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戸建て賃貸の収益性を高める戦略

都市部でも郊外でも「家賃が下がらない物件を持ちたい」と考える投資家は少なくありません。しかし集合住宅は空室競争が激しく、利回りが思うように伸びないと感じている人も多いはずです。そこで注目されるのが戸建て賃貸です。ファミリー層の長期入居が期待でき、修繕周期も比較的ゆるやかという利点があります。本記事では戸建て賃貸 収益性をテーマに、メリットと落とし穴、そして2025年時点で使える税制・融資制度までを網羅します。読み終えるころには、自分の投資戦略に戸建てを組み込むべきかどうかを判断できるはずです。

戸建て賃貸が注目される背景

戸建て賃貸が注目される背景のイメージ

まず押さえておきたいのは、空室率の差です。国土交通省の「賃貸住宅市場概況調査2025」によると、全国平均の空室率はアパート19.2%に対し、戸建ては14.8%にとどまります。つまり同じ賃貸でも戸建ては約4ポイント低いわけです。背景にはファミリー層のニーズがあります。子どもの騒音を気にせず過ごせることや庭付き物件への憧れが根強く、集合住宅との差別化が容易だからです。

一方で供給量は限られています。新設住宅着工戸数(2025年上半期速報)をみると、賃貸用戸建ては全体の2.1%に過ぎません。希少性が高いという事実は、家賃の下支え要因になります。また長期入居により退去時原状回復費の発生頻度が低く、結果としてキャッシュフローが安定しやすい点も見逃せません。

さらに、2024年以降の金利上昇局面で「借入を抑えた小規模投資を選びたい」という声が増えています。戸建ては建築費や購入額が1棟マンションより小さいため、自己資金比率を高めやすいのが魅力です。このような市場動向が、戸建て賃貸を再評価させているのです。

収益性を左右する三つの指標

収益性を左右する三つの指標のイメージ

重要なのは、利回りだけでなく実質収益を示す三つの指標を同時に見ることです。第一は表面利回り、第二はキャッシュフロー利回り、そして第三は内部収益率(IRR)となります。

表面利回りは購入価格に対する年間家賃収入の割合にすぎません。固定資産税、修繕費、保険料、管理料などの経費を差し引くと、キャッシュフロー利回りは1〜2%下がるのが一般的です。戸建てでは共有部がなく管理費が抑えられる一方、屋根や外壁の修繕費が一度にかかる点に注意が必要です。

内部収益率は投下資本の時間価値を考慮するため、持ち続けるほど家賃が上がるのか、売却益が期待できるのかを織り込みます。2025年の住宅価格指数は全国平均で前年比+3.4%と緩やかに上昇していますが、地方では横ばいも珍しくありません。出口戦略を想定し、10年後の売却価格を複数シナリオで試算するとIRRを正確に把握できます。

結論として、三つの指標を共にチェックすることで、利回りに惑わされず真の収益力を判断できるようになります。

立地と物件選定の実践ポイント

実は戸建て賃貸の収益性を最も左右するのは、購入前のリサーチです。ターゲットとなるファミリー層が何を求めているかを数字で確認しましょう。総務省「小学校等通学区域データベース2025」によれば、子育て世帯の約82%が「学校まで徒歩15分以内」を優先条件に挙げています。学区と駅距離のバランスを満たす物件は、家賃を下げにくい傾向が鮮明です。

また、生活利便施設の分布も見逃せません。国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来人口推計では、地方中核市でも郊外商業ゾーン周辺は人口減が緩慢と予測されています。最寄りスーパーまで徒歩10分圏内に限定すれば、需要減少リスクを抑えられます。

物件の築年数については、築25〜35年を狙うケースが増えています。建物価格が減価償却により低く評価され、土地値割合が高いので減価リスクが小さいためです。さらに木造は減価償却年数が22年と短く、購入後4〜6年で税務上の経費が大きく取れるメリットがあります。ただし耐震基準(1981年改正)を満たすかどうかは必ず確認し、補強が必要なときは見積もりを取得しましょう。

最後にリフォームの方向性です。ファミリー向けには畳よりフローリング、水回りは最新モデルへの交換が好まれる傾向にあります。リフォーム費をかけても家賃が月1万円上げられれば、投資回収期間は約5年と試算できます。家賃設定シミュレーションを丁寧に行うことで、リノベ費用がリスクではなく「価値向上の投資」となります。

