都会のマンション経営やアパート一棟買いでは高額な自己資金が必要だと感じていませんか。さらに空室リスクや修繕負担を考えると、最初の一歩が重くなるのは当然です。そこで注目されているのが小規模で始められる「トランクルーム投資」です。本記事では、不動産投資の中でも新しい選択肢となるトランクルームの種類や収益構造、2025年度に利用できる制度までをわかりやすく整理します。読み終えるころには、自分に合った投資モデルを見極める視点が手に入るはずです。
トランクルーム投資とは何か

まず押さえておきたいのは、トランクルームが「物置スペース」を貸し出すビジネスである点です。国土交通省の調査によると、都市部の住宅面積は年々縮小し、収納不足を感じる世帯が増えています。その需要を取り込む形で、2025年現在の国内トランクルーム市場は年間約1,500億円規模へと拡大しました。
従来の賃貸住宅と異なり、入居者との賃貸借契約ではなく「寄託契約」や「レンタルスペース契約」を結ぶケースが多いです。つまり内装や水回りの修繕コストが低く、退去時の原状回復費もほとんど発生しません。また、荷物相手のため24時間の静音性が保たれ、近隣トラブルが起こりにくい点も運営を楽にします。
トランクルームの平均賃料は1㎡あたり月額4,000円前後ですが、実は坪単価換算だと都心ワンルームの賃料を上回ることも少なくありません。小さな区画を多数に分けることで、利用者目線では手頃、オーナー目線では高利回りを実現しやすい構造になっています。
トランクルームの主要な種類と選び方

重要なのは、投資対象となるトランクルームには複数の形式がある点です。代表的なのは「屋内型」と「屋外コンテナ型」に大別できます。
屋内型はビルの空きフロアや倉庫を改装し、空調やセキュリティを備えた上質な環境を提供します。利用者の多くは季節家電や趣味用品を預けるファミリー層で、女性比率も高いことが特徴です。そのため湿度管理やカードキーによる入退室履歴の可視化が欠かせません。設備投資はやや大きくなりますが、平均稼働率は80%を超えることが多く、長期で安定した運営が見込めます。
一方、屋外コンテナ型は更地に海上輸送用のコンテナを設置して区画化する手法です。設置後すぐに貸し出せるうえ、土地付き一括購入なら1,000万円程度から始められる案件もあります。また、固定資産税は建物分が抑えられ、土地は「雑種地」として評価が低い場合もあるため、保有コストを軽減できます。ただし断熱性能に限界があるため、衣類や楽器といった温湿度変化に弱い荷物には不向きで、顧客層が限定される点は注意が必要です。
結論として、立地とターゲット顧客を具体的に描けるかどうかが種類選定の最大の鍵です。都心の駅近でOL層を狙うなら屋内型、郊外の工業エリアで法人倉庫を想定するなら屋外型というように、需要を裏付けるデータを集めて判断しましょう。
収益モデルとキャッシュフローの特徴
ポイントは、トランクルーム投資の収益が「多区画・短期契約」に支えられている点です。各区画の月額料金は5,000円前後でも、30〜50区画を束ねれば年間家賃収入は300万〜500万円に達します。さらに一度に解約される区画は限定的なため、マンションのように満室が一気に半分空くといったリスクはほぼありません。
国税庁の「令和6年民間給与統計」によれば、一般的な給与所得者の可処分所得は月平均25万円前後です。この層が週末に趣味を楽しむための収納スペースへ2,000〜3,000円を払うのは心理的ハードルが低く、高い稼働率につながっています。また、トランクルームの原状回復費は区画あたり数千円で済むため、運営費率は家賃収入の25%程度に収まるケースが多いです。
一方で、最初の設備投資に占める空調・換気システムの割合は約30%と高めです。長期的にみると、この部分の耐用年数をどう引き延ばすかがキャッシュフロー改善のカギになります。具体的には、換気ファンを省エネ型に更新し、24時間フル稼働ではなく湿度センサー連動に切り替えると、年間電気代を1区画あたり200円ほど削減できる試算もあります。
リスクと回避策、2025年度の制度
実はトランクルーム投資にもリスクは存在します。例えば、近隣に競合施設が新設されると稼働率が低下し、価格競争に巻き込まれる恐れがあります。また、利用者の荷物が原因で火災が発生した場合、オーナー責任が問われる可能性も否定できません。
これらに備える方法として、まず需要調査を定期的に実施し、キャンペーンの投入時期や価格改定を柔軟に行うことが重要です。消防法に基づく定期点検はもちろん、2025年度から義務化された「屋内型トランクルームの非常用照明設備基準」にも確実に対応しましょう。これにより、万が一の事故時にも損害を最小限に抑えられます。
制度面では、2025年度の中小企業庁「小規模事業者持続化補助金」が、レンタル収納業を含むサービス業の設備更新費用を最大50万円補助しています。申請には商工会議所のサポートが必要ですが、空調機器やセキュリティカメラの導入にも適用できるため、設備負担を抑える好機と言えます。なお、公募は年4回程度で締切が設けられているためスケジュール管理が欠かせません。
成功事例に学ぶ運営ポイント
まず取り上げたいのは、東京都江東区で屋内型を運営するA氏のケースです。延床180㎡のビルをリノベーションし、1.2㎡から4㎡まで48区画を設定しました。初期投資は約2,800万円でしたが、オープンから18か月で稼働率90%を達成し、表面利回りは10%台に乗っています。A氏は近隣の住民相談会を開催し、収納セミナーを通じて利用方法を提案したことで口コミを拡大しました。
次に、愛知県豊田市の郊外で屋外コンテナ型を展開するB社の事例を見てみましょう。コンテナ20基を並べ、法人顧客向けに工具や資材置き場として貸し出した結果、平均契約期間は4年近くに伸びています。法人は夜間搬出入も多いため、LED街灯と防犯カメラを追加したところ、保険料が約10%割引となり実質利回りが向上しました。
このように、ターゲットに合わせたサービス設計と設備投資の最適化が、長期的な利益を左右します。物件の規模や立地条件が異なっても、顧客の課題を具体的に解決する姿勢が共通の成功要因だといえるでしょう。
まとめ
トランクルームは少額から始められ、マンションより管理が楽な一方で、立地分析とターゲット設定が収益を決める投資手法です。屋内型は安定稼働と高い顧客満足度、屋外型は低コストと土地活用の柔軟性という長所があります。さらに2025年度の補助金制度を活用すれば、初期費用の負担を抑えつつ設備を充実させることも可能です。興味を持ったら、まず周辺需要を調査し、小さくスタートして運営ノウハウを蓄積してみてください。安定したキャッシュフローと資産形成の両立が見えてくるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅経済関連データ – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 社会生活基本調査 – https://www.stat.go.jp
- 中小企業庁 小規模事業者持続化補助金 2025年度公募要領 – https://www.chusho.meti.go.jp
- 日本投資不動産推進協会 2025年版トランクルーム市場レポート – https://www.jreisa.or.jp
- 東京消防庁 トランクルーム防火安全対策ガイド 2025 – https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp