最近は物価も上がり、給与明細を開くたびに税金の負担が増えたと感じ、将来への不安が膨らんでいませんか。不動産投資は家賃収入を得るだけでなく、合法的に税額を抑える手段としても注目されています。とはいえ専門用語や制度が多く、何から始めれば良いのかわからないという声をよく耳にします。この記事では不動産投資による節税の基本と、2025年度におすすめできる実践方法をわかりやすく解説します。
節税メリットを最大化する仕組み

重要なのは、不動産所得と給与所得を合算し、課税所得そのものを減らせる点です。さらに取得時の諸経費を早期に費用計上できるため、開始初年度から節税効果を実感しやすくなります。
まず物件を購入すると、仲介手数料や登記費用など多くの初期コストが発生します。これらは国税庁の通達に従い、支出した年に一括で必要経費として計上できます。その結果、課税所得が圧縮され、所得税と住民税の合計が下がります。また現金流出を伴わない減価償却費も毎年計上でき、キャッシュを手元に残したまま税額をコントロールできます。
一方で、経費計上額が大きくなりすぎると銀行の与信評価が下がる場合があります。金融機関は返済余力を見るため、税引後所得が極端に少ないと追加融資が難しくなるのです。したがって節税と資金調達のバランスを取る視点が欠かせません。
加えて、赤字が生じた場合には損益通算が可能です。給与所得で引かれた税金の一部が還付される仕組みを理解すると、手取りを増やしながら投資拡大の資金を蓄えられます。つまり節税メリットを最大化するには、経費計上と損益通算を適切に組み合わせ、キャッシュフローと与信の両方を管理する姿勢が必要です。
減価償却でキャッシュを守る方法

まず押さえておきたいのは、減価償却費が実際の支出を伴わない“非現金費用”である点です。家賃収入の中から税額だけを減らし、手元資金を厚くする効果があります。
木造アパートの場合、法定耐用年数は22年です。中古物件を購入すると、残存年数が短くなるため償却スピードが加速します。例えば築20年の木造アパートを1,500万円で取得したとしましょう。土地を除いた建物価格が900万円だとすると、残存耐用年数は4年(22年−20年+経過年数 × 20%を適用)となり、年間225万円を経費にできる計算です。国税庁の「耐用年数表」に基づくこのルールにより、4年間は大幅な節税が期待できます。
しかし、償却を急ぎすぎると5年目以降に経費が減少し、課税所得が急増する“償却切れ”のリスクが出ます。そこで、構造の異なる複数物件を保有し、償却スケジュールを分散する戦略が有効です。また、大規模修繕を実施した年は工事費用の一部を資本的支出として資産計上し、償却年数を伸ばすことで負担を平準化できます。
重要なのは、家賃収入と減価償却費のバランスを長期シミュレーションで確認することです。日本政策金融公庫が提供する「融資返済計画表」を活用し、空室率10〜15%のケースでも自己資金が枯渇しないか検証すれば、資金繰りに余裕を持って運用できます。
青色申告と損益通算の活用ポイント
実は、青色申告を選択するだけで65万円の特別控除が毎年受けられます。確定申告で複式簿記と電子申告を行う点は少し手間ですが、節税効果を考えれば欠かせません。
青色申告のもう一つの利点は、赤字を3年間繰り越せることです。たとえば2025年度に大規模修繕で500万円の赤字が出ても、2026年度以降の黒字と相殺できます。これにより期ずれで発生する税負担を平準化しながら、キャッシュフローの安定を図れます。
また、不動産所得の赤字は給与所得と損益通算が可能です。総務省の家計調査によると、給与所得者の平均所得税負担率は約7%ですが、赤字通算で課税所得が下がれば実効税率はさらに低下します。特に高所得層になるほど累進税率が高まるため、節税インパクトが大きくなります。
一方で、赤字の原因が意図的な高額ローンや過大な修繕費であると税務署に判断されれば、経費否認リスクがあります。領収書の保管、工事写真の保存、見積書と請求書の整合性確認など、証拠書類を揃えておくことが基本です。青色申告ソフトやクラウド会計を使えば、電子帳簿保存法にも対応しながら申告作業を効率化できます。
