不動産投資に興味はあるものの、「一棟アパート 利回り」と聞くと専門的で難しそうと感じる人は少なくありません。しかし利回りを正しく理解できれば、物件選びの精度は格段に高まり、将来の収益を具体的に描けます。本記事では基礎計算から最新の市場動向までを丁寧に解説し、初めての方でも一棟アパート投資を自信を持って進められるようサポートします。
利回りの基礎と計算方法を押さえる

重要なのは、表面利回りと実質利回りという二つの指標を区別することです。表面利回りは年間家賃収入を物件価格で割った単純な数値で、物件広告によく掲載されます。一方、実質利回りは管理費や固定資産税などの経費を差し引き、さらに購入時の諸費用を加味して算出します。つまり実質利回りこそが手取りの収益性を示すため、投資判断ではこちらを重視すべきです。
まず表面利回りの計算例を確認しましょう。仮に年間家賃収入が600万円、購入価格が1億円なら表面利回りは6%となります。しかし管理費60万円、修繕積立50万円、固定資産税40万円を差し引くと年間純収入は450万円で、さらに取得時諸費用が800万円かかった場合、実質利回りは約4.2%まで下がります。このギャップを理解しておくことで、過度な期待を防げます。
2025年12月時点で日本不動産研究所が公表した東京23区アパートの平均表面利回りは5.1%です。広告に7%と書かれた物件でも、実質利回りは平均値を下回る場合があるため、必ず詳細なシミュレーションを行いましょう。収支見込み表を作成する習慣が将来の安定経営につながります。
エリアと物件タイプが数字に与える影響

まず押さえておきたいのは、同じ「一棟アパート 利回り」でも立地によって期待値が大きく変わる点です。都心部は物件価格が高いものの、人口流入が続くため空室リスクが低く、家賃下落幅も小さめです。その結果、表面利回りは5%前後でも、安定経営が長期で見込めます。一方で郊外や地方都市は取得価格を抑えやすく、表面利回りが7%を超える物件も珍しくありませんが、入居需要が読みにくく慎重な調査が欠かせません。
物件の間取り構成も収益に直結します。単身者向けワンルームが中心のアパートは回転率が高く、小まめな入居者対応が求められますが、家賃設定を柔軟に変えやすい利点があります。ファミリー向け2LDK主体のアパートは退去が少ない反面、原状回復費用が高額になりやすい点が特徴です。つまり自分の運営スタイルや管理体制と合うターゲットを見極めることが肝心です。
さらに再開発計画や大学の新設・移転情報も重要な判断材料となります。例えば2025年度に開校した都内私立大学の新キャンパス周辺では、単身向け需要が急増し、募集家賃が前年より平均8%上昇しました。このような具体的データを集めることで、将来の利回り低下リスクを減らせます。
空室率と運営コストをどう織り込むか
実は利回りを計算する際、空室率の設定が甘いと収支計画は簡単に崩れます。国土交通省住宅統計によると、2025年10月の全国アパート空室率は21.2%で、前年より0.3ポイント改善したものの依然高水準です。保守的に見積もるなら、シミュレーションでは最低でも15%程度の空室を想定することが安全と言えます。
運営コストに含まれるのは管理委託料、修繕費、火災保険料、共用部電気代など多岐にわたります。築年数が古いアパートでは、屋根や配管の大規模修繕が避けられず、年平均で家賃収入の10%を修繕予算に充てるケースもあります。物件選びの段階でインスペクション(建物診断)を実施し、将来の修繕サイクルを把握しておけば、長期の実質利回りを精度高く計算できます。
さらに入居者募集費用として広告料を家賃の1〜2か月分支払う地域もあります。入退去が頻繁なエリアでは広告料を合計すると年間家賃収入の5%超になることも珍しくありません。このように細かなコストを積み上げると、表面利回り8%の物件でも手元に残る実質利回りは5%台まで下がることがあります。数字の裏側を読み解く視点が欠かせません。
融資条件がキャッシュフローを左右する
