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築古物件の始め方ガイド:リスクを抑えて成功

築年数の古い物件に興味はあるものの、「ボロ物件で本当に利益が出るのか」「リフォーム費が膨らまないか」と不安を抱える方は少なくありません。しかし築古投資には、購入価格を抑えて高い利回りを狙えるという大きな魅力があります。本記事では、初心者でもつまずきやすいポイントを整理しながら、物件選定から資金計画、管理までを段階的に解説します。読み終える頃には、築古 始め方の全体像がつかめ、自分に合った一歩を踏み出す判断材料が得られるでしょう。

築古物件が注目される背景

築古物件が注目される背景のイメージ

重要なのは、築古物件が現在の市場環境でどのような価値を持つのかを理解することです。新築偏重だった国内市場も、人口減少と賃貸ニーズの多様化を受けて流れが変わりつつあります。

総務省の住宅・土地統計調査では、2023年時点の全国空き家率は13.6%でした。空き家が増えれば賃貸需要が弱まりそうに思えますが、実際は「駅近の戸数不足」と「郊外の余剰」が混在しています。築古でも立地と管理が良好なら、比較的手頃な家賃で借り手の満足度を高めやすく、競争力を保ちやすいのです。また、同じ面積・立地条件なら築浅より購入価格が2〜4割低く抑えられる傾向があり、自己資金が少なくても参入しやすい点も見逃せません。

さらに2025年度も継続する長期優良住宅化リフォーム推進事業を活用すれば、一定の省エネ改修に対して補助金が得られます。この制度は上限250万円(戸当たり)で、断熱や耐震補強を行う際のコスト圧縮に寄与します。つまり、市場環境と政策支援が重なり、築古投資に追い風が吹いているといえます。

失敗しない物件の選び方

失敗しない物件の選び方のイメージ

まず押さえておきたいのは、築古物件では「構造・立地・収益」の三点セットをバランス良く見ることです。どれか一つでも欠けると、修繕費の増大や空室リスクが跳ね上がります。

物件内部を確認する際は、屋根と基礎の劣化状態を専門家の同行調査でチェックすることが必須です。木造なら築30年、鉄骨造なら築40年を超えると構造部の腐食や錆が進んでいるケースが多く、補強費が高額化しやすいためです。一方で、外壁クラックや配管の老朽化などは費用が読みやすい項目です。これらを切り分けて見積もると、想定外の出費を抑えられます。

立地面では、駅徒歩10分圏内か主要バス路線沿いであるかが最初のふるいになります。加えて自治体の人口動態を調べ、5年間で人口が1%以上減っていないエリアを選ぶと安定度が高まります。国立社会保障・人口問題研究所の推計と照らし合わせると、多くの中核市中心部はまだ緩やかな人口増を維持しています。

収益性は、表面利回りだけでなく実質利回りで判断しましょう。固定資産税、修繕積立、管理委託費を差し引いたうえで8%以上を保てる物件なら、金利上昇や空室が発生してもキャッシュフローが枯渇しにくいからです。

購入からリフォームまでの流れ

ポイントは、契約前に「工事内容」と「工事期間」を具体的に決めておくことです。曖昧なまま契約すると、引き渡し後に余計な工事が追加され、コストと時間が膨らむリスクがあります。

一般的なフローは、買付申込→重要事項説明→売買契約→決済・引き渡し→リフォーム着工の順です。決済からリフォーム完了までを最短で2カ月に収めると、空室期間による機会損失を最小化できます。そのためには、融資審査と並行してリフォーム業者と間取り変更や設備交換の仕様を固めておくことが有効です。

設備交換では、入居者満足度を左右する水回りとインターネット環境を優先します。国土交通省の「民間賃貸住宅に関する市場アンケート」では、築年数が古くてもネット無料物件は成約速度が平均1.3倍速いという結果が出ています。つまりトレンドに合わせた設備投資が、高い入居率を維持する鍵になります。

なお、2025年度の住宅ローン減税は耐震基準を満たすことが適用条件の一つです。築古物件でも、耐震補強後に適合証明を取得できれば控除を受けられますので、物件選びの段階で補強の可否を確認しておくと良いでしょう。

収支シミュレーションと資金調達

実は、築古投資で最も差がつくのは購入後ではなく資金計画の段階です。いくら利回りが高くても、返済比率がオーバーすると毎月のキャッシュフローはすぐに赤字化します。

金融機関が重視するのは、物件の収益力よりも借り手の返済能力と返済期間です。築年数が経過していると、融資期間が法定耐用年数の残存期間で区切られがちですが、フルリフォームを行い再評価を受けることで期間を5〜10年延ばせる場合があります。返済期間が延びれば毎月返済額が下がり、返済比率を抑えられます。

シミュレーションでは、空室率15%、修繕費年額10万円、金利上昇1%を組み込み、最悪ケースで手残りが黒字になるかを確かめます。また税引き後のキャッシュフローも忘れてはいけません。個人名義なら所得税・住民税、法人なら法人税・消費税還付の有無が変動要因になります。税理士と連携し、複数年の損益計算書を作ると精度が高まります。

加えて、2025年度も続く「中小企業経営強化資金」を活用すれば、法人設立後の初回融資で金利を年0.5%程度下げられる可能性があります。金利差は30年で数百万円規模になるため、制度の有無は必ず確認しておきましょう。

築古投資を成功に導く管理術

基本的に、築古物件は入居者が物件の歴史や雰囲気に価値を見いだすケースが多いです。したがって管理方針は「古さを隠す」のではなく、「味わいを活かしつつ清潔感を保つ」ことが効果的です。

具体的には、共用部の照明を暖色LEDに変更し、玄関ドアにアクセントカラーを入れるだけでも印象は大きく変わります。日本賃貸住宅管理協会の調査では、共用部リニューアル後に家賃を5%アップしても平均入居期間は延びたというデータがあります。視覚的なアップデートが退去抑制に寄与する好例といえるでしょう。

入居者対応は、24時間コールセンター付きの管理委託を選ぶとオーナーの手間を減らせます。ただし手数料は家賃の5%前後が相場です。自主管理と比較して年間コストが増えるものの、クレーム対応の迅速化や家賃滞納の予防効果を考慮すると、長期的な収益安定につながるケースが多いです。

一方で、修繕積立は家賃収入の10%を目安に毎月プールします。築古物件は突発的な設備故障が起こりやすく、キャッシュフローから直接捻出すると資金繰りが苦しくなります。積立をルール化し、さらに火災保険や家賃保証と組み合わせることで、予測不能な出費を吸収しやすくなります。

まとめ

築古物件は価格の安さと利回りの高さが魅力ですが、構造チェックと資金計画を怠ると想定外のコストで失敗しがちです。本記事で紹介したように、立地分析、リフォーム内容の具体化、保守的なシミュレーション、そして管理体制の構築を段階的に行えばリスクは大幅に減らせます。まずは小規模でも良いので物件調査と融資相談を同時並行で進め、数字に基づいた判断を積み重ねてください。行動を起こすことでしか、築古 始め方の実感は得られないからです。

参考文献・出典

  • 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
  • 国立社会保障・人口問題研究所 – https://www.ipss.go.jp
  • 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
  • 日本賃貸住宅管理協会 – https://www.jlma.or.jp
  • 中小企業庁 経営サポート「経営強化資金」 – https://www.chusho.meti.go.jp

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