不動産の税金

築古確定申告で節税する実践ガイド

築古物件を購入したばかりで、確定申告の手続きが頭の中を占拠していませんか。家賃は入るものの、減価償却や修繕費の扱いが複雑で、どの経費を落とせるか迷う初心者は多いです。この記事では、築二十年以上の木造アパートを例に、税務上のポイントを整理し、手元に残るキャッシュを最大化する方法を解説します。読み終えた頃には、税理士に丸投げせず自分で数字をチェックできる基礎力が身につくでしょう。

築古物件の減価償却を理解する

築古物件の減価償却を理解するのイメージ

重要なのは、減価償却の仕組みを正しく把握しないと、築古 確定申告で本来取れる経費を逃す恐れがある点です。国税庁の耐用年数表によれば、木造住宅の法定耐用年数は二十二年と定められています。そのため築二十五年の物件を取得した場合、法定耐用年数は既に切れており、残存耐用年数を再計算できる点が魅力です。

まず、残存耐用年数は「法定耐用年数×20%」で求め、端数は切り上げます。木造なら二十二年×二割で四点四年となり、切り上げて五年です。言い換えると、購入価格(建物部分)を五年で均等に経費化できるので、築浅よりも早く大きな費用を計上できます。一方で、五年を過ぎれば減価償却費がゼロになるため、その後のキャッシュフローは自力で安定させる必要があります。

また、建物と設備を区分して評価することで、さらに償却期間を短縮できます。設備部分は法定耐用年数が六〜十五年と短いため、建物よりも大きく経費を計上でき、純利益を圧縮する効果が高いです。ポイントは、売買契約書に建物と設備の内訳を明記し、税務署に説明できる資料を残すことです。

修繕費と資本的支出の仕分け

修繕費と資本的支出の仕分けのイメージ

実は、築古物件で最も悩ましいのが修繕費と資本的支出の線引きです。修繕費は発生年度に全額経費化できますが、資本的支出は建物価値の向上とみなされ、再度減価償却が必要になります。この判定を誤ると経費と税金が大きくずれるため、慎重な判断が欠かせません。

修繕費として認められやすいのは、原状回復や機能維持を目的とした小規模工事です。例えばクロス張り替えや給湯器交換などは、支出額が二〇万円程度でも翌年の全額計上が通りやすいです。一方で、屋根の全面葺き替えや外壁の大規模塗装は、建物の耐用年数を延ばす行為と判断され、資本的支出に分類されがちです。

国税庁の「修繕費と資本的支出の区分に関する通達」では、支出額が建物取得価額の一〇%以内かどうかも目安になります。築古の購入価格が三千万円なら、三百万円を超える外装工事は資本的支出になりやすいわけです。つまり、工事計画を立てる段階で金額を分割し、二期に分けて施工するだけで経費処理しやすくなる場合があります。

築古特有の経費計上ポイント

まず押さえておきたいのは、築古物件ならではの追加経費が複数存在し、確定申告で忘れやすい点です。代表例が耐震診断費用と入居前の害虫駆除費用で、どちらも取得後の短期間に発生するため領収書を紛失しやすいです。これらは全額損金算入でき、キャッシュフロー改善に寄与します。

次に、空室対策として行うホームステージング費用や高性能Wi-Fi導入費用も経費対象です。総務省の通信利用動向調査(二〇二五年六月公表)によると、賃貸住宅の七割が高速回線の有無を重視すると回答しています。築古物件でも通信環境を整えれば競争力が高まり、投資効果が見込めるため、費用計上と同時に入居率向上が期待できます。

さらに、長期保有を前提とするなら固定資産税評価額の見直しも忘れないようにしましょう。市町村が三年ごとに評価替えを行うため、地価が下落している地域では減額申請で税負担を抑えられます。固定資産税はキャッシュアウトが大きいので、評価額を一〇%下げるだけで年間数万円の節税効果が生まれます。

確定申告書の作成と提出ステップ

ポイントは、提出期限直前に慌てないよう、年明けから資料を整理してクラウド会計へ入力する流れを習慣化することです。築古 確定申告では領収書が多岐にわたるため、科目分類を誤ると後で修正が面倒になります。国税庁のe-Taxを活用すれば、スマホでも申告書確認が可能です。

確定申告の流れを簡潔に示すと、

  • 領収書・家賃明細・金融機関の支払調書を月次で整理
  • 減価償却の計算書を作成し、科目別に仕訳を入力
  • 青色申告決算書と申告書Bをe-Taxで送信し、控えを保存

となります。

青色申告特別控除は六十五万円、電子申告を併用するとさらに一〇万円上乗せされるため、合計七十五万円の所得控除が得られます(二〇二五年度時点)。この控除だけで税率二〇%の場合、十五万円の税金が軽減される計算です。電子帳簿保存法への対応も求められるため、領収書PDF保存と帳簿のクラウド管理は同時に進めておくと安心できます。

築古投資家が注意すべき税務調査

実は、築古物件オーナーは修繕費の計上額が大きくなりがちなため、税務調査の対象になりやすいといわれます。国税庁「令和六事務年度法人税等の調査実績」では、不動産所得を申告する個人のうち、約七%が実地調査を受けました。

調査で指摘されやすいのは、家事関連費と事業経費の混在です。例えば自家用車を管理業務に使う場合、ガソリン代を全額経費に入れると修正を求められるケースが多いです。利用割合を走行距離で把握し、七割だけを経費認定するといった根拠が必要になります。また、領収書を紛失した工事費をクレジット明細だけで計上すると、裏付け不足と見なされるおそれがあります。

一方で、調査官は論理的な説明に基づく資料提示があれば納得します。専門家による工事見積書や写真を準備し、税理士同席で説明すれば、追加税額を抑えられる可能性が高まります。事前準備として三年間の書類保管義務を超え、七年間は電子データで保存しておくと安全です。

まとめ

築古 確定申告では、残存耐用年数の短さを利用した減価償却が最大の節税ポイントでした。さらに、修繕費と資本的支出を正しく区分し、耐震診断や通信環境整備など築古特有の経費も漏れなく計上することが大切です。年明けからクラウド会計に入力し、電子申告で青色特別控除を最大限活用すれば、キャッシュフローは大きく好転します。読者のあなたも今日から領収書整理を始め、数字に強いオーナーへの一歩を踏み出してください。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp/
  • 総務省「通信利用動向調査」 – https://www.soumu.go.jp/
  • 国土交通省「不動産価格指数」 – https://www.mlit.go.jp/
  • 国税庁「修繕費と資本的支出の区分通達」 – https://www.nta.go.jp/
  • 国税庁「令和六事務年度法人税等の調査実績」 – https://www.nta.go.jp/

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