コンクリートの堅牢な外観に魅力を感じつつも、「RC造は初期コストが高いし、税金の計算も複雑ではないか」と迷う声をよく耳にします。実際、不動産投資 RC造 税金という三つのキーワードは、初心者にとってハードルが高く感じられがちです。しかし耐用年数が長いRC造だからこそ活用できる減価償却や、運用中・売却時の節税テクニックを理解すれば、キャッシュフローは大きく改善します。本記事では2025年9月時点で有効な税制を前提に、RC造物件への投資で押さえておきたいポイントを基礎から丁寧に解説します。
RC造が投資家を引きつける理由

まず押さえておきたいのは、RC造(鉄筋コンクリート造)が木造や軽量鉄骨造に比べて長期保有に向く点です。国土交通省の長期優良住宅化推進事業の報告によると、RC造の平均寿命は60年以上とされ、木造より約15年長い結果が出ています。この耐久性は空室率の低減だけでなく、金融機関の評価にも直結します。
加えて、耐火性や遮音性に優れるためファミリー向け賃貸の需要が安定しやすく、家賃下落リスクを抑えられるのも強みです。2025年の損害保険料率機構の統計では、木造と比べ火災保険料が約40%低く設定されるケースがあることが示されています。つまり運営コストを平準化しやすい構造と言えます。
一方で建築費は坪単価で木造の1.5倍程度が目安となり、初期投資額が膨らむ点は見過ごせません。ここで重要なのは、税金面でのメリットを織り込んで総合的に採算を測ることです。次章からは、その核心である減価償却とキャッシュフローへの影響を詳しく見ていきます。
RC造と減価償却の基本を理解する

重要なのは、減価償却費が課税所得を圧縮し、手取りを押し上げる仕組みを正しく押さえることです。国税庁が公表する2025年度の法定耐用年数表では、RC造の住宅用建物は47年と定められています。新築の場合は原則として定額法で毎年約2.13%を費用計上できる計算です。
実は中古RC造を購入すると、耐用年数の短縮によって償却スピードを高められるケースがあります。たとえば築25年の物件なら、残存耐用年数は「(47年−25年)+築年数×0.2」を採用し、13年として計算する方法が認められています。これにより年間償却率は約7.7%となり、新築時の3倍強のコストを損金にできるわけです。
さらに設備部分を建物から区分評価し、耐用年数15年または10年で償却する方法も2025年現在有効です。ただし過度な按分は税務調査で否認される恐れがあるため、建築士による報告書や第三者評価を添付するのが安全策となります。減価償却はキャッシュアウトを伴わずに経費を計上できるため、債務償還余裕比率(DSCR)の改善に直接寄与します。
キャッシュフローを左右する税金の仕組み
ポイントは、損益計算書上の「課税所得」をいかにコントロールするかに尽きます。家賃収入から必要経費を差し引き、さらに減価償却費を計上した金額が課税所得となり、所得税と住民税が決まります。2025年度の所得税率は5%から45%まで7段階あり、高額所得者ほど減価償却の効果が大きい構造です。
また、借入金利息は不動産所得の必要経費として全額控除できます。日本銀行の資金循環統計によると、2025年3月時点の平均融資金利は変動で1.8%、固定で2.4%前後です。金利が上昇局面に入ったとしても、利息部分が経費となる限り、税引後キャッシュフローへの影響はある程度緩和されます。
一方で消費税は居住用賃料に課税されないため、インボイス制度の登録有無で混乱する心配は基本的にありません。ただし、テナント併用物件など課税売上比率が変動するケースでは控除対象仕入税額の按分計算が必要になります。毎年の決算期に会計ソフトで自動仕訳されても、税務署の指摘を受けやすいポイントなので注意が欠かせません。
運用中に発生する税金とその対策
まず固定資産税・都市計画税は、地方自治体が発行する納税通知書に基づき年4回までの分割納付が可能です。総務省の「令和6年度標準宅地評価調査」によれば、RC造マンションの平均課税標準額は木造アパートの約1.3倍ですが、耐用性を考慮すれば長期で相殺できます。早期に資金繰りを安定させたいなら、納付期限を踏まえて賃料の入金サイクルと合わせる工夫が有効です。
火災・地震保険料も必要経費に算入できますが、RC造の場合は保険会社が割安な料率を適用する傾向にあります。日本損害保険協会の2025年6月公表データでは、耐火建築物割引を適用すると木造比で最大55%の保険料減が可能とされています。保険期間を長期一括契約にすると割引率が高まり、キャッシュフロー管理がより柔軟になります。
また、長期修繕計画に基づく大規模修繕費を「修繕引当金」として計上する方法は法人限定ですが、個人でも資本的支出と修繕費を区分し、10万円未満の小規模修繕は当期費用にできるルールが生きています。資金面で余裕のない初年度ほど、計上基準の確認が節税面で功を奏します。
売却時・相続時に押さえる税務ポイント
実はキャピタルゲイン課税の扱いが、保有期間によって大きく変わる点が投資成績を左右します。譲渡所得税は5年超の長期譲渡で税率20.315%、5年以下の短期譲渡で39.63%です。RC造は賃料下落が緩やかで資産価値が残りやすいため、長期保有による税率優遇を狙いやすい構造と言えます。
売却益を圧縮する方法として、必要経費に仲介手数料や印紙税、取り壊し費用を含められる点は見落とせません。さらに2025年度も引き続き、譲渡所得の特例である「買換え特例(措法33条)」が法人・個人ともに適用可能です。要件は譲渡資産と取得資産の用途制限があるため、税理士への事前相談が欠かせません。
相続時には、路線価評価が時価の70%前後という点が節税につながります。加えてRC造は耐用年数が長いため、建物評価額の減価が緩やかで、相続開始直後の売却において含み益が出やすいことも特徴です。相続税の納税資金を賃料から確保する計画を立てておくと、遺族の負担を最小限に抑えられます。
まとめ
RC造物件への投資は初期コストが高いぶん、減価償却や金利控除を駆使すれば税引後キャッシュフローが安定しやすい特徴があります。耐用年数が47年と長い新築に加え、中古で耐用年数を短縮すれば償却による節税効果も拡大します。運用中は固定資産税や保険料を計画的に管理し、売却時は保有期間区分と経費算入を徹底することで手取りを最大化できます。これらの基本を押さえたうえで、信頼できる税理士や不動産会社と連携すれば、RC造の堅牢性と税務メリットの両方を享受できるでしょう。まずは手元の資金計画を精査し、具体的な物件シミュレーションに落とし込むことが第一歩となります。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
- 総務省 統計局 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行 資金循環統計 – https://www.boj.or.jp
- 日本損害保険協会 – https://www.sonpo.or.jp