけです。
駐車場経営の収益構造を理解する

重要なのは、収益モデルを数値でイメージできるようにすることです。月極駐車場の場合、一般的な都心部での月額賃料は2万円前後、地方都市では8千円程度が目安になります。仮に20台分を確保し、稼働率を90%とすると、年間売上は約432万円(2万円×20台×12か月×0.9)です。
一方、コインパーキング型は短時間利用が中心のため、単価は低くても回転率が高く、立地が良ければ月極を上回る収益も期待できます。経済産業省「自動車保有動向統計」(2025年版)では、1台当たりの平均日次売上は都市部で1,600円、地方で600円と報告されています。24時間営業の機械式精算システムを導入すれば管理コストも抑えやすく、少人数でも運営が可能です。
運営コストとしては、土地固定資産税、舗装・ライン引き直し費用、照明や精算機の電気代などが発生します。コスト比率は売上の15〜25%が目安で、賃貸住宅の管理費・修繕費率(30〜40%)より軽い傾向にあります。固定資産税は「小規模住宅用地の特例」の対象外ですが、敷地面積200m²以下の土地なら評価額が3分の1となる2025年度も継続中の軽減措置を受けられる場合があるため、自治体の確認が不可欠です。
開業までのステップと初期コスト
ポイントは、計画段階でのシミュレーション精度を高めることです。まず市場調査として、半径300m圏内の既存駐車場の台数、稼働状況、料金設定を把握します。次に、月極かコインパーキングかを選定し、必要設備や施工内容を決めます。
初期コストは更地の場合、簡易舗装とフェンス・看板設置で1台あたり8万〜12万円が相場です。コインパーキングなら精算機やゲート機器が加わり、1台当たり40万〜60万円に上がります。機器はリース契約も可能で、自己資金を抑えたい場合はリース料を経費計上しつつキャッシュフローを確保できます。
融資については土地を担保に地方銀行や信用金庫が対応しやすい傾向にあります。2025年11月時点での不動産担保ローン金利は変動型で年1.2%〜2.0%が目安で、返済年数は最長15年程度が一般的です。金融機関は事業計画書の妥当性を重視するため、稼働率を複数シナリオで提示し、保守的な数字でも返済余力があることを示しましょう。
設備導入後は、集金業務や清掃を外部委託するか自主管理するかを決定します。自主管理ならコストを削減できますが、遠隔地の場合はトラブル対応が遅れるリスクを考慮する必要があります。管理会社への委託料は売上の5〜10%が相場で、料金に見合うサポート範囲を確認することが大切です。
リスクとその対策
実は、駐車場経営の最大のリスクは稼働率低下よりも近隣競合の新規参入です。空き地は全国に拡大しており、同じエリアに似た規模の駐車場が増えると価格競争が激化します。対策としては、料金設定を柔軟に変更できるよう、賃料相場を常にモニタリングし、相場より1000円程度低く設定して長期契約を促すなどの工夫が有効です。
また、コインパーキングでは精算機の故障や不正駐車といった運営トラブルも発生します。近年はIoTセンサーによる遠隔監視システムが普及し、リアルタイムで状況を把握できるため導入を検討するとよいでしょう。修繕費用を計画に織り込むことが安定運営の鍵となります。
自然災害リスクも忘れてはなりません。舗装面の排水設計が不十分だと大雨で冠水し、使用不能期間が生じます。初期施工時に透水性舗装や排水溝を追加することで、復旧費用と機会損失を最小化できます。火災保険や施設賠償責任保険も掛け金が年数万円と手頃なので、必ず加入しましょう。
税務上のリスクとしては、土地評価額が下がらない場合は固定資産税が軽減されにくい点が挙げられます。相続対策を主目的とするなら、建物を建てて借地権を設定するアパート経営の方が評価額をより下げられるケースもあります。目的に応じて、駐車場と他の不動産投資を組み合わせるポートフォリオ戦略を考えることが望ましいです。
2025年以降の市場動向と制度活用
まず、車両保有のトレンドを把握することが欠かせません。日本自動車工業会の2025年予測では、全国の乗用車保有台数は微減ながら都市近郊の共働き世帯ではSUVやEV需要が伸びると示されています。この層は自宅に駐車スペースを確保しきれず、月極駐車場を借りる割合が高い点がチャンスです。
EV充電器の設置は差別化策として有効です。環境省の「EVインフラ補助金(2025年度)」は上限50万円まで充電器設置費用の3分の1を補助しており、駐車場経営者も対象となります。補助金を活用し1基あたり実質30万円程度で導入できれば、EVユーザーから追加利用料を得る新たな収益源になります。
一方、カーシェアリング事業者との提携も検討に値します。2024年の総務省統計ではカーシェア車両数が前年比12%増と拡大し、駐車スペースの確保ニーズも高まっています。区画の一部を事業者に時間貸しすることで、固定賃料を得つつ稼働率低下リスクを分散できます。
さらに、2025年度税制改正で創設された「土地活用促進税制」では、地方圏の遊休地を有料駐車場として運営した場合、開業後5年間は事業所得の10%を所得税から控除できる特例が始まりました(申請期限は2027年3月)。該当地域であれば、投資回収期間の短縮に大きく寄与します。制度は地域や面積要件が細かく設定されているため、事前に税理士と相談して適用可否を確認してください。
まとめ
駐車場経営は、建物を建てずに土地を活用できるため初期費用と運営コストが低く、柔軟な出口戦略が取れる点が魅力です。稼働率や近隣競合、設備トラブルなどのリスクを正しく把握し、保守的な収支計画とIoTなどの最新ツールを組み合わせれば、安定したキャッシュフローを期待できます。EV充電器やカーシェア提携、2025年度の補助金・税制を活用すればさらなる収益拡大も見込めるでしょう。まずは自分の土地条件と投資目的を整理し、本記事を参考に具体的なシミュレーションを進めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 土地利用動向調査2024年版 – https://www.mlit.go.jp
- 経済産業省 自動車保有動向統計2025年版 – https://www.meti.go.jp
- 日本自動車工業会 乗用車市場予測2025 – https://www.jama.or.jp
- 総務省統計局 カーシェアリング動向調査2024 – https://www.stat.go.jp
- 環境省 EVインフラ補助金 2025年度概要 – https://www.env.go.jp
- 財務省 2025年度税制改正大綱 – https://www.mof.go.jp