ポイントは、同じ利回りの物件でも融資条件一つで手取りキャッシュフローが大きく変わる点です。2025年現在、都市銀行の投資用アパートローン金利は変動1.9〜2.4%が目安で、地方銀行や信用金庫はエリアや物件種別によって2.5〜3.5%が一般的です。金利が1%違えば、1億円を30年返済した場合の総支払利息は約1700万円変動します。つまり利回りだけを見て物件を比較しても、融資条件が悪ければ収益性は大幅に下がるのです。
返済比率の目安として、年間元利返済額が年間家賃収入の50%を超えると手残りが減少し、修繕費や空室発生時の資金繰りが難しくなります。金融機関に提出する事業計画書では、返済比率45%以下、自己資金20%以上を示すと審査が通りやすい傾向があります。自己資金を厚くすることで金利優遇を受けられるケースもあるため、事前に複数の金融機関と交渉する姿勢が大切です。
一方、固定金利の商品を選べば将来の金利上昇リスクを抑えられますが、当初の金利は変動型より高く設定されています。例えば2025年12月時点で、某大手ノンバンクの固定金利は3.8%前後です。将来のインフレや日銀政策変更を想定し、自身のリスク許容度を基に金利タイプを選択しましょう。金融知識を身につけることで、数字の見た目以上に強い経営基盤を築けます。
2025年市場動向と高利回り物件の探し方
まず注目すべきは、人口集中が続く都市圏とDX推進による地方分散の二極化です。テレワーク定着により、交通利便性より住環境を重視する層が増え、郊外の築浅アパートに移住する動きも見られます。この変化は、駅徒歩10分圏にこだわらずとも安定収入が得られる可能性を示唆しています。ただし生活インフラや商業施設が近いかどうかなど、実際の利便性を細かくチェックする必要があります。
高利回り物件を探す手法として、築20年前後の木造アパートをリノベーション前提で購入する戦略があります。購入価格を抑え、内装を若者向けに刷新することで家賃の維持・向上が期待できます。国土交通省の調査では、築25年以上の木造アパートでも内外装を一新した場合、平均で家賃が15%上昇し、空室率が8ポイント改善した例が報告されています。数字で裏付けられた手法は再現性が高く、初心者にも取り組みやすいと言えます。
2025年度に有効な補助金として、地方自治体が実施する「既存住宅省エネ改修補助」があります。たとえば東京都の制度では、外壁断熱改修に対して上限150万円が支給され、申し込み期限は2025年12月末です。補助金を活用すれば自己資金を抑えつつ競争力を高められるため、各自治体の公式サイトをこまめに確認しましょう。ただし予算枠に達し次第終了となるため、計画的な申請が欠かせません。
最後に情報収集源として、不動産会社の未公開情報だけに頼るのではなく、レインズの成約事例や国交省の地価公示データを照合し、実勢価格を把握することが重要です。インターネット上の利回りランキングは魅力的に見えますが、売主が提示する想定家賃が過大である場合もあり得ます。結論として、複数の公的データと現地調査を組み合わせた多面的な分析こそが、高利回り物件発掘の近道です。
まとめ
この記事では「一棟アパート 利回り」の基本概念から2025年の最新市場動向までを解説しました。要は実質利回りを中心に、空室率・運営コスト・融資条件を織り込んだ現実的なシミュレーションを行うことが成功への鍵です。また、エリア特性とターゲット層を見極め、自治体補助金やリノベーションを活用すれば、平均利回り以上の収益も狙えます。行動を起こす際は、必ず複数データを突き合わせて数字を検証し、納得できる物件を選びましょう。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 国土交通省 住宅統計調査 – https://www.mlit.go.jp
- 東京都 環境局 既存住宅省エネ改修補助 – https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp
- 日銀マネタリーデータベース – https://www.boj.or.jp
- 全国賃貸住宅新聞 データベース – https://www.zenchin.com