築20年前後の中古物件で不動産投資を始めたいものの、「老朽化が心配」「融資は通るのか」など疑問は尽きません。ですが、築20年の物件には価格の割に賃料が下がりにくいという魅力があり、上手に選べば安定収益を得やすい市場が広がっています。本記事では、築20年物件を活用するメリットと注意点、資金計画から運営管理までの流れを詳しく解説します。読み進めることで、初心者でも失敗を避けつつスムーズに第一歩を踏み出せるはずです。
築20年物件が狙い目になる理由

まず押さえておきたいのは、築20年物件が価格と収益性のバランスに優れている点です。国土交通省「不動産価格指数」によると、新築から築15年までで物件価格は平均4割近く下落しますが、賃料下落は2割程度にとどまります。つまり、購入コストが大きく下がる一方、賃料収入は比較的維持されやすいということです。
さらに、2000年前後に建てられた物件は新耐震基準を満たし、設備更新も比較的簡単に行えます。耐震性が確保されていることで金融機関の評価を得やすく、固定金利1%台のアパートローンが通りやすい傾向があります。また、築20年時点で大規模修繕が一巡しているケースが多く、直近の修繕費リスクを抑えられる点も見逃せません。
一方で、将来的な空室リスクや追加修繕費は避けて通れません。しかし、周辺人口が横ばいまたは転入超過のエリアを選び、購入前に配管や屋上防水を点検すればリスクは大きく下がります。重要なのは、割安感だけで決めずにデータと現地調査で裏付けを取る姿勢です。
始める前に確認したいリスクと対策

ポイントは、想定外の支出をどこまで事前に織り込めるかです。築年数が進むほど、給排水管や外壁に不具合が出る確率が高まります。日本建築学会の調査では、築25年時点で配管更新が必要になる割合は45%に達します。そこで、売買契約前にインスペクション(建物状況調査)を依頼し、10万円前後で健康診断を受けるようにしましょう。
また、空室リスクには市場調査で対応します。総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」を参照し、転入超過が5年以上続く市区町村を狙うと安定感が増します。併せて、最寄り駅から徒歩10分以内・平坦な道・生活利便施設が半径500m以内という基礎条件をクリアしているか確認すると、募集コストを抑えやすくなります。
保険も欠かせません。2025年度時点で加入できる「特約火災保険」は水災や破損にも対応し、築年数制限が原則40年以内です。保険料は年間1万円台からありますが、免責額を細かく調整し、自己負担を3万円程度に設定するとコストと補償のバランスが取れます。
購入プロセスと資金計画の立て方
重要なのは、自己資金比率と返済負担率を早い段階で固めることです。日本政策金融公庫の融資統計では、自己資金20%以上の案件は審査通過率が約7割と高く、金利優遇幅も0.2%前後大きくなります。手元資金が少ない場合は、諸費用を含む総投資額の15%を確保してから物件選定を始めると失敗が減る傾向です。
次に、キャッシュフロー計算書を作ります。満室想定賃料、表面利回り、運営費率を入力し、実質利回りが6%を下回る場合は再検討が必要です。運営費には管理委託費8%、修繕積立2万円/戸・年、固定資産税を賃料の1か月分として計上すると、保守的なシミュレーションになります。
融資は主に地方銀行、信用金庫、ノンバンクで比較します。2025年12月時点で、地方銀行の固定金利は1.5%〜2.3%、期間は最長35年が一般的です。金利が0.3%違うだけで、借入3000万円・30年返済の場合、総返済額は約150万円変わります。複数行に同時申込みし、最も条件の良い1行を選ぶ姿勢が大切です。
運営で失敗しないための管理術
まず押さえておきたいのは、入居者満足度を高める小規模リノベーションの効果です。築20年物件でも、Wi‐Fi無料化とLED照明交換だけで平均家賃を4%上乗せできた事例が東京都杉並区で報告されています。初期投資は戸当たり10万円前後に抑えられ、2年以内に回収可能です。
一方で、管理会社への丸投げは危険です。毎月送られてくる収支報告書を確認し、修繕見積もりは必ずセカンドオピニオンを取る習慣を付けましょう。国土交通省「賃貸住宅管理業法」により、2021年以降は管理業者登録が義務化され、2025年時点で約7000社が登録済みです。登録番号を必ず確認するとトラブルを避けられます。
さらに、家賃滞納対策として家賃保証会社を利用する場合、保証料は賃料の50%〜80%が主流です。高いプランほど滞納発生時の立替期間が短縮されるため、資金繰りに不安がある初心者には適しています。ただし、保証範囲と免責期間を読み込まなければ、思わぬ自己負担が生じる点に注意してください。
2025年度の税制優遇と活用ポイント
実は、築年数が進んだ木造住宅でも減価償却を活用すると課税所得を圧縮できます。法定耐用年数22年を超えた場合、簡便法により残存年数は「4年」で計算されるため、築20年物件なら残り2年分は定率法で大きく落とせます。これにより、年収800万円・最高税率33%の給与所得者は、年間50万円の節税効果を得るケースも珍しくありません。
2025年度の固定資産税に関しては、耐震改修促進法による「耐震改修済住宅の固定資産税減額」が継続されています。工事完了翌年度の1年間、戸建てなら税額2分の1、賃貸アパートは1戸当たり120平方メートルまでが対象です。築20年物件で耐震評定を取得し、改修費用を抑えつつ税負担を軽くする戦略は有効と言えます。
また、所得税・住民税を減らす「損益通算」は2025年度も継続しており、赤字部分は最大3年間の繰越控除が可能です。赤字を作り過ぎると金融機関評価が下がるため、節税とキャッシュフローのバランスを取ることが肝要です。
まとめ
築20年物件は、価格がこなれ利回りが安定しやすい掘り出し市場です。ただし、配管や外壁といった経年リスクをインスペクションで可視化し、自己資金比率20%・実質利回り6%以上という基準を守ることが安全な第一歩となります。さらに、耐震改修による固定資産税減額や減価償却を活用すると、収益性と節税効果を同時に高められます。今後は人口動態と金融環境を注視しつつ、数字と現場の両面を確認する習慣を付けてください。行動を先送りせず、まず一件の情報収集から始めれば、あなたの不動産投資は着実に前進します。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資統計 – https://www.jfc.go.jp
- 不動産流通推進センター 不動産の現況調査報告 – https://www.retpc.jp
- 東京都都市整備局 耐震ポータルサイト – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp