築二十年前後の中古物件は価格がこなれ、家賃は大きく下がりにくい――そう聞いても「本当に利回りは出るのか」と不安になる方は多いでしょう。実際に、築浅物件の華やかな広告に比べると魅力が伝わりづらく、空室や修繕費への懸念も尽きません。この記事では、築二十年ならではの利回り構造を数字と事例で解きほぐし、2025年時点で使える融資や税制のポイントまで網羅します。読み終えた頃には、築年数を味方につけて安定収益を得る具体的な判断軸が手に入るはずです。
築20年物件が狙い目になる理由

まず押さえておきたいのは、築二十年という節目で価格と収益のバランスが大きく変わる点です。新築時に比べて物件価格は三~四割下落する一方で、家賃は二割程度の下落で踏みとどまるケースが多く、表面利回りが自然に高まります。
国土交通省の住宅市場動向調査では、首都圏の区分マンション価格は築十年までは緩やかに下がり、十五年を超えると下落幅が広がります。ところが周辺家賃は築二十年前後で底を打ち、その後は緩やかな下落に留まる傾向です。つまり、購入価格が大きく割安になる一方で家賃収入が一定水準を維持するタイミングこそが築二十年なのです。
さらに、固定資産税評価額が下がることで税負担も軽減されます。評価額は築年数とともに逓減するため、同じ賃料を得ても税引き後キャッシュフローが改善しやすいのが特徴です。利回り向上の要因が複数重なるため、投資効率という観点で築二十年物件は魅力を放ちます。
表面利回りと実質利回りの違い

重要なのは、表面利回りだけで判断しないことです。表面利回りは年間家賃収入を物件価格で割った指標で、広告などでよく見かけます。しかし、管理費や修繕費、空室損を加味しないため、実際の手取りとは大きく乖離します。
実質利回りを計算する際は、年間家賃から次のコストを差し引きます。管理委託手数料は賃料の五%前後、固定資産税は評価額に応じますが築二十年なら年間七万円程度に下がるケースが多いです。加えて、修繕積立金や計画的なリフォーム費用も年当たりで積み立てておくと、突発的な支出に慌てずに済みます。
たとえば、東京二十三区ワンルームの平均表面利回りは2025年時点で4.2%と日本不動産研究所が示しています。同条件下で築二十年の中古ワンルームを購入し、管理費など年間二十五万円を控除した場合、実質利回りはおよそ3.4%まで下がります。数字だけを見ると物足りなく感じるかもしれませんが、新築ワンルームの実質利回りが2%台にとどまる現状を踏まえれば十分に競争力があります。
築20年物件のリスクと対策
ポイントは、築二十年ならではのリスクを見逃さず、事前に対策を講じることです。最大の懸念は設備の老朽化による突発修繕で、給排水管や屋上防水は一度の修理で百万円単位になる場合があります。
そこで、購入前に重要事項調査報告書を取り寄せ、過去の修繕履歴と今後の計画を確認してください。共有部分の大規模修繕が五年以内に迫っている場合、修繕積立金の不足がないかが分かれ目になります。不足分を一括請求されるとキャッシュフローが大きく揺らぐため、積立金残高と工事予定額の差を必ずチェックしましょう。
空室リスクも見逃せません。しかし、築二十年で空室率が高い物件には共通点があります。内装が旧式でネット環境や宅配ボックスが未整備というケースです。十万円程度の高速Wi-Fi設備や宅配ボックスの導入は、家賃を維持しながら募集期間を短縮する効果が大きく、長期視点では実質利回り改善につながります。
2025年の融資・税制環境を味方にする
実は、2025年度の金融環境は中古物件投資に追い風が吹いています。都市銀行は新築区分マンションへの融資を慎重にする一方、築十年以上で利回りが確保できる物件に対しては、収支が見えやすいという理由で金利優遇を行うことがあります。最近の事例では、自己資金二割、金利1.7%、期間25年のローンが成立しています。
税制面では、所得税の損益通算により減価償却費を経費計上できる点が大きな魅力です。築二十年の鉄筋コンクリート造(RC造)の残存耐用年数は27年ですが、取得価額を四十年で按分し直すより、残存価額から短期で償却するほうが初年度の節税効果が高まります。ただし、過度な赤字計上は金融機関からの評価を下げる恐れがあるため、償却幅とキャッシュフローのバランスが要です。
また、2025年度の「住宅エコリフォーム減税」は耐震・省エネ改修を行った場合、固定資産税が三年間最大二分の一に軽減されます。築二十年の物件を取得後に対象工事を行えば、年間の税コストをさらに下げられるため、投資回収期間の短縮に寄与します。適用には市区町村への事前申請が必要な点を忘れないでください。
成功する物件選びと運用術
まず、立地選定では駅徒歩七分以内を基準にしつつ、将来の開発計画まで調べることが肝心です。東京都都市整備局のまちづくり計画図を閲覧すると、再開発予定地は色分けされており、物件価値が底上げされるエリアを見極められます。
物件が決まったら、賃貸募集を始める前に市場家賃と室内グレードを点検します。同じ築年数でもリノベーションに三十万円かけるだけで家賃を三千円上乗せできる例は珍しくありません。家賃三千円の上昇は年間三万六千円、利回り換算で物件価格八百万円なら0.45ポイントの改善です。小さな差の積み重ねが総利回りを押し上げます。
運用フェーズでは、家賃値下げ交渉に即応しない姿勢が大切です。代わりにフリーレント一ヶ月や家具家電レンタルといった付加価値提案で満室を維持すれば、長期で見た実質利回りが安定します。退去のたびに原状回復コストを抑えるため、床材やクロスは耐久性の高いものを採用し、短期的な出費を惜しまない判断が結果的に功を奏します。
まとめ
築20年 利回りを高めるカギは、購入価格の割安感だけでなく、実質利回りを左右する運用コストと融資条件を統合的に管理する点にあります。家賃下落が緩やかな築二十年のタイミングで取得し、計画的な修繕と税制活用を行えば、安定したキャッシュフローを長期にわたり確保できます。まずはターゲットエリアの家賃相場と管理体制を調べ、手元資金と目標利回りを照らし合わせながら一件一件丁寧に数字を積み上げてみてください。行動を起こした先に、堅実な不動産収益の未来が広がっています。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資事例集 – https://www.jfc.go.jp
- 東京都都市整備局 まちづくり計画図 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp