不動産の税金

新築物件でも油断できないリスクと対処法

新築物件なら安心だろう――そう考えている方は少なくありません。しかし実際には、購入価格の上振れや家賃下落、予期せぬ修繕費など、さまざまな「新築 リスク」が存在します。本記事では、投資初心者でも理解しやすいように新築物件特有の落とし穴を整理し、回避するための具体策を丁寧に解説します。読むことで、購入前に確認すべきポイントや長期運用に必要な備えがわかり、後悔しない投資判断ができるようになります。

なぜ新築でもリスクはゼロではないのか

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ポイントは「築年数が浅い=安全」と単純化できない事実を知ることです。新築は設備が最新で、入居者募集もしやすい反面、初期投資額が高く、想定利回りが低くなりがちです。

まず、販売価格には開発業者の利益と宣伝費が上乗せされています。同じ立地でも中古に比べて二〜三割高いケースが多く、賃料が想定通りに入らなければキャッシュフローがすぐに悪化します。また、完売直後に中古扱いとなり、売却価格が新築時より下がる「値下がりリスク」も無視できません。

さらに、竣工後二〜三年で周辺に後発の新築が供給されると、家賃水準が押し下げられる可能性があります。国交省の住宅着工統計をみても、都心近郊では供給過多のエリアが散見されます。つまり、購入前に将来の競合物件の計画を調べることが欠かせません。

資金計画に潜む落とし穴

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まず押さえておきたいのは、自己資金とローン返済比率のバランスです。新築は物件価格が高いためフルローンに頼りがちですが、返済比率が高いと空室発生時に資金繰りが急激に苦しくなります。

たとえば、表面利回り4%の新築マンションで借入金利1.5%、返済期間35年とすると、家賃収入の約六割が返済に消えます。管理費や固定資産税を考慮すると、実質利回りは1%台まで低下し、わずかな家賃下落で赤字になります。また、諸費用として物件価格の7〜8%が別途必要ですが、ここを見落とす初心者は多いです。

新築ゆえのメリットとして2025年度の住宅ローン減税がありますが、控除額は年末残高の0.7%で、以前より縮小しています。控除期間終了後の収支も織り込んでシミュレーションを行い、想定外の金利上昇にも耐えられる余裕資金を確保することが重要です。

家賃設定と市場調査のポイント

重要なのは、周辺の実勢家賃を過大評価しないことです。販売会社が示す「想定家賃」は、竣工直後のキャンペーン価格を前提にしている場合があり、長期的な賃料を保証するものではありません。

現地調査では、徒歩圏にある築浅物件の空室率と実際の賃料を自分の目で確認します。国土交通省の「不動産取引価格情報検索」を使えば、近隣の成約事例を無料で調べられ、広告と現実の差を把握できます。また、仲介会社がネットで掲示する募集賃料と成約賃料には1割程度の乖離があることも珍しくありません。

人口動態も見逃せません。総務省の住民基本台帳によると、地方都市で20代人口が減り続けるエリアは今後も賃貸需要が縮小します。反対に大学新設や大型企業の移転など、需要増の要因があるかどうかを行政の都市計画資料で確認しておくと、家賃下落リスクを抑えられます。

メンテナンス費用を軽視しない

実は、新築でも十年目以降にまとまった修繕が必要になります。エレベーターや給水ポンプは15年前後で更新時期を迎え、100万円単位の費用が発生することが一般的です。

分譲マンションの場合、修繕積立金は築後五年ほどで増額されるケースが多く、国交省「マンション総合調査」でも平均1.5倍に跳ね上がると報告されています。賃貸専用の一棟マンションでも、屋上防水や外壁塗装は足場費用込みで総戸数×10万円前後が目安になり、キャッシュフローを圧迫します。

したがって、購入時点から月々の家賃収入の一割程度を「長期修繕準備金」として別口座に積み立てる運用が望ましいです。これにより、突然の設備故障で追加借入をせずに済み、資金ショートの危険を大幅に減らせます。

税制と法律改正リスクへの備え

ポイントは、税制優遇が永続的ではないことを念頭に置く点です。先述の住宅ローン減税は2025年度までの制度で、控除率や期間は今後変更される可能性があります。制度変更で手取りが減る事態に備え、節税ありきの計画は避けましょう。

固定資産税の負担増も注意点です。新築住宅への軽減措置は一戸建てで三年間、マンションで五年間に限定され、その後は税額が1.5倍前後に跳ね上がります。地方税法の改正で評価額算定基準が見直されると、さらに増税されるリスクがあります。

法的リスクとしては、2022年の改正民法で設備の交換義務が明確になり、オーナー負担が増えました。今後も入居者保護が強化される方向にあるため、耐震性能や省エネ性能を満たさない場合の改修費を想定しておくべきです。行政のガイドラインを定期的に確認し、専門家と連携して適切に対応することで長期運用の安定度が高まります。

まとめ

本記事では、新築物件ならではの価格下落、資金計画、家賃設定、修繕費、税制改正という五つのリスクを整理し、それぞれの対処法を解説しました。新築の輝きに目を奪われず、データと将来シナリオを踏まえたシミュレーションを行うことが欠かせません。購入前に資金余力と市場需要を慎重に検証し、運用中は修繕積立と法改正情報のチェックを習慣化してください。そうすることで、長期的に安定したキャッシュフローを確保し、資産形成を着実に進められるでしょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp/
  • 国土交通省 不動産取引価格情報検索 – https://www.land.mlit.go.jp/
  • 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.soumu.go.jp/
  • 国土交通省 マンション総合調査 – https://www.mlit.go.jp/
  • 財務省 税制改正資料 – https://www.mof.go.jp/

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