資金計画と税制優遇の活用法

まず押さえておきたいのは、融資条件の変化です。日本政策金融公庫では2025年度も「生活衛生貸付」の一環として木造耐久住宅向け融資を継続中で、最長25年・金利1.6%台が目安です。地銀や信金でも戸建て賃貸専用ローンを取り扱い、自己資金20%程度でフルローンより金利を0.3%下げる事例が目立ちます。金利差は30年返済で総返済額を数百万円単位で左右するため、複数行のシミュレーションは欠かせません。

税制面では、2025年度も不動産所得と他の所得を損益通算できる制度が続いています。ただし赤字を意図的に作り出すと税務調査のリスクが高まるため注意が必要です。固定資産税は新築戸建て賃貸で3年間、長期優良住宅に認定されれば5年間の軽減措置が受けられます。認定取得には耐震・省エネ性能など条件があり、建築前の計画段階で設計事務所と連携することが鍵になります。

さらに「長期優良住宅化リフォーム推進事業」(2025年度)の補助金は、中古戸建てを性能向上リフォームする際に最大100万円補助されるメニューが継続されています。賃貸住宅も対象ですが、工事内容や賃貸期間に要件があるため、自治体窓口に事前確認を行うとスムーズです。これらの制度を組み合わせれば、初期投資を抑えつつ利回り改善を図れます。

ポイントは、融資・税制・補助金を「別々に調べて後からつなぐ」のではなく、物件選定と同時並行で情報を整理することです。そうすることで、購入判断時に実質利回りを即座に計算でき、チャンスを逃さずに済みます。

未来を見据えたリスク管理

一方で、戸建て賃貸にも特有のリスクがあります。まず修繕の集中リスクです。屋根、外壁、給排水管など高額修繕が同時期に重なると、年間キャッシュフローが赤字化する可能性があります。国交省の指針では、木造戸建ての大規模修繕周期は20〜25年が目安とされています。築古を購入する場合は、購入後5年以内にどの修繕が必要かを工程表で可視化し、毎月の家賃から積立てる仕組みを作ると安心です。

次に賃料下落リスクです。ファミリー向けは長期入居が前提ですが、退去が発生した場合の賃料改定幅が大きくなる傾向があります。全国賃貸住宅新聞の2025年レポートによれば、三大都市圏で築30年木造戸建ての再募集賃料は平均7.8%下落しています。築年数だけでなくリフォームの鮮度が賃料維持を左右するため、定期的な設備更新計画が不可欠です。

最後は出口戦略の不確実性です。人口減少が本格化する2030年代に向け、売却市場が縮小する地域も出てくるでしょう。だからこそ土地値が下がりにくいエリアを選び、最悪シナリオとして「更地売却」や「自己利用」も視野に入れます。複数の出口を持つことで、価格下落リスクを限定できます。

これらのリスクは完全に排除できませんが、事前に数値化し、必要資金をプールしておけば大きなトラブルにはなりません。収益性の高さばかりに目を奪われず、守りの計画を並行して立てることが長期成功のカギになります。

まとめ

本記事では戸建て賃貸の収益性を、空室率の優位性、三つの収益指標、立地選び、資金計画、リスク管理の五つの視点から整理しました。家族向けニーズの強さと供給の少なさが収益を下支えする一方、修繕集中や賃料下落など戸建て特有のリスクも存在します。だからこそ物件リサーチと制度活用を同時進行で行い、キャッシュフローと内部収益率を多角的に検証する姿勢が求められます。次に物件情報を見かけたら、この記事のチェックリストを思い出し、一歩踏み込んだ数字で投資判断を下してみてください。長期にわたり安定した家賃収入を得る未来は、準備を怠らない投資家にこそ開かれています。

参考文献・出典

  • 国土交通省 賃貸住宅市場概況調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 小学校等通学区域データベース2025 – https://www.soumu.go.jp
  • 日本政策金融公庫 生活衛生貸付情報2025年度 – https://www.jfc.go.jp
  • 国立社会保障・人口問題研究所 将来人口推計2025 – https://www.ipss.go.jp
  • 全国賃貸住宅新聞 2025年賃料動向レポート – https://www.zenchin.com

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