法人化とインボイス制度対応の最新動向
ポイントは、所得が年間900万円を超えたあたりから法人化を検討すると社会保険料と税金の合計が下がるケースが多いことです。さらに2023年に始まったインボイス制度への適切な対応が、2025年以降の税負担を左右します。
法人化すると最高税率が23.2%(中小法人・所得800万円以下は15%)で頭打ちになります。一方で個人の所得税は45%まで累進するため、高収入投資家ほど法人の方が有利です。さらに役員報酬を家族に分散させれば、所得分散による節税も可能です。ただし社会保険の加入義務が生じるため、トータルコストをシミュレーションして判断する必要があります。
インボイス制度では、課税売上が1,000万円以下の免税事業者でも適格請求書を発行しないと、管理会社や法人テナントから仕入税額控除を拒否される恐れがあります。2025年度時点では、免税事業者がインボイスを発行するために課税事業者を選択した場合でも、簡易課税制度を使えば原則より事務負担を軽減できます。国税庁はこの簡易課税を2029年9月まで経過措置として認めており、利回り改善に直結するため確認必須です。
法人設立には登録免許税や定款認証費用がかかりますが、設立初年度に全額経費計上できます。さらに、小規模企業共済に加入すれば、掛金月額7万円までを全額所得控除にできるため、老後資金を準備しながら追加の節税が可能です。
節税と利回りを両立させる物件選び
まず押さえておきたいのは、節税だけを目的に赤字物件を選ぶと本末転倒になることです。家賃収入でローン返済と経費を賄い、なおかつ手残りが出る物件を前提にしたうえで節税策を組み合わせる必要があります。
立地については、国土交通省の「住宅着工統計」によると人口増加が続く政令指定都市の一部エリアで空室率が10%を切っています。こうしたエリアは購入価格が割高でも、長期のキャッシュフローが安定し、減価償却後も黒字が維持しやすい点が魅力です。また、新耐震基準(1981年以降)のRC造マンションなら、法定耐用年数47年を超えても、残存価値が評価されやすく金融機関の融資姿勢も良好です。
利回りを高める手法として、バリューアップ投資があります。築古物件を取得して共用部にWi-Fiや宅配ボックスを追加すれば、月額2,000〜3,000円の家賃増額が期待できます。総工事費が200万円でも、年間家賃が40万円増えれば利回りは20%相当となり、4〜5年で回収できます。こうした改善費用は修繕費として支出年に経費計上できるため、現金流出と節税効果を同時に得られます。
最後に、融資条件の比較も欠かせません。日本銀行の「金融システムレポート」によれば、2025年時点の投資用物件向け変動金利は平均2.5%前後です。金利が0.3%違うだけで、1億円・25年ローンの総返済額は約450万円変わります。金利交渉で得たメリットはそのまま利回り向上につながり、節税以上のインパクトを持つ場合もあるのです。
まとめ
不動産投資で節税効果を高めるには、経費計上と減価償却を軸に損益通算を活用し、適切なタイミングで法人化を検討する流れが効果的です。物件取得時の諸経費や修繕費は現金を残したまま税額を抑えるチャンスであり、青色申告の特別控除や赤字繰越も欠かせません。さらに、インボイス制度や社会保険料まで含めた総合的な負担を試算し、利回りの高い物件を選ぶことで、節税と資産形成を両立できます。まずはシミュレーションツールで自身の収支を可視化し、信頼できる専門家の意見を得ながら一歩踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 家計調査 – https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資資料 – https://www.jfc.go.jp
- 日本銀行 金融システムレポート – https://www.boj.or.jp