築年数が30年を超える物件でも、うまく活用すれば毎年の税負担を軽くしながら安定収益を得ることが可能です。しかし「築古 節税」と聞くと、減価償却や修繕費の扱いが難しいと感じる人は少なくありません。本記事では、2025年12月時点で有効な税制を前提に、初心者でも理解しやすいようポイントを整理します。読み終えたときには、築古物件で節税とキャッシュフロー改善を同時に実現する具体的な手順がイメージできるはずです。
築古物件が節税に強いと言われる背景

重要なのは、建物部分の減価償却費を短期間で大きく計上できる点にあります。中古住宅は法定耐用年数を過ぎていることが多く、簡便法を用いると最短4年で償却が終わるケースも珍しくありません。つまり取得価格の大半を早期に経費化できるため、所得税と住民税を抑えつつ手元資金を厚くできます。
まず中古建物の耐用年数は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で算出します。たとえば木造住宅(法定耐用年数22年)を築25年で取得すると、計算上の残存耐用年数は4年となり、定額法を選べば取得費用を4年で償却できます。この圧縮効果こそ築古節税の核心です。
また、土地は減価償却できないため建物割合を高める工夫が欠かせません。鑑定評価や仲介会社の資料で合理的に建物比率を示すと、税務上認められやすくなります。過度に比率を引き上げると否認リスクが高まるため、市場データとの整合性を確かめながら進めることが大切です。
最後に、築古物件は購入価格が相対的に低いぶん、利回りが高く現金化もしやすい特徴があります。キャッシュフローが早く回収できるため、次の投資へ資金を回すスピードも上がります。この短期回収と節税効果の相乗が、築古投資の魅力を高めています。
中古建物の減価償却を最大化する方法

ポイントは「正確な区分」と「適切な償却方法」を選ぶことです。建物は構造ごとに法定耐用年数が違うため、RC造(鉄筋コンクリート)か木造かで節税額が変わります。加えて付属設備や外構を分けて計上すれば、より短い耐用年数を適用できる場合があります。
まず購入時にインスペクション(建物検査)と概算見積もりを取得し、建物本体・設備・外構を分解した金額を用意します。国税庁の通達では、取得費を合理的に配分した証拠があれば区分計上が認められるため、専門家の書面を残すことが重要です。たとえばエアコンや給湯器は6年、照明設備は15年で償却できるため、建物本体より早く経費化できます。
次に減価償却方法を検討します。2025年時点で中古資産は定額法のみですが、耐用年数が短い物件なら定額法でも十分な費用計上が可能です。逆に耐用年数が比較的長いRC造の場合は、部分的に設備を分けて短期償却し、トータルの費用計上を高める戦略が有効です。
さらに、減価償却費は赤字を出しても給与所得と損益通算できます。ただし3年連続で大幅赤字が続くと税務署のチェックが入りやすくなるため、空室率や修繕計画を加味した現実的な事業計画が欠かせません。適正な家賃設定と入居者管理を行い、節税と収益のバランスを取ることが成功への近道です。
修繕費か資本的支出か―線引きで変わる税効果
まず押さえておきたいのは、修繕費なら全額をその年の経費にできる一方、資本的支出に分類されると耐用年数に応じて減価償却する必要がある点です。国税庁は「原状回復」「維持管理」は修繕費、「価値向上」「耐用年数延長」は資本的支出と定義しています。
たとえば外壁の塗り替えや室内クロスの張り替えは原状回復に該当しやすく、100万円を超えていても全額修繕費として処理できる可能性があります。一方、間取り変更や屋上防水の全面やり替えは価値向上とみなされ、資本的支出になることが多いです。ここで専門家の見積書を2種類に分けて作成し、作業内容を細かく記載しておくと、修繕費として認められやすくなります。
さらに、60万円未満または3年周期の費用は「少額または周期的修繕」として修繕費処理が認められる特例があります。築古物件では細かな修繕が増えるため、このルールを活用すると節税インパクトが高まります。ただし同一箇所の大型改修を分割して請求する手法は否認リスクがあるため避けましょう。
実は修繕費を多用すると短期的には節税になりますが、資本的支出で計上したほうが譲渡時の譲渡所得を減らせるメリットもあります。将来の売却益を見越し、いつ、どの方法で経費化するかをシミュレーションし、税理士と相談しながら判断するのが賢明です。
築古×省エネ・耐震改修で使える税制優遇(2025年度)
まず2025年度に利用できる代表的な制度として、固定資産税の減額措置があります。一定の耐震改修を行った住宅については、改修完了の翌年度分の固定資産税が1/2に減額されます(床面積120㎡相当分まで)。地方税法の規定に基づき2025年度も継続が決まっており、多くの自治体が対応しています。
また、賃貸住宅でも省エネ改修に対する特定改修工事の税額控除が活用できます。国土交通省の告示によると、所定の断熱性能を確保した場合、工事費用の10%(上限25万円)が所得税から控除されるしくみです。築古物件は断熱性能が低いことが多いため、断熱材の追加や複層ガラス窓への交換で入居者満足度と節税を同時に得られます。
さらに、設備更新を伴う場合は中小企業経営強化税制の即時償却も検討できます。青色申告を行う個人事業主や中小法人であれば、一定の省エネ設備を取得し、所轄税務署へ申請すれば初年度に全額償却が可能です。たとえば高効率エアコンやLED照明は対象設備となることが多く、キャッシュフローの向上に直結します。
一方で、補助金を受け取った場合は取得価額から補助金額を控除する必要があります。控除を忘れると過大な減価償却を計上してしまい、後日の修正申告が発生します。必ず工事契約前に補助金額を把握し、税理士と情報を共有することで手続きをスムーズに進めましょう。
投資判断とリスク管理のポイント
実は節税効果だけを追うと、思わぬキャッシュアウトに悩まされることがあります。重要なのは、空室リスクや修繕コストを長期シミュレーションに組み込み、想定外の出費にも耐えられる資金計画を立てることです。
まず金融機関からの融資条件を比較し、金利と返済期間のバランスを取ります。金利が0.5%上がるだけで、借入5,000万円・残期間20年の場合、総返済額は約500万円増える計算になります。金利上昇局面を想定した固定金利選択や繰上返済プランを検討し、資金繰りを安定させましょう。
また、築古物件は表面利回りが高くても、入居者層や地域の賃貸需要を誤ると空室期間が長引きます。国土交通省「住宅市場動向調査」によると、築30年以上の木造アパートの平均空室率は20%前後です。管理会社の募集力や賃料設定の柔軟さをチェックし、入居付けのシミュレーションを保守的に行うことが不可欠です。
最後に出口戦略を描きましょう。減価償却が終了すると帳簿価額がゼロになり、売却益がそのまま譲渡所得になります。譲渡時期を長期譲渡(保有5年超)に合わせ、必要に応じて区分所有を分散売却するなど、税率を抑える工夫が有効です。将来の物件価値や市場動向を定期的に把握し、適切なタイミングで売却またはリノベーションを検討することでリターンを最大化できます。
まとめ
築古物件は取得価格が手頃で利回りが高く、減価償却や修繕費の活用によって節税効果が大きい点が魅力です。建物・設備の区分計上や修繕費の適切な処理で短期的なキャッシュフローを確保しつつ、省エネ・耐震改修による固定資産税の減額や税額控除で中長期の負担を軽減できます。一方で、空室リスクや金利変動への備え、そして出口戦略の設計が欠かせません。今日紹介した手順を参考に、税理士や不動産会社と連携しながら、自分に合った築古 節税プランを具体化してみてください。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 総務省 地方税法関連資料 – https://www.soumu.go.jp
- 中小企業庁 経営強化税制ガイド – https://www.chusho.meti.go.jp
- 住宅金融支援機構 住宅市場動向調査 – https://www.jhf.go.jp