不動産投資を始めたいものの、「新築 収益性」が本当に高いのか疑問に感じていませんか。中古より価格が高い分、家賃で取り戻せるのか不安に思う方は多いでしょう。本記事では、最新データと2025年度の制度を踏まえ、新築物件の収益構造をやさしく解説します。読了後には、購入前に確認すべき指標やリスク低減策が整理でき、自分に合った投資戦略が描けるはずです。
新築投資のメリットと収益性の基本

まず押さえておきたいのは、新築物件が持つ独自の魅力です。竣工直後の状態が良好な建物は、賃借人からの需要が高く、初期の家賃設定を強気にできるケースが多くあります。
一方で、購入価格が割高になる点は避けられません。国土交通省「不動産価格指数」によると、2025年時点で同一エリア・同規模の中古物件に比べ、新築マンションの価格は平均で27%高くなっています。そこでポイントは、賃料プレミアムが何年続くか見極めることです。新築プレミアムはおおむね5〜7年で薄れるとされ、その後は周辺の中古と近い賃料水準に落ち着きます。つまり、最初の数年でどれだけキャッシュフロー(手元に残る現金収支)を積み上げられるかが、新築投資の鍵になります。
さらに、新築物件は修繕積立金が低く設定されている時期が多いものの、12年目前後を境に大規模修繕の議論が始まります。収益性を評価する際は、そのタイミングで積立金が増額される可能性を利回り計算に織り込む必要があります。
建築コストと賃料水準のバランス

重要なのは、建築コストが賃料に転嫁できるかどうかです。2025年の資材価格は一時より落ち着いたとはいえ、コロナ禍以降の高止まり傾向が続いています。国土交通省「建設工事費デフレーター」では、2021年比で約11%高い水準で推移しており、この追加コストは最終的に物件価格に上乗せされます。
そこで新築投資家は、平均家賃が継続的に上昇するエリアを選ぶ戦略が求められます。たとえば東京都心6区では、総務省「家賃指数」が過去5年で年2%程度上昇しており、コスト増分を吸収しやすい状況です。一方、地方中核都市では家賃の伸びが横ばいの地域もあるため、自己資金比率を高めてレバレッジ(借入による投資拡大)を抑える方法も検討すべきでしょう。
加えて、賃料査定を行う際は近隣成約事例だけでなく、将来の人口動態を重ね合わせることが有効です。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年までに20代人口が増える区市町村は限られます。若年層向けワンルームを企画する場合、こうしたデータを前提に利回りを試算すると、楽観バイアスを抑えられます。
空室リスクと維持費の比較
実は、新築物件でも空室リスクはゼロではありません。レインズの2025年上半期データによると、築5年未満の区分マンションでも募集から成約までの平均日数は46日で、築15年超の53日に比べ短いものの、物件によってばらつきがあります。
空室期間を短縮するには、竣工後の賃料改定ルールをあらかじめ設定することが大切です。たとえば「募集開始から30日経過時点で1,000円値下げ」「60日で追加値下げ」といった手順を管理会社と共有しておくことで、空室長期化を防げます。また、共用部の美観を保つ清掃計画も収益性と直結します。新築のきれいな状態を維持できれば、内見者の第一印象が良く、家賃交渉を回避しやすいからです。
維持費については、固定資産税と修繕費のほかに、設備保証の延長費用も考慮しましょう。エアコンや給湯器が故障すると、1件あたり10万〜20万円の出費が発生します。新築時に10年保証を付帯すれば、当面は支出を平準化できます。つまり、保証料を経費計上しつつ、突発修理費を抑える発想がキャッシュフローの安定につながります。
税制優遇と2025年度の関連制度
まず押さえておきたいのは、2025年度に有効な税制優遇の活用です。新築物件を個人名義で取得する場合でも、登録免許税と不動産取得税の軽減措置が適用されます。具体的には、課税標準の特例により、建物の固定資産税評価額が50%減額され、その上で一定の税率がかかる仕組みです。ただし、この軽減は完成から1年以内の申告が条件となるため、スケジュール管理が欠かせません。
法人名義で購入する場合は、消費税還付が焦点になります。2025年12月現在、基準期間の課税売上が1,000万円以下の新設法人は、簡易課税制度を選択することで、仕入れ控除率40%(第六種不動産業)の適用が可能です。物件価格が大きいほどインパクトが出ますが、課税事業者の期間選択を誤ると逆に負担が増えるため、税理士と綿密にシミュレーションを行う必要があります。
加えて、住宅性能表示制度で「断熱等級6」を取得した新築賃貸は、省エネ賃貸としてプロモーションしやすくなっています。環境配慮を求めるテナント企業や個人からの評価が高まり、家賃の下落防止に寄与します。省エネ等級取得に関する補助金は2025年度も継続予定ですが、申請受付枠が限られるため、設計段階で早めに検討しましょう。
収益性を高める運用戦略
ポイントは、物件取得後の運用で新築プレミアムを延命させることです。まず、長期入居を促すために、インターネット無料やIoTデバイス標準装備といった付加価値を盛り込みます。JLLの2025年テナント調査では、「通信コスト込み物件に月1,500円上乗せ可能」と回答した入居者が全体の63%に達しました。
次に、サブリース(家賃保証)を活用するか否かは慎重に判断しましょう。保証料率が家賃の10%を超える契約では、5年後に実質利回りが1%以上低下するケースが多いためです。契約書に再査定ルールと解除条項を盛り込み、将来的に一般管理へ移行できるように備えると柔軟性が高まります。
最後に、出口戦略を購入時点で設計します。築10年時点での売却価格を、日本不動産研究所「住宅価格指数」の年率1%下落シナリオで試算し、内部収益率(IRR)が8%を下回る場合は、途中での繰上返済やリファイナンスを組み込みます。こうした複数シナリオを立てることで、想定外の市場変動に対応しやすいポートフォリオが完成します。
まとめ
ここまで、新築物件の収益性を多角的に検証してきました。新築は賃料プレミアムや修繕負担の軽さといった利点がある一方で、価格上乗せ分を賃料で回収できる期間は限られます。そこで、成長エリアの選定、保証や省エネ等級の活用、空室対策の事前設計が欠かせません。また、2025年度の税制優遇を正しく使えば、実質利回りを1〜2%向上させることも可能です。まずは本記事で紹介した指標を用いてシミュレーションを行い、自身のリスク許容度に合った投資判断を進めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 建設工事費デフレーター – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 家賃指数 – https://www.stat.go.jp
- 国立社会保障・人口問題研究所 将来人口推計 – https://www.ipss.go.jp
- レインズ マーケットインフォメーション – https://www.reins.or.jp
- 日本不動産研究所 住宅価格指数 – https://www.reinet.or.jp
- JLL テナント意識調査2025 – https://www.joneslanglasalle.co.jp
- 財務省 消費税法令等解説 – https://www.mof.go